レクサスIS

<安全装備を充実させたとはいえ、性能面で物足りない水準。ただし、価格設定はお買い得感あり!>

レクサスISレクサスは、プレミアムセダンのIS300h/IS200tに特別仕様車「F SPORT Mode Plus」を設定し3月1日に発売を開始しする。

現行のレクサスISは、2013年にフルモデルチェンジし3代目となったモデルだ。レクサスブランドは、基本的にガソリンの安い北米志向。そのため、現在でもアイドリングストップ機能も持たない燃費の悪いV6の3.5Lや2.5Lエンジンが用意されている。日本やお欧州では、さすがにこれでは売れない。欧州のライバル車は、すでにダウンサイジングターボ化が進み、このクラスでは2.0Lターボに変更され、優れた燃費値をアピールしている。

そのため、3代目ISには日本マーケットに、クラウンの2.5Lハイブリッドシステムを搭載したIS300hを投入した。燃費は、23.2㎞/Lという圧倒的な低燃費性能を誇る。日本マーケットも重視し開発されたハイブリッドシステムなので、燃料もレギュラーガソリン仕様。そのため、ハイオク仕様のエンジンに比べ燃料費面でも大きなメリットとなる。こうした日本マーケットに合ったパワーユニットを搭載したことから、IS300hは支持され人気モデルとなる。このクラスのクルマを買う顧客は賢い。良いものにはお金を惜しまないが、良くないものは買わない。

その後レクサスISは、2015年7月に2.0Lダウンサイジングターボエンジンを投入。このパワーユニットは、 ハイブリッド車のフィーリングを嫌う欧州向けのエンジン。パワーや燃費面では、BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスなどと同等レベルとなった。しかし、欧州向けのため国内では燃料がハイオクとなる。そのため、それほど燃料費面で顧客にメリットが提示できていないのが現状。せめて、国内で売るのであればレギュラー仕様に変更するなどの配慮が必要だろう。

ただ、この2.0Lターボを搭載した200tは、価格面でメリットが多少出ている。200tの最大トルクは350Nmで、V6 3.5L並み。本来ならば、3.5Lの販売を止め同等の価格帯で導入してもいいくらいだ。しかし、レクサスの頭の中は北米重視。V6がエライという価値観がある。そんなこともあり、最大トルクは3.5Lと同等、燃費に優れる200tはエントリグレードとなる価格帯となった。もはや、日本や欧州では競争力の無い3.5Lエンジンンの方が高価という微妙な価格設定となったことで、200tはなかなか買い得感あるモデルとなっている。

今回投入された特別仕様車「F SPORT Mode Plus」は、そうした日本マーケットの趣向を反映してIS300h/IS200tのみに設定されている。F SPORTをベースとし、専用オート電動格納式ドアミラー(メタル調)を採用。インテリアには、グレーをアクセントとして利かせた専用カラーブラック&ホワイトを施した“F SPORT”専用L texスポーツシートが装備される。L tex (エルテックス) は、本革に近い風合いと手触りを追求した合成皮革だ。通常のF SPORTには、ダークローズと呼ばれるワインレッド系の専用カラーが用意されている。保守的な日本マーケットなので、こうした派手なカラーよりも基本ブラック系が売れる。ただし、単にブラックというだけでは個性が足りない。こうした微妙なニーズを拾い上げ、モノトーンでまとめることで、派手さを抑えながらも特別感を上手く表現している。ボディカラーは“F SPORT”専用色の2色を含む、全5色を設定している。

今回の特別仕様車は、こうした装備以外に、衝突の回避や被害の軽減を支援するプリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー方式)、対向車や先行車を判別し、ライトを自動的にハイビームとロービームに切り替えることにより、夜間の歩行者の早期発見に寄与するオートマチックハイビームなどを特別装備し、安全安心に一層配慮したとしている。

安全安心に一層配慮したとレクサスは言うが、もはやこのレベルの安全装備は欧州のライバル車からみれば当たり前の装備で、それ以上の性能を誇る安全装備がほぼ標準装備化されている。レクサスISは、ほとんどがオプションなので安全装備面では完全に物足りない状況。

例えば、メルセデス・ベンツCクラスなどは、6つのミリ波レーダーを車両周辺に配置し360度で監視している。前方だけでなく、追突被害に対する予防まで含んだ安全装備だ。その上、前方車両に追従するだけでなく、車線からはみ出さないようにステアリング操作のアシストまでしてくれる部分自動運転まで可能。こうした装備が、エントリーグレードのC180系を除き標準装備化されている。もちろん、自動ブレーキは歩行者検知式だ。それに対してISの安全装備は、歩行者検知式ですらない。この差は大きい。

欧州の自動車アセスメントEURO NCAPでは、こうした歩行者検知式自動ブレーキなどを含んだ安全装備が標準装備化されていないと高評価されない仕組みへと進んでいる。それに対して、日本のJNCAPは標準装備化されていなくても高評価される。もちろん、歩行者検知式かどうかも評価されていない。

レクサスブランドは、欧州でも売っている。そのため、いずれ欧州の厳しい基準で評価され、評価が低い結果が出る前に、イッキに安全装備がグレードアップする可能性もある。すでに、レクサスには歩行者検知式自動ブレーキ機能をもったレクサス セーフティシステム+があるので、こうした装備を標準装備化しれば平均レベルは担保できる。問題は、こうした装備をいつ標準装備化するかだ。プレミアムブランドと言われるクルマは、より社会的地位の高い顧客が乗る。そうしたクルマこそ、先進装備をいち早く装備し、交通事故軽減する社会的役割を担う責任がある。もし、レクサスISの購入を考えているのなら、レクサスセーフティシステム+が装備されてからがお勧めだ。

さて、このIS300h特別仕様車「F SPORT Mode Plus」の価格は5,680,000円。ベースの300h F SPORTの価格が5,572,000円なので、約11万円のアップとなっている。この価格アップで、専用装備とオプションの安全装備がプラスされている。まぁ、価格アップ分相当といったところ。ただ、IS300hを買うのであれば、F SPORTはリセールバリューも高くお勧めグレード。また、個性的という面ではF SPORT Mode Plusは魅力的なので、IS300hを買うのであれば、この特別仕様車を選ぶといいだろう。ただし、安全装備を充実させたとはいえ、後側方の死角にいるクルマや接近するクルマを検知し警告してくれるブラインドスポットモニター[BSM]はオプションのまま。こちらは、5.4万円のオプション。もはや、最近ではコンパクトカーにも用意されている装備なので、プレミアムブランドのクルマなので装着しておきたい。

■レクサスIS F SPORTモードプラス価格

・IS300h特別仕様車“F SPORT Mode Plus” 2WD(FR) 5,680,000円/AWD 6,070,000円
・IS200t特別仕様車“F SPORT Mode Plus” 2WD(FR) 5,200,000円