メルセデス・ベンツSL
<高価なAMGスポーツパッケージを標準装備しながら、価格据え置きを実現>
メルセデス・ベンツSLクラスは、11年振りにフルモデルチェンジし2012年3月にデビューした。7代目となったSLは、フルアルミ製のボディシェルが採用され、ホワイトボディで、ざっと30%もの軽量化が図られた。軽量化は、走りや燃費に貢献。さらに、ボディのねじり剛性も20%向上させている。

同時に、最新世代のパワーユニットが搭載された。V6の3.5LのSL350とV8の4.7LターボのSL550が用意され7速ATと組み合わされている。また、5.5LのV8ターボエンジンを積むハイパフォーマンスモデルSL63AMGに、受注生産で、さらにパワフルなモデルである6L V12ターボのSL65AMGが用意されてた。

そんなメルセデス・ベンツSLが、日本デビューからわずか1年半で、大幅に装備を見直し再投入されたのだ。今回の装備見直しは、よりスポーティなルックスに変更するAMGスポーツパッケージが標準装備された。AMGスポーツパッケージは、エアロパーツを主体としたAMGスタイリングパッケージや、19インチAMG5スポークアルミホイールなど、多岐にわたる。さらに、インテリアにもAMGスポーツステアリングやホワイトパイピングを施した専用デザインのスポーツシートを採用している。

このAMGスポーツパッケージの価格は、当時90万円相当。これが標準装備されると、当然90万円程度の価格アップは普通だ。しかし、メルセデス・ベンツは、このAMGスポーツパッケージを標準装備しながら、価格はいずれも従来モデルと同じとしたのだ。つまり、AMGスポーツパッケージ分が、値引きされているということになる。

AMGスポーツパッケージは、SLでも高い人気を誇るオプション。多くの顧客が選ぶと言われている。販売台数が多く見込めないSLのようなクルマは、多くのグレードをもつとコストがかさむ。とくに、日本での輸入車は船便で数ヶ月かけて輸入される。そのため、売れ筋以外のグレードでも一定の数は在庫しなくてはならない。人気オプションならば、標準化してしまったほうが効率がいいのは事実だ。また、モデル末期になると、人気オプションを装備してリーズナブルな価格にし、限定車などで提供というのはよくあることだが、SLはまだデビューして1年半。そう考えると、かなり、大胆な装備変更だ。

メルセデス・ベンツSLのエントリーグレードの価格は、約1,200万円と高価だ。それも、高額スポーツモデルなので、買える顧客はかなり限られた高所得者。そんな顧客層が、90万円程度の割安感が出たからといって、直接の購入動機にはならないだろうと考えるのが普通だろう。しかし、メルセデス・ベンツの中では、このクラスの高級車であっても、価格も重要な購入動機のひとつとして、SLにより高い価格というバリューを与えた。

今まで、メルセデス・ベンツなどの高級車は高いほうが売れる傾向にあった。今でも、トップグレードのSL63AMGは、高い構成比を占める。しかし、クルマ離れが顕著になり、合理的な考えをもつ世代が増えた現在、ただ単にブランドだけにお金を使わない時代になったようだ。プロダクトとブランドの価値だけではなく、価格の価値も必要ということなのだろ。メルセデス・ベンツという絶対的な高級車ブランドであっても、簡単に売れない時代なのだ。

メルセデス・ベンツは、数々のモデルの仕様を見直すだけでなく、価格も見直し、新たなブランド価値を構築中。その結果、軽自動車とコンパクトカー、ミニバンしか売れない国産メーカー苦悩を尻目に、車種ラインアップを増やし販売台数も好調に伸ばしている。

■メルセデス・ベンツSLクラス価格
・SL 350 3.5L、V6 左/右 ¥11,900,000円
・SL 550 4.7L、V8 ツインターボ 左 ¥15,600,000
・SL 63 AMG 5.5L、V8 ツインターボ 左 ¥19,800,000
・SL 65 AMG 6.0L、V12 ツインターボ 左 ¥30,500,000

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