ボルボXC90

<世界初の技術を搭載した安全装備を標準装備化! 上品なデザインを含め、新たな高級SUVのカタチを提案>

ボルボXC90ボルボは、大型SUVであるXC90を13年ぶりにフルモデルチェンジし発売を開始した。

先代ボルボXC90は、2003年に日本デビューした。大型SUVということもあり7人乗りという設定で登場。北米を中心としたSUV人気に対応するモデルだ。日本ではややボディサイズが大きく、それほど台数を稼げるクルマでは無かった。しかし、モデル途中から、4.4LのV8エンジンが投入された。このV8エンジンは、ヤマハ製ということもあり多少話題になった。

北米がメインマーケットということもあり、先代XC90のボディサイズは大きく全長4,800×全幅1,900×全高1,780mm。新型XC90は、さらに大きくなり全長4,950×全幅1,960×全高1,775mm。全高が5mmほど低くなったものの、全長+150㎜、全幅+60㎜と完全にひとクラス上のサイズとなっている。なんと、BMW X5より、やや大きいボディサイズをもつ。これだけ大きなボディサイズとなると、道路の狭い日本では使いにくい。日本マーケットに合うボディサイズのSUVではない。また、ボディは大きくても小回り性能を高める工夫も無いので、最小回転半径はエントリグレードを除くと6.0m! 全長5,125㎜を誇り、XC60よりもさらにひと回り大きいメルセデス・ベンツGLの最小回転半径は5.7mとミニバン並みに抑えている。こうした配慮があるかないかというもの、日本で大きなクルマを売る上で乗用な要素となる。

ボルボXC90使い勝手が悪くても見た目が重要というのであれば、ボルボXC90はかなりユニークだ。ボルボといえば、スタイリッシュな北欧デザインが魅力。まず、ひと際存在感を主張しているのがLEDヘッドライトだ。北欧神話に登場するトール神(雷神)がもつハンマーをモチーフとし、T字型のポジションライトがXC90であることをアピールする。また、リニューアルしたアイアンマークを中央に配したエレガントなグリル、リヤライトの力強い造形をもつ。大型SUVらしいたくましさを持ちながら、シンプルでクリーンなデザインが魅力的だ。大型SUVの多くは、威圧感重視のデザイン。そんなSUVが多い中、XC90はなかなか落ち着いた上品なデザインといえるだろう。威圧感重視のSUVデザインに閉口しているような顧客にとっては、とても魅力的な1台といえる。こうしたデザイン力は、ボルボのスカンジナビアンデザインの真骨頂とえいるものだ。

インテリアもエクステリアデザインと同様にモダンなデザインとなっている。SUVの基本デザイン手法ともいえる太く力強いセンターコンソールをもちながらも、サッパリとしたクリーンにまとめられている。見た目のインパクトというよりも、モダンで洗練された印象が強い。こうした上品なインテリアデザインは、ドイツやアメリカ、日本車とはまったくことなるものだ。素材の上質感を上手く表現していることもあり、スカンジナビアンラグジュアリーといった印象で独自の世界観をもつ。シートレイアウトは2/3/2の7人乗りとなる。全長が伸びているので、室内スペースはよりゆとりあるものとなった。

XC90に搭載されるパワーユニットは、ボルボの新世代パワーユニットであるDrive-E 2.0L4気筒エンジンを基本とし3タイプが用意された。エントリグレードが直噴ガソリンターボ、直噴ガソリンターボ+スーパーチャージャー、最上級グレードが直噴ガソリンターボ+スーパーチャージャー+モーターのPHVとなっている。出力は2.0Lターボが254ps&350Nm。2.0Lターボ+スーパーチャージャーは320ps&400Nm。PHVは320ps+87ps&400Nm+240Nmとなっている。このクラスで直4ターボがベースとなっているモデルは数少ない。

そして、気になるのはXC90の燃費。2.0Lターボが12.8㎞/L。2.0Lターボ+スーパーチャージャーが11.7㎞/L。PHVが15.3㎞/Lとなった。2.0Lエンジンということもあり、絶対的な排気量が少ないこともあり燃費値は良好だ。日本に導入されるモデルは、全車AWDとなった。

ボルボXC90ただ、残念なのは、今回導入されたのはガソリン車のみだということ。ディーゼル攻勢をかけているボルボだっただけに意外な展開。欧州には2.0L直4ディーゼル もラインアップされており、D4が190ps&400Nm、D5が225ps&470Nmと出力により2グレードに分けられている。ディーゼルは、燃費性能だけでなく、約30円/L違う燃料費による経済性、大トルクによる力強い走りなど、ガソリン車と比べると優れている部分も多い。エコカー減税面でも有利になる。ガソリン車とディーゼル車の価格差がポイントとなるのだが、今のボルボの価格差であれば、あえてガソリン車を選ぶ理由が見当たらないくらいだ。いずれ、日本マーケットにもXC90のディーゼル車が投入されると予想できるので、XC90の購入を考えているのであれば、しばらく動向を見守ってからがよいだろう。

そして、ボルボといえば世界トップレベルの先進安全装備。フラッグシップといえる最新のXC90には、2つの世界初となる安全技術が採用された。一つめが「ランオフロード・プロテクション(道路逸脱事故時保護システム)」。車両のASDM(アクティブ・セーフティ・ドメインマスター)がミリ波レーダー/高解像度カメラ一体型センサーユニットにより、道路から逸脱したことを検知すると、即座にシートベルト・テンショナーがシートベルトを巻き上げ、シートとシートフレームの間にあるメタル製クッションが乗員にかかる衝撃を吸収。乗員の身体へのダメージ、特に脊椎損傷による重症化を防ぐ。

二つめは「インターセクション・サポート(右折時対向車検知機能)」。交差点の右折時に直進してくる対向車との距離や速度を検知して、そのまま右折すると衝突すると判断された場合、衝突を回避・軽減するオートブレーキが作動。無理な右折での事故を防止する。

高く評価したいのは、こうした世界初の安全装備に加え、従来からボルボがもっていた夜間でも対応可能な歩行者・サイクリスト検知機能付フルオートブレーキや50km/h以下の速度域でのステアリングアシストを実現したパイロットアシスト(追従時車線維持機能)など全方位的な先進安全装備を全車に標準装備したことだ。多くの国産車は、こうした安全装備をオプション設定している。化するなか、ボルボは全車に標準装備化したことは高く評価できるポイント。国産メーカーの中には、高級車であってもこうした安全装備を用意していない、またはオプション化している。そんな状況であっても「交通死亡事故者ゼロを目指す」と声高にアピールしているのだから、上手く建前と本音を使い分けている中、全車標準装備化することで、真摯に安全に対して向かい合う姿勢は素晴らしい。

さて、新型ボルボXC90の価格は、エントリグレードのT5 AWD Momentumが7,740,000円から。最上級モデルのT8
Twin Engine AWD Inscriptionは10,090,000円。新型XC90の選び方だが、基本的にディーゼル車が投入されてからが買い時といえる。それまで待った方が良いだろう。ディーゼルの大トルクと燃料経済性は、2トンを超えるXC90との相性は抜群のはずだ。

唯一、ディーゼル車でなくても、選ぶ価値が高いのはPHVだ。電気モーターで35.4㎞/L走行可能で、近距離の通勤や近所での使用ならほぼガソリンを使わずに使える。単に経済的であるということだけでなく、高い環境性能とモーターがプラスされた力強い走りは魅力的。さらに、こうした高級車であることを考えれば、せめてPHVであるという先進性が欲しいところだ。

ボルボXC90
■ボルボXC90価格
・XC90 T5 AWD Momentum 7,740,000円
・XC90 T6 AWD R-DESIGN 8,790,000円
・XC90 T6 AWD Inscription 9,090,000円
・XC90 T8 Twin Engine AWD Inscription 10,090,000円