<カメラにレーダーなど、多くのセンシング技術で、知能を得て自ら考え判断する最先端技術を搭載>
メルセデス・ベンツは、フラッグシップモデルである高級セダンメルセデス・ベンツSクラスを8年ぶりにフルモデルチェンジ。2013年10月1日より予約注文の受付を開始し、11月上旬より販売、納車を開始する。
ボディサイズは参考数値となるが、エントリーグレードとなったS400ハイブリッドで、全長5,116×1,899×1,493mm。先代のハイブリッドモデルと比べると、全長が+16mm、全幅が+29mm、車高が+8mm高くなった。ホイールベースは、3,035mmと変化はない。
ボディサイズは多少大きくなったのが、全体のシルエットは先代と大きく変わった印象はない。デザインは、最新のメルセデス・ベンツ流儀に則り、サイドビューはクーペを思わせる美しく流れるようなシルエットをもち、ボディサイドのシャープなドロッピングラインが力強さをアピールする。全体により引き締まった印象が強くなったせいか、逆に先代よりも小さく見えたりもする。ヘッドライトは、少し前にマイナーチェンジされたEクラス同様LED化。リヤコンビネーションランプもLED化されており、夜間などひと目でSクラスと分かるほど強烈なインパクトを放つ。
搭載されるパワーユニットは、3タイプ。エントリーグレードのE400ハイブリッドには、メルセデスとして第2世代となる最新のハイブリッドシステムを搭載。最高出力306PS/ 225kW、最大トルク370Nmを発生する最新世代3.5L V型6気筒BlueDIRECTエンジンに、高性能電気モーターと小型軽量リチウムイオンバッテリーを組み合わせた。この組み合わせにより、最高35km/hまで電気モーターのみの走行が可能なった。さらに、高速走行時に惰性で巡航するセーリング機能も備え、燃費効率は従来モデルに比べ約2割の向上。欧州NEDC総合燃費は15.9km/Lで、日本ではエコカー減税対象予定となっている。
S550ロングに搭載されるエンジンは、最新世代4.7L V型8気筒ツインターボBlueDIRECTエンジン。最高出力455PS /335kW(従来比+20PS/15kW)、最大トルク700Nmとパフォーマンス向上と、約8%の燃費低減を実現している。欧州NEDC総合燃費は11.6km/Lで、エコカー減税対象予定となっているが、未だに4.7L V8ツインターボなどと、このクラスには大排気量を重視する傾向が強い。そして、Sクラスの最上級グレードに君臨するのはS63AMG。AMG社開発による5.5L V型8気筒直噴ツインターボエンジンが搭載れ最高出力585PS/430kW(従来モデル比+41PS/30kW、パフォーマンスパッケージ比+14PS/+10kW)、最大トルク900Nm(従来モデル比+100Nm、パフォーマンスパッケージに同じ)の大幅なパフォーマンス向上を図った。燃費がどうのというクルマではないが、環境性能を高めるため従来モデルより低燃費化している。ボディはロングホイールベースモデルのみの設定だ。
メルセデス・ベンツSクラスで、最も注目したいのが、メルセデス・ベンツ自ら『知能を備えた』とよぶ先進テクノロジーの「インテリジェントドライブ」だ。「ディストロニック・プラス」は車間距離を維持するだけではなく、車線のカーブと先行車両をモニターしながらステアリング操作のアシストを行う機能を追加している。ステアリングに手を添えている程度で、クルマが先行者に追従していくので、自動運転に近い感覚だ。「BAS(ブレーキアシスト)プラス」には飛び出し検知機能が加えられた。前方を横切るクルマや歩行者の飛び出しを捉えてディスプレイと音で警告する。ドライバーが警告に反応しない場合は「PRE-SAFEブレーキ」の自動緊急ブレーキが段階的に作動。また、リアバンパーに設置されたマルチモードミリ波レーダーが後方からの衝突の危険を検知すると後続車に警告するとともにブレーキ圧を高めて自車をロックし二次被害を軽減する「リアCPA(被害軽減ブレーキ付後方衝突警告システム)」を新たに装備した。
一部のオプション装備となるが、ナイトビューアシストプラスが用意されている。この装備は、まさに近未来的安全装備。夜間走行時、照明のない前方路上に歩行者や動物を検出すると、インパネ中央の表示をナイトビュー映像に自動的に切り替える。人や動物を見つけると、赤く強調表示することでドライバーの注意を促し、検出した歩行者に対しては、なんとヘッドライトをスポットライトのように当てて、ドライバーと歩行者の双方に注意を促すスポットライト機能も備えている。まさに、夜間走行時の究極の安全装備ともいえるものだ。この装備は、S550 longにオプション設定、AMGモデルに標準装備されている。
数多くのカメラやセンサーは、安全装備だけに使われているわけではない。Sクラスのような高級車にふさわしい快適な乗り心地を生み出すためにも使われている。この技術は、世界初のサスペンションシステム「マジックボディコントロール」と呼ばれ、ステレオマルチパーパスカメラが走行中前方の凹凸を捉え、その路面状況に応じて瞬時にサスペンションのダンピングを制御する。その結果、ボディに伝わる衝撃を最小限にしてフラットで極上の乗り心地を実現するというものだ。
Sクラスには、カメラにレーダーなど、多くのセンシング技術が使われた結果、人間の能力をはるかに超えた情報量を得ることができた。その情報を俊敏に処理し、的確にドライバーをサポートするだけでなく「知能を得て、自らが判断するクルマ」となったことが、新型メルセデス・ベンツSクラス最大の特徴。こららの技術をより進化させたものは、危険や障害物を察知した後、回避行動をとることも現実的に可能になってきているという。こうなってくると、もはや人間より機械任せのほうが安全ということになる。それは、クルマの自動運転化だ。そんな近未来のクルマに近い装備を得たSクラスは、まさにメルセデス・ベンツのフラッグシップモデルといえる。
さて、Sクラスの選び方だが、S400ハイブリッドでなんの不満もない状態。環境などのバランスを考えるとベストなグレードだ。ただし、後席重視でロングボディを選ぶとハイブリッドモデルは選べず、S550かS63AMGというもはや無駄ともいえる大排気量車を選ぶしかない。最近のメルセデス・ベンツは、4WDである4MATICが増えてきたが、このクラスでも降雪地域の顧客向けにS400には4MATICが欲しいところだろう。4MATICをベースに選ぶとなると23,400,000円のS 63 AMG 4MATIC longしかないのが現状だ。
メルセデス・ベンツSクラス価格・S 400 HYBRID 右 3.5L V6直噴+ハイブリッド ¥10,900,000
・S 400 HYBRID エクスクルーシブ 右 3.5L V6直噴+ハイブリッド ¥12,700,000
・S 550 long 左/右 4.7L、V8 直噴ツインターボ ¥15,450,000
・S 63 AMG long 右 5.5L、V8 直噴ツインターボ ¥23,400,000
・S 63 AMG 4MATIC long 左 5.5L、V8 直噴ツインターボ ¥23,400,000