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「みんなの街のはたらくくるま」第2回 トヨタ ハイラックス 郵便パネルトラック

わたしたちの生活を支えている、くるま。配送、配達など生活に必要な物資の配送を行うトラックや、乗客を運ぶバスやタクシーなど、実にさまざまな種類のくるまたちがその任を担っています。このコーナーではそんな「はたらくくるま」にスポットを当ててイラストとともにご紹介していきます。

第2回目は「はたらくくるま」の代表である「郵便車」の中から、ぼくの思う「最後の“らしい”郵便トラック」として、「トヨタ・ハイラックス(6代目)郵便パネルトラック」をお送りいたします。


働くピックアップの代表格

トヨタの小型ピックアップトラックがハイラックスで、1968年に初代がデビューしています。1983年登場の4代目からはアウトドア感覚満載の「サーフ」を追加、1988年の5代目とともにサーフはよく売れたSUVとなりました。その後ハイラックスは1997年に6代目となりますが、サーフはアメリカ向けの「タコマ」がベースとなったため、名前こそハイラックスですが、厳密にはハイラックスではなくなりました。一方、純粋な日本国内のハイラックス(トラック)は2004年で生産が終了、国内向けのハイラックスはその歴史をこの6代目で終えています(海外では生産が続き、現在8代目)。

トミカのミニカーでも郵便車といえばハイラックス、というイメージがあるほど、小口の郵便トラックといえばハイラックスが思い浮かびますが、よく見るとハイラックス郵便パネルトラックって、いろいろと特徴がありますよね。まずフェンダーミラーであること、ちょっと背の低い箱を背負っていること、そしてコラムマニュアルシフトであることです。これもまさに昔ながらの昭和の郵便トラックのイメージそのものという感じがします。6代目ハイラックスが生まれた1997年の段階ではもう、積載力に優れた軽バンなどもあったと思うのですが、長いハナを持つピックアップトラックベースの郵便車がこの時代でも採用されていたことは面白いですよね。


日本の郵便事情が生んだ孤高のスタイル

(C)izuru_endo_hilux_1280-733(クリックで拡大)なお、なぜパネルトラックの背がちょっと低いのかというと、かつて積載する郵便用パレット(荷物を載せるためのラックのようなもの)の高さが一般に使われるものよりも低かったそうで、それに合わせるかたちで郵便専用車のパネル全高が決まったからなのだとか。現在では郵便輸送もさまざまな業者が参入出来ることになり、郵便専用車は影を潜め、一般的なキャブオーバー型パネルトラックも見られるようになりました。

製造終了から10年以上が過ぎ、軽バンへの代替も進んでしまい数を減らしているハイラックスの郵便トラック。今回は郵便専用車という限られた用途ゆえに生まれた、その特徴的なスタイルを絵にしてみました。まさにこれこそ「ぼくらの郵便トラック」の姿なのではないでしょうか。そして、もう二度と新しく出ることの無いスタイルでもあります・・・。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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