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「みんなの街のはたらくくるま」第3回 東急車輛製 道路清掃車(ロードスイーパー)


わたしたちの生活を支えている「はたらくくるま」にスポットを当ててイラストとともにご紹介するこのコーナー。第3回は、なかなかお目にかかれないけれど重要な役割を持つ「はたらくくるま」として、「道路清掃車(ロードスイーパー)」をお送りいたします。


◆深夜に姿をあらわす道路の掃除屋さん


道路清掃車、もしくは路面清掃車と聞いて、「?」と思う方も多いかもしれません。というのも、まず、昼間に走っていることは珍しく、交通量の少なくなった深夜になると活躍する「はたらくくるま」だからなのです。

道路清掃車にはいくつか形態があり、最近はふつうのトラックの荷台部分に清掃車としての機能を架装したタイプも見られるようになって来ました。これなら、エンジンやシャーシ、足回り、キャビンといった走行に関する部分は既存の車両を用いればいいので、開発コストも抑えられるのではないかと想像出来ます。


◆意外に合理的な特殊構造


でも!やはり道路清掃車といえば、この絵のような、ほかのどんなくるまに似ていない姿を持つタイプのイメージが強くあります。機能を突き詰めた装備、製品は、余計な華飾もなく、必要のないものは付いておらず、機能美に溢れているものが多いものですが、この道路清掃車もまた機能がカタチを作った好例です。

copyright_izuru_endo_roadsweeper_1280_899_2015_11(クリックで拡大)車体前方左右に取り付けられたブラシが散水しながら道路の端を掃除すると同時に、前方のプラウが道路のゴミやホコリをかき集めて車体の下に送り込みます。すると車体下部の大きなブラシが回転してゴミやホコリを車体に吸い上げ、前方のバケット部に入れて行きます。そしてバケット内のゴミがいっぱいになったら、バケット脇のアームが伸びて、ダンプなどのトラックにゴミを移すことが出来るのです。この構造のため前輪は固定で駆動軸となっており、車体後方下部にちょこんと付けられた後輪が舵の役目を果たすようになっています。なんて合理的な設計なのでしょう!

後輪はぱっと見ると1輪のようですが、よく見るとV字型に2輪が配置されています。これはV字型のほうがより小回りが効くからなのだそうです。たしかに深夜、かなりクイックにお尻をふりふりしながら路面を清掃する姿を見ることが出来ますものね。


ちなみにこの形の道路清掃車は、東急の電車を作っていた「東急車輛」製でした。同社は実は鉄道車両以外にも、トレーラーやごみ収集車といった特装車、立体駐車場なども数多く製造していましたが、2015年現在、鉄道部門はJR東日本の、特装車と立体駐車場部門は新明和工業の完全子会社となっています。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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