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「もやもやクルマ選び」第3回 スズキ ソリオ バンディット

レアでマニアックなだけがクルマじゃない。新型車たちにも、世間から忘れられた中古車たちにも、クルマ好きのぼくらをワクワク「もやもや」させる悩ましい魅力を持つクルマがたくさんあります。第3回は2015年8月に新型となった「スズキ・ソリオ(バンディット)」をお送りしましょう。


◆意外に少ない?普通車トールワゴン


軽自動車ではいま、四角い車体で背が高い「軽トールワゴン/軽スーパーハイトワゴン」が主流になっていますが、普通車で同様のスタイルを持つ車種が少ないのは意外です。そんな中、スズキ・ソリオは自社の軽スーパーハイトワゴンであるスペーシアを普通車に拡大したような真四角なスタイルを持っています。このスタイルはソリオの伝統でもあるのですが、ソリオというクルマの歴史を紐解いていくと、スタイリングの秘密がわかるのでした。


◆始まりはあの「R」


そもそも最初のソリオは、1997年デビューのワゴンRの幅を広げて1リッターのエンジンを積んだ「ワゴンRワイド」が始まりなのです。ワゴンRはご存知のとおり軽トールワゴンの草分けです。そしてワゴンRのモデルチェンジに伴い「ワゴンR+(プラス)」となり、さらに車名が「ワゴンRソリオ」、さらに「ソリオ」と変化して、2010年からはワゴンRの幅拡大版の設計を止めた新設計のコンパクトハイトワゴンとして登場しています。ですが、ワゴンRの幅を広げた前任の車種のコンセプトは受け継いだため、真四角のスタイルとなったのでした。

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copyright_izuru_endo_2016_01_suzuki_solio_1280_745(クリックで拡大)そして今年2015年、ソリオは新型にスイッチしました。プラットフォームは新開発されただけでなく、エンジンをはじめとして多くのパーツを新たにしたことによって軽自動車の延長版的な印象だったソリオは、走行性能、静粛性、安全性などを大幅にブラッシュアップすることに成功しました。しかも軽量化まで実現しているのです。四角いボディがもたらす室内の圧倒的な広さや使い勝手は先代ゆずり。しかもさらにドアの開口部を広げたりする細かな改良が行われています。そして一番のトピックは「マイルドハイブリッド」の採用。これはすでにスズキの軽で実装されている「S-エネチャージ」をソリオにも搭載したものです。モーター機能付き発電機が減速時に電力を発電、それをリチウムイオンバッテリーに蓄積して加速時に最大30秒間モーターがエンジンをアシストします。


◆軽自動車で磨かれた技術が普通車に凝縮


小さなサイズに最大限の室内、軽自動車で鍛え抜かれたパッケージングと使い勝手の良さ、軽量化や安全性の向上、そしてハンドリングの楽しさまでも磨きをかけた新しいソリオ。日本の自動車メーカーの底力や真面目さを詰込んだ、かなりの実力の持ち主と言えるでしょう。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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