スズキ ソリオ

<イッキにクラストップレベルの安全装備を得て、さらにユニークさに磨きがかかった!>

スズキソリオ2010年12月にデビュースしたズキ ソリオ。ワゴンRを大きくしたようなハイト系ワゴンといったスタイリングをもつ。もちろん、ハイト系ワゴンということもあり、室内スペースや使い勝手を重視したモデルだ。ユニークなのは、このクラスでは珍しく両側スライドドアをもつ。そのため、使い勝手は抜群。クルマへの乗り降りもしやすく、若年層だけでなく、子育て層からシルバー層まで、幅広い顧客に支持されるモデルと言える。

そうしたユニークさから、コンスタントに販売台数を重ねるベストセラーモデルとして成長したスズキ ソリオ。その理由のひとつとして、こまめに改良が繰り返され、着実に進化していったことがあげられる。1.2Lエンジンを搭載するソリオは、急速に進む低燃費化に合わせ、何度も改良が行われ燃費性能を伸ばしていった。アイドリングストップ機能の装着や、デュアルジェット エンジンとエネチャージなど、新技術も惜しみなく投入されている。

ただ、ソリオは両側スライドドアをもつことから、価格はやや高めの設定。そのため、価格上昇を嫌ってか、横滑り防止装置など安全装備に関して、なかなか標準装備化が進まなかった。当時のスズキは、とにかく安全装備より価格重視という姿勢だったのだ。

ところが、そうも言ってられない状況となる。ダイハツ がムーヴ に追突被害軽減自動ブレーキを装着。やや様子を見ていたようなスズキだったが、ムーヴの売れ行きを見て急遽ワゴンR に追突被害軽減自動ブレーキを開発し装備した。それも、ダイハツより安く装備できるようにしたのは、価格にこだわるスズキらしさが出た格好だ。

イッキに安全装備を重視すると思われたスズキだが、軽自動車以外は相変わらずの放置状態。とくに、ソリオのように背の高いクルマは重心高も高い。重心の高さは、もしもの時に横転する可能性がアップする。そのためにも、横滑り防止装置の装備は必須ともいえる。また、滑りやすい路面でも、クルマを安定させてくれるので、横滑り防止装置は高い頻度で機能してくれる安全装備といえるものなのだ。

今回の改良では、標準装備しなくてはならない期限ぎりぎりで横滑り防止装置であるESPを標準装備化してきた。非装着では、クルマとして売れないので仕方のないところだろう。スズキだけでなく、安全装備を甘く見ていたメーカーは続々と標準装備化が行われている。

スズキソリオそんなスズキだったが、今回高く評価したいのは、エントリーグレードを除く「X」、「S」、「特別仕様車BLACK&WHITEII」、「BANDIT」の各機種に、衝突の回避や衝突時の被害軽減を図るレーダーブレーキサポートII(前方衝突警報機能、前方衝突被害軽減ブレーキアシスト機能、自動ブレーキ機能)、エマージェンシーストップシグナル、ESPといった安全装備に加え、クルーズコントロールシステムを標準装備したことだ。多くのメーカーが横滑り防止装置だけを標準装備化するだけで終わっているのに対し、スズキはミリ波を使った追突被害軽減自動ブレーキをほぼ標準装備化した。

ミリ波の追突被害軽減自動ブレーキ、レーダーブレーキサポートIIは、ワゴンRのレーダーブレーキサポートなどが、赤外線を使ったものに対してミリ波を使っているところが大きく違う。赤外線は、大雨などの悪天候や夜間などでは、機能しないことがあるのに対して、ミリ波は悪天候や夜間でも前方の車両を検知。それだけでなく、検知可能距離が長いのが特徴だ。検知可能距離が長ければ長いほど、高い速度域からの自動ブレーキが可能になる。高い速度での事故ほど、大きな事故になるので、そうしたリスクを赤外線を使った自動ブレーキよりも軽減してくれる。

そんな高性能なミリ波を使った追突被害軽減自動ブレーキを、コンパクトカーに初搭載したのが、このソリオということになる。30㎞/h以下程度でしか効果のない追突被害軽減自動ブレーキよりは、より高性能ということにあるので、ソリオの安全装備はライバルに対して頭ひとつ確実にリードしたことになる。これは、英断だ。
スズキ ソリオの価格は、こうした安全装備により若干上昇した。しかし、ライバルを圧倒する高い安全性能とクルーズコントロールなどの利便性が増したことを考えれば、十分に納得のいく範囲といえる。この安全装備が、ソリオだけでなくスイフトなどの小型車、さらにはワゴンRなどの軽自動車にも採用されていくことに期待したい。

■価格:・X 2WD 1,628,640円~BANDIT-DJE 4WD 1,995,840円