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悩ましき2台 ホンダ S660 と ダイハツ コペン

クルマ選びって楽しいですよね。でも、最後に選ぶ決め手ってなんだろう?って思うこと、ありませんか。このコーナーは、クルマ選びで悩み疲れたそんなアナタの背中をドーンと押しちゃいます。迷える子羊よ、存分に迷いたまえ・・・・

今回は軽自動車のオープンスポーツカーの対決、ホンダ S660 VS ダイハツ コペンです!2014年のコペン、そして今年2015年に後を追うようにして登場したS660。どちらも、2人乗りの軽規格のオープンスポーツカーです。価格帯はコペンのほうがちょっと安いのだけど、でも、S660はミッドシップでまるでスーパーカーみたい…うーん、果たしてこの2台で迷ってしまったら、いったいどうしたらいいのでしょうか!?


同じようでいて大きく異なる2車の構造

ではS660とコペンについて、簡単にその違いを書いてみましょう。共通点は軽自動車で、660ccで、3気筒ターボエンジンで、64馬力であるということ。エアバックをはじめとした安全装備は、21世紀も15年が過ぎたいまでは、軽自動車でも高いレベルで搭載されています。ここでは大きな違いは得られません。また、どちらも動力性能は必要充分。スポーツカーを演出するほどよくスポーティな排気音などもどちらにも備わっています。

大きな違いは、エンジンの搭載位置。キャビンの真後ろにエンジンがあり後輪を駆動するS660と、ふつうの軽自動車同様前にエンジンを置き前輪を駆動するコペン。それと、ルーフの開閉方法も大きく違います。S660はロータス・エリーゼのように布製ルーフを巻き取ってボンネット内に収納する方式で、コペンは先代同様、電動格納式となっています。


S660はストイックなカリカリのスポーツカー

(C)izuru_endo_s660_2015

S660はかなり本格的なスポーツカーです。抜群のハンドリングを得られるミッドシップレイアウトで、ルーフは巻き取り式。そのルーフをボンネットにしまうため、ボンネット内のボックスはルーフで埋まってしまいます。リアにはトランクもなく、シート後部にトートバックも入らないS660は、事実上荷物の搭載能力はゼロなのです。乗り心地は硬め、着座位置も低く、乗り降りもちょっと一苦労。装備はベーシックモデルの「α」でも充分に備わっていますが、全般的にいまどきのクルマには珍しいストイックな設計となっています。


のんびりゆったりも楽しい「ゆるい」コペン

(C)izuru_endo_copen_2015

かたやコペン、スポーツカーの名に恥じぬハンドリングや操縦の楽しさを持ちつつも乗り心地は良く、電動格納で後部トランク部分にルーフが格納されても、多少なり荷物が置けます。屋根を開けなければ、そこそこのスペースも生まれます。乗降性もS660ほどよっこらしょ感がありません。スポーツカーを名乗りつつも、カリカリにチューンされたクルマではなく、どこかほんわかした雰囲気と乗り味がむしろコペンの魅力だと思います。飛ばさなくてもじゅうぶん楽しいのです。


決め手は、スポーツ度の度合い!?

結論から言ってしまうと、この2台のどちらかを選ぶときの基準は、クルマにどこまでを求めるか、にあります。S660だって街中でも充分楽しいのだけど、やはりワインディングに入った時は別格です。でもそこまでは硬めの乗り心地を我慢もしなくてはいけません。2名乗車ではスーパーの買い物もままなりません。まさにガチガチのスポーツカーなのです。コンセプト的にはロータス・エリーゼにも比肩するほどの漢(おとこ)気溢れたクルマだと思います。

一方のコペンはどちらかというと、「スポーツカーだけどシティ・コミューター」的要素が強いかも。日常生活のアシとしても使える、気軽さも良いところです。いい意味で本格的ではないんですね。もちろんワインディングも大得意。だけど、コペンにとっては全方位で活用出来るうちの一場面、というイメージになります。老若男女、誰でも気軽に所有も出来るはずです。

つまり、どちらもスポーツカーではあるけれど、セカンドカーで週末の峠エクスプレス的(しかもひとりで!)本格スポーツカーS660と、ファーストカーとしても実用性がありほどよいスポーティさがあり、ドライブも2人でのんびりというイメージのコペン、ということが決め手になるかも。あとコペンは樹脂製のボディパネルが交換出来るので、「着せ替え」によって飽きずに所有出来るかもしれませんね。


迷える子羊よ、迷いは消えただろうか

ということで、迷っているアナタ、いかがでしたでしょうか。もちろん現車に乗り、触れ、感じて欲しいのですが、それでも迷ったらぜひこの記事を思い出してください。でも言えるのは、どちらを選んでも【家のガレージにオープンカーがある嬉しさ】を得ることが出来るということ。これって、幸せなことですものね。

え?そんなこと言うからまた迷ってしまったって?(笑)えーと、そしたら、もう一回読み返してみてください^^;


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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