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一枚の名車絵 第1回 デロリアンDMC-12(1981〜1982)


221616.comをご覧のみなさま、はじめまして。イラストレーターの遠藤イヅルと申します。このたび当221616.comで、イラストを中心としたエッセイの連載をさせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。
世界の名車を始め、中古車で気になるクルマや買い時のクルマ、日々の業務で働くクルマや希少なクルマをご紹介しながら、みなさまのモヤモヤ悩ましいクルマ選びをサポートさせてもらおうと思っています。お楽しみに!


ジウジアーロデザインとロータスの融合

さて、最初にご紹介するのは映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のタイムマシンですっかりおなじみ、クルマに詳しくない方でも知名度が高いデロリアンです。正式にはDMC(Delorean Motor Company Ltd.)という会社が作ったDMC-12というクルマになります。

1975年、GM(ゼネラルモータース)の副社長だったジョン・Z・デロリアンは、副社長のポストを辞してGMを退職、自らの名前を冠したDMC(社)を設立、1981年になってようやくDMC唯一のスポーツカー、DMC-12の発売にこぎつけます。脚周りをはじめとしたメカニカル部分はロータスが手がけており、X型バックボーンフレームのシャーシが採用されていました。エンジンはPRV(プジョー・ルノー・ボルボの共同開発)製SOHC2.9ℓV6で、ミッドシップではなくリアにオーバーハングして搭載され、5速MTもしくはルノー製3速ATを介して後輪を駆動しました(つまりリアエンジン・リアドライブ)。


エクステリアはDMC-12の見所のひとつで、ヘアライン仕立てのステンレス無塗装の外皮、そしてガルウイングドアが印象的です。この個性的なエクステリアを手がけたのは、かの有名なカーデザイナー、ジウジアーロ。少量生産スポーツカーに必要なエキゾチックさを見事に体現しています。


わずか8000台 悲運の結末による短い生涯

ei_20150727_01_1280(クリックで画像拡大)ところが、デロリアン氏の夢は、たった2年で潰えることになりました。ちなみにDMC(社)は本社こそアメリカ・デトロイトに存在したものの、工場は北アイルランドのダマリーに建設されていました。そのため、北アイルランドへの工場誘致を希望していた英国政府から補助金を得ることが出来たのですが、社長のデロリアン氏がこの補助金を着服していたというスキャンダルと、1982年にデロリアン氏が麻薬所持で逮捕された影響を受けて、会社は1982年に倒産してしまったのです。


こうしてデロリアンは2年と生産台数8000台+という短い生涯を閉じました。でも、ロータス設計にジウジアーロデザインのボディ、そもそもの希少性、映画への出演、スキャンダルで消えたDMC(社)などの様々なサイドストーリーによって、デロリアンは生産終了後も高い人気を誇ることとなりました。


なお、ボディがステンレス製だと勘違いされることが多いMC-12ですが、実はボディパネルはFRPなのです。これに薄い半光沢のステンレス鉄板を貼ってあるだけ。でも、それでもこの「ステンレス無塗装」というインパクトは、デロリアンが唯一無二のクルマであるという存在感を示す大事な特徴となったのでした。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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