低燃費性能に優れたハイブリッドセダンだが、物足りない安全装備


トヨタカムリ クラウンしか売れない国産セダンマーケットなのだが、カムリは隠れたベストセラーモデルとなっている。

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現行カムリは、2011年9月にフルモデルチェンジした。セダンが売れない日本では、それほど話題にならないが、北米を中心としたグローバルセダンとして、トヨタの基幹車種ともいえる重要なモデル。カムリの売れ行きひとつで、トヨタの業績が大きく左右されるほどだ。そんなカムリは、北米で直4 2.5LとV6 3.5L、そして2.5Lハイブリッドという3つのパワーユニットが用意されている。

しかし、日本ではセダンが売れない上に、ガソリン車ではマークXがあることからも、日本マーケットに投入されたカムリは、2.5Lのハイブリッド車のみとなった。

最新のハイブリッドシステムで23.4㎞/Lの低燃費性能を誇る

このカムリに搭載されているFF用最新のハイブリッドシステムは、2.5Lの2AR-FXE型エンジン搭載している。23.4㎞/Lという低燃費性能を誇る。トヨタには、同じFFのハイブリッドセダンにSAI(サイ)があるが、こちらは旧式のハイブリッドシステムを使っていることから、燃費は22.4㎞/Lとなっている。

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カムリは、SAIより燃費やシステム出力でも勝り、当時、価格も304万円からと、一見安く見えたこともあり、爆発的に売れるというモデルではなかったが、コンスタントに販売台数を積み重ねていく。トヨタの月販販売目標は500台と控えめだったこともあるが、発売からしばらくは、月販販売台数は1,000台を超えていた。マイナーチェンジ直前でも500台/月程度を売っていたので、隠れたベストセラーモデルともいえるだろう。

燃費はそのまま、内外装の変更や安全装備の追加設定が中心


そんなトヨタ カムリがマイナーチェンジした。今回のマイナーチェンジは、主に内外装の変更や安全装備の追加設定が中心。ハイブリッドシステムそのものには、改良が加えられていないようで、燃費は23.4㎞/Lのまま変更は無い。

外装は、若々しさを感じる顔に変更

トヨタカムリ 今回大きく変更された外観部分だが、ひと目で分かる通り、顔が大きく変化した。まるで、違うクルマのように大きく変貌を遂げている。ヘッドランプ、フロントバンパー、ラジエーターグリルを変更し、台形の形状をしたバンパーと、細くシャープなグリルに細めとなったヘッドライトが組み合わされている。従来モデルよりも、全体的にスッキリとした精悍さがあり、スポーティさも兼ね備える。さらに、LEDクリアランスランプを採用することで、先進性を強調。若々しさを感じる顔になったので、若年層のセダンファンにも好感度は高いだろう。

対して、リヤビューは、マイナーチェンジ前とそれほど変わった印象はない。コンビネーションランプ、バンパー、ガーニッシュを変更。リフレクターを下端に配置することで踏ん張り感を強調した。

マルチインフォメーションディスプレイ採用で運転をサポート

インテリアでは、マルチインフォメーションディスプレイ(4.2インチTFTカラー)を採用し、瞬間燃費やエコドライブレベルなど様々な情報を表示することでドライバーの運転をサポート。

上質な乗り味と静粛性をさらに向上


カムリは、300万円以上する高級車。マイナーチェンジでは、高級ハイブリッドセダンとしての魅力をさらにアップするために、足回りにチューニングを施した。高速安定性を高めたほか、路面からの振動を低減することで上質な乗り味を実現。ハイブリッド車なので、基本的に静粛性は高いのだが、さらに、ドアの防音材追加やカーペットの改良を行うことで静粛性をさらに向上した。

ようやく平均レベルとなった安全性能


カムリのマイナーチェンジで、最も進化したというべきか、ようやく平均的レベルとなったのは安全装備だ。衝突する可能性が高いと判断した場合に、自動ブレーキなどによる衝突回避、または衝突被害の軽減を支援するプリクラッシュセーフティシステムが用意された。測定距離の長い高性能なミリ波を使ったシステムだ。コンパクトカー や軽自動車 が多く使う赤外線タイプより、より高い速度域から自動ブレーキが作動する。全車との相対速度が大きいほど、大きな事故になる可能性が高まるので、より高度な安全装備と言える。

また、このミリ波レーダーからの情報によって先行車を認識、設定車速内において先行車との車間距離を走行速度に応じて維持するブレーキ制御付のレーダークルーズコントロールも設定された。これは、高速道路などでドライバーの疲労軽減に役立つので、おすすめしたい装備のひとつだ。

その他、車線の逸脱を検知してブザーとディスプレイ表示でドライバーに警告するレーンディパーチャーアラート(LDA)や、夜間走行時に室内カメラが前方の明るさを検知し、ハイビームとロービームを自動で切り替え、ドライバーの前方視界確保を支援するオートマチックハイビームも用意されている。

さらに、高齢ドライバーや初心者、クルマの運転が苦手な人におすすめしたいのが、ブラインドスポットモニター(BSM)。視界が狭くなったり、暗いトンネルや夜間、雨など、クルマの周辺が分かりにく時により効果を発揮する。隣の車線を走る車両をレーダーで検知。車両が死角エリアに入ると、ドアミラーに搭載されたLEDインジケーターが点灯。その際にサイドターンランプを点滅させると、LEDインジケーターも点滅し、ドライバーに接触注意の喚起を行う。うっかりミスをフォローしてくれる実用性が高い安全装備だ。

安全性能は大幅に向上したが、全てオプション設定

こうした安全装備の追加で、カムリの安全性能は大幅に向上している。しかし、トヨタの安全思想の考え方なのか、これらの安全装備はすべてオプションなのだ。さらに、エントリグレードには、オプションでも装備できない状態。これらの安全装備は、特別先進技術という訳でもなく、オプション価格は122,040円/132,840円という金額だ。こうした安全装備は、もはや輸入車からみたら標準装備が当たり前の状態だ。

そういう時代なのに、とにかく安全装備をオプション化するトヨタの営業部門の考える安全思想は、かなり低いと感じさせる部分だ。ちなみに、コンパクトカーのフォルクスワーゲン ポロは、マイナーチェンジでミリ波を使った追突被害軽減自動ブレーキを標準装備化している。ポロの価格は2,239,000円からとなっていて、新型カムリより100万円以上安い。より大きく車格の上のカムリだが、安全装備ではポロを超えていない現実がある。それを明確にしているのが、置くだけ充電という装備を標準装備化しているグレードがあること。こういう装備こそ、オプションを設定すべきだ。携帯電話の充電器より、クルマなのだから安全装備が重視されて当然のはず。標準装備の優先順位への考え方が違う。

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トヨタ カムリの選び方


さて、 カムリの選び方だが、2.5Lのハイブリッドしかないので、欲しい装備があるかないかというグレード選びになる。上記でレポートした通り、エントリグレードは安全装備が装着できないので選ばない方がよい。そうなると、Gパッケージかレザーパッケージのどちらか、という選択になる。両グレードとも、ミリ波の追突被害軽減自動ブレーキなどのオプションは、絶対に装備したほうがよいので、大きな違いは、レザーシートと純正ナビといったところ。価格差は約61万円。その内、ナビのオプションが約34万円なので、レザーシートとその他の装備差分が約27万円ということになる。そう考えると、レザーパッケージがややお得な印象。予算に余裕があるのなら、レザーパッケージがよいだろう。

また、カムリの場合、中古車が買い得感がある。やはり、セダンは人気が無いのか、高年式で200万円台のクルマがたくさんある。マイナーチェンジ後のモデルもそうした傾向になりそうなので、予算が厳しいのならしばらく待って中古車という選択も悪くない。

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トヨタ カムリ価格


カムリの価格は以下の通り。

・カムリ 3,207,600円
・Gパッケージ 3,413,782円
・レザーパッケージ 4,026,437円

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◇執筆者プロフィール◇
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。


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