三菱 i-MiEV(アイ ミーブ)&トヨタ プリウス エクステリア

静音性の高いハイブリッドカーや電気自動車の安全対策を考える

トヨタ プリウス ハイブリッド エンブレム

 国土交通省では、12月4日までを期限として「ハイブリッド車等の静音性に関する対策について」というパブリックコメントを募集していた。これは、昨今のハイブリッドカーの急速な普及と、今年、富士重工業と三菱自動車工業から相次いで軽電気自動車が発売され、来年には日産からも小型電気自動車が発売となり、さらには、この年末にトヨタからプラグインハイブリッドカーが発売になる情勢を受け、とくに低速走行時に走行音の静かなこれらのクルマの接近をどのように歩行者などへ知らせるべきか、安全確保のための対応策を、国土交通省と業界団体等で検討しているためだ。
 なかでも、目の不自由な人たちは、音を頼りに危険の察知を行うため、静かなクルマの接近には気が付きにくいと不安の声が出されている。このため、今年7月より対策検討委員会(委員長:東京大学・鎌田実教授)が国土交通省内に設置され、クルマの走行音を想起させる何だかの音を、時速20キロメートル以下の走行で発する案が検討されてきた。これに対する、意見募集が公に行われているのである。
 その案に、私は反対である。この対応策は、一見妥当な内容に見える。だが、この音を出す策の背景にあるのが、クルマが音を出すことで歩行者を道端へ避けさせることを原則としている点に、大いなる疑問がある。なぜなら、クルマの安全は、それを運転するドライバーが全責任を負うべきものであり、「クルマが通るからそこをどけ」とでも言うような、音出しで歩行者を威嚇することは本末転倒であるからだ。歩行者がいるならば、まずクルマが減速し、十分注意した上で、クルマが歩行者を避けながら走るのが本筋である。それでも、なお歩行者がクルマに気がつかない様子であったなら、軽くホーンで知らせるという手順であるべきだ。その際に、既存のビーッという音色のホーンでは、まさに威嚇する音であるため、もっと優しい音色であることが望ましい。

日産 リーフ エクステリア

GPS機能付き携帯電話や杖で歩行者を発見する!

トヨタ プリウス プラグインハイブリッド コンセプト

 かつて、米国ゼネラルモータースは、試作電気自動車で、既存のビーッというホーンとは別に、歩行者に電気自動車の接近を知らせるための「パフパフゥ」という音色のホーンを設け、そのホーンを使う際には、ハザードランプがチカチカッと点滅する手法を用いた。これなら、鳴らされた歩行者も怒る気になりにくい。日本では、車線変更でゆずってくれた後続車に対し、ハザードランプの点灯で「ありがとう!」の挨拶代わりにすることがある。その発想に似ている。
 さらには、日産が、先進技術としてNTTドコモと共同で、GPS付携帯電話を所持する歩行者が、路地などに隠れて姿が見えないのを、通信機能で発見し、カーナビゲーションで注意を喚起する研究を何年も続けている。これを、目の不自由な人が外出時に必携の杖に仕込み、それによってドライバーが目の不自由な人たちの安全を確保するということを、ハイブリッドカーや電気自動車では標準装備すればいい。
 では、そのGPS付杖をどのように目の不自由な人全員に行き渡るようにするのか? それは、自動車メーカーと、オーナーが折半で、ハイブリッドカーや電気自動車の正しい普及へ向けた財団などを設立し、無償で提供すれば済む。環境に関心の高い企業や消費者であれば、安全についてもそれくらいの善意の心と、資金提供の志は持っているのではないか。そのように、先進技術の応用と、人々の温かい心の両方の取り組みから、ハイブリッドカーや電気自動車の静かさという特徴を活かした正常な普及を目指すのが、次世代のクルマ社会の優れた発展になるのではないか。
 これは、私の趣旨である。そもそも、エンジン車も近年は低速走行時に静かになっており、エンジン車の接近に気付かずビックリしたという声も出ている。何も、ハイブリッドカーや電気自動車だけの話ではなくなっているのが現状だ。

ホンダ インサイト エクステリア

( レポート:御堀 直嗣[みほりなおつぐ:モータージャーナリスト] )

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