自分でハンドルを握らなくても移動できるクルマ、いわゆる自動運転車が街中を普通に走っているという社会は、もはやSF小説や映画の話ではなくなってきています。

現時点ではクルマに運転のすべてを任せることなど不可能だと思われるかもしれませんが、近い将来そんな日が必ずやってくるだろうと予感させる動きが、自動車業界には確かにあります。
自動車メーカー各社が競って自動運転技術・システムを開発している中、さらにIT業界からの参入も相次ぎ、それぞれ独自に自動運転車の開発に取り組んでいるのです。

自動車産業は今、自動運転車という新たな市場に舵を切ったばかりと言えますが、今後20年以内には完全自動運転のクルマが完成しているかもしれません。

そこで今回は、自動運転車開発にしのぎを削る様々な企業の中から、アメリカの大手IT企業Appleが開発していると言われる自動運転車(自動運転技術)についてご紹介してみたいと思います。


完全自動運転車の実用化はいつ?

8-8自動運転車が普及することにより、交通事故の減少、事故を起こした時の被害の軽減といった安全性の向上や、居眠り運転などの人的ミスやスピード違反の減少の他、交通渋滞を緩和する効果などが期待されています。

クルマの自動運転と聞くと、利用する人にとって最も心配なのは、事故を起こさないで走れるのか?
という点だと思いますが、今のところ大きな問題点もなく、試運転でも良い結果が出ているようです。

公道での自動運転車の試運転がよく行われているアメリカでは、運輸省によって自動運転のレベルの定義がレベル0~レベル4までの5段階に分けられています。
自分で普通に運転するクルマ(自動運転機能なし)はレベル0で、レベル1~レベル4までは自動運転の度合に応じて分かれています。
全ての運転機能を遂行し、走行中の交通状況を監視、記録するよう設計されているクルマ(完全自動運転車)はレベル4となりますが、レベル4のクルマが実用化されるのは、技術的なことや法整備などを考えると15年~20年先になると言われています。

ただし、
レベル1であればその条件は「1種類の運転支援システムを搭載」(自動ブレーキ、横滑り防止装置など)となり、このレベルであれば日本でも2013年ごろから急速に普及が進み始めています。
BМWやフォルクスワーゲン、ダイムラーなど欧州の自動車メーカーも運転支援システムの標準搭載を進めており、2020年にはレベル1の自動運転システムを搭載したクルマは全世界でおよそ5000万台に達すると言われています。


Appleの自動運転車計画「Titan」

Appleが自動運転車の開発に着手したという噂が流れ始めたのは、2015年の2月頃でした。
Appleが「Titan(タイタン)」という極秘プロジェクトに取り組んでおり、得意とするIT(情報技術)とスマートフォンなどの情報システムの分野における技術を、自動車メーカー各社に向けて提供し、ビジネス化を構想しているのではないかと報道されました。

ドイツのダイムラー社など欧州の大手自動車メーカーから技術者を相次いで引き抜き、自動運転技術の研究・開発に本格的に乗り出したと言われていました。

一方、インターネット検索最大手のGoogle(米)は、数年前から自動運転技術の開発に着手しており、この時すでに自動運転車の試作品(通称:Google Car)を完成させており、この分野ではAppleよりも一歩先を走っていました。

Appleが自動車産業への本格参入を意識し始めたのは、創業者のスティーブ・ジョブズ氏が存命だった2000年代半ば頃からで、スタートはGoogleに後れを取ったものの、どの企業よりも早い完全自動運転車の完成は長年の悲願と言えるでしょう。
Appleはこれまで、iPhoneとクルマを接続し、音楽や動画再生、地図アプリなどのiPhoneの機能をクルマのディスプレイを使って表示・再生する車載OS「CarPlay」を開発しており、CarPlayは各自動車メーカーに採用され、確実にシェアを伸ばしています。

今後、自動運転技術の分野では、Appleの持つ工業デザイン力を生かした内装、車体設計なども含めて10年単位の長期的な展望を視野に入れて開発を進めていくことでしょう。


次々とエンジニアをスカウトするAppleの本気

Appleが自動運転車開発において、さらに本気度を強めていることがうかがえる報道が8月に相次ぎました。

まず、Appleの自動運転車開発プロジェクト「Titan」の技術者(開発者)たちが、自動運転車の走行試験のための施設を探しているというもので、The Guardianが報じています。
Appleが目を付けたのは、サンフランシスコ(米)の近くにある「GoMentum Station」という米海軍の基地跡にある試験場で、敷地内には高速道路や踏切、トンネルなどがあるという広大な場所です。GoMentum Stationは管理している交通局によって一般人の立ち入りが禁止されており、秘密裏にプロジェクトを進めなければいけないAppleにとってはうってつけの施設と言えます。

そしてもうひとつは、AppleがTesla Motors(米)のシニアエンジニアを新たに採用したこと。
ロイター通信によると、Tesla Motorsのジェイミー・カールソン氏がAppleに入社したとのこと。
ジェイミー氏は、Teslaで自動運転車のプログラムに関わっていたというエキスパートで、8月にアップルの特別なプロジェクトグループに移籍したそうです。
また、Appleはカールソン氏のほかにも、自動運転技術やシステム開発の専門家を6人採用したと言います。着々と自動運転車プロジェクトの人材を集め、開発チームの強化をはかっているAppleの動きに自動車業界の注目が集まっています。


自動運転車の開発に一段と熱が入っているように見える最近のApple。
しかしまだ、Appleがどのような自動運転車を開発しようとしているのか、はっきりとしたことはわからないそうです。
まだまだ謎が多いAppleの自動運転車開発ですが、どのようなクルマが登場するにしても、きっと私たちの生活を一変する革新的なクルマであることは間違いないでしょう。