各メーカーの最新技術が惜しみなく投入されているフラッグシップセダン。今や高級感だけでなく、燃費も重要な要素だ。
今回は、フルモデルチェンジされたばかりのBMW7シリーズとレクサスの頂点に君臨するLSを対決させた。ROUND1は、両車の歴史や走行性能だけでなく、装備や価格といった細かな点についても触れている。

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この記事の目次 CONTENTS
1.走行性能が自慢のLS、上質で高級感溢れる7シリーズ
2.BMW 7シリーズのファーストインプレッション
3.BMW 7シリーズの性能
4.BMW 750Liのエンジン&インテリア
5.レクサス LSのファーストインプレッション
6.レクサス LSの性能
7.レクサス LS600hLのエクステリア&インテリア
8.燃費は圧倒的に差が出たが、足回りのバランスは同等

ライター紹介

自動車ライター&エディター

近藤 暁史 氏

某自動車雑誌の編集者から独立。その前はファッションエディター(笑)。とにかくなんでも小さいものが好きで、元鉄チャンで、今ではナローゲージを大人買い中。メインのクルマは19歳の時に買ったFIAT500。エンジンのOHからすべて自分でやり、今やもうやるところがない状態でかわいがっております。表向きは自動車ライターながら、業界唯一の省燃費グッズの評論家というのがもうひとつの顔。

1.走行性能が自慢のLS、上質で高級感溢れる7シリーズ

自動車の進化の歴史はサルーンにあり、というのは昔から言われること。
もともと、貴族の乗り物として誕生したことに端を発するのだが、現代においてもフラッグシップサルーンについては各メーカーとも持てる技術を存分に投入している。

今回は、レクサスの中でも頂点に君臨するLS600hLと、新型へと進化したドイツ代表のBMW 7シリーズを対決させることに。取材車両はどちらもロング仕様で、リムジンテイストもプラスされている。

世界のプレミアムブランド、満を持しての対決!

レクサス LS600hLはその車名からも分かるように、トヨタ自慢のハイブリッドを採用することで、エコ性能だけでなく、走りの質向上にも貢献。
一方のBMWも、ドイツ流の質実剛健さをもって高級感を演出しているだけに、質という点では特筆すべき伝統をもっている。

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2.BMW 7シリーズのファーストインプレッション

BMWの伝統的フラッグシップである7シリーズ。登場したばかりの現行型は5世代目となる。旧型よりもさらにゆとりのある走りと、低燃費を両立させている点に注目だ。

デザインは先進性を全身で表現した先代に比べて、マイルドにはなっているが、7シリーズらしさはそのままだ。ひと目で7シリーズと分かる存在感を持っている。

初技術も投入して走りにこだわるBMW

コンセプト自体も基本的に先代踏襲というのは当然のことながら、その中身は、基本となるシャーシからして新型を採用するなど、大きく進化している。

中でもトピックスとなるのが、BMW初となる「インテグイテッド・アクティブ・ステアリング(前後輪統合制御ステアリング)」の採用だ。これは日本車では逆に見かけなくなってしまった、いわゆる4WSであり、60km/h以下では前後輪を逆位相。
つまり、後輪は前輪と逆方向になり、80km/h以上の高速域では同位相(前輪と同方向)に制御する。これにより、高速走行時の安定性に加えて、狭い道での取り回しも確保。大型ボディのハンデを軽減している。

ダイナミック・ドライビング・コントロールも搭載

さらに走りにこだわるBMWらしく、ダンパーやアクセル、ステアリング特性までを統合制御する「ダイナミック・ドライビング・コントロール」も搭載。より一層、走りの質に磨きをかけている。

ツインターボを装備で極上の乗り味を演出

エンジンは3リッターと4.4リッターで、どちらもツインターボを装備。
もちろん、その味付けは過激ではなく低回転から高回転までキッチリとターボがアシストするようにされている。そのため、サルーンらしい極上の乗り味を演出している。

3.BMW 7シリーズの性能

BMW 7シリーズの性能について詳しく解説。

エコ&燃費:直噴化ツインターボで省燃費性を確保

本国では、ヨーロッパ車初となるパラレル式のハイブリッドも用意されているが、日本へは未導入だ。すべてツインターボながら、直噴化により、排気量を落とし省燃費性を確保。同時に、パワフルさも両立している。

安全性能:積極的な電子デバイスの採用に注目

いわゆる4WSを採用することで、高い走行安定性を確保した。
車線を逸脱すると警告するレーン・ディパーチャー・ウォーニングやナイトビジョンも採用。さらに、サイドビューカメラといった、本来日本車が得意としてきたような電子デバイスも積極的に搭載している点に注目だ。

取材時実測燃費

4.9km/L

BMW 7シリーズ価格帯

1010.0〜1330.0万円

BMW 750Liのスペック情報

BMW 750Liのスペック情報は以下の通り。

ボディサイズ(全長x全幅x全高) 5210×1900×1485mm
車両重量 2190kg
エンジンタイプ V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量 4394cc
最高出力 407ps(300kw)/5500rpm
最大トルク 61.2kg-m(600N・m)/1750〜4500rpm
ミッション 6速AT
10・15モード燃費 6.6km/
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/インテグラル・アーム
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格 1330.0万円

4.BMW 750Liのエンジン&インテリア

BMW 750Liのエンジン&インテリアについて詳しく解説。

快適性の高さは申し分ないが燃費は厳しい

750(写真)は4.4リッターV8、740には3リッター直6を搭載。燃費はガソリン仕様のLS460と比べても厳しいものがある。

18インチのランフラットタイヤ&アルミホイールが標準装備。リヤのみエアサスとなっており、快適性の高さも申し分はない。

ゆとりのあるスペースでくつろげる室内

ゆったりとした高級感を重視すると同時に、どこかタイトでスポーティな印象があるのは、いかにもBMWらしい部分といえる。

ミッションは6速ATとなっている。しかし、LS460は8速AT、メルセデス・ベンツ Sクラスは7速ATを採用することを考えると、やや物足りない印象も。

フロントシートはサイドのサポート性も高く、スポーティな走りでもしっかり体を支えてくれる。
スペースもゆとりがあり、不満はない。

750Liは、4人乗り仕様の「リヤ・コンフォート・シート」が標準装備。足元スペースには驚くほどの余裕があり、ゆったりくつろげる。

快適装備で楽しいドライブを実現

メーターはBMWらしいシンプルなデザイン。メーター下部は液晶パネルになっており、外気温などのさまざまな情報が表示される。

全席の背もたれ部分には左右それぞれに9.2インチのモニターを内蔵。ナビやDVDなどが表示可能で、快適なドライブが楽しめる。

後席にもiDriveのスイッチがあり、オーディオや後席エアコンなどの操作が可能。リクライニングなども電動で行なえる。

トランクスペースは文句のない広さが確保されている。開口部も広めなので、大きな荷物の積み込みも楽にできる。

5.レクサス LSのファーストインプレッション

レクサスのフラッグシップたるLSシリーズが発売したその半年後、追加登場したのがLS600h/600hLだ。
もちろん、hはハイブリッドの証であり、プリウスで熟成を重ねてきたトヨタのハイブリッド技術の新たなる境地を切り開いている。

レクサスの頂点らしい上質さと驚異的な低燃費を両立

具体的には、それまで横置きエンジンを前提としてたものを、縦置き(駆動自体はAWD)に対応させている点。
これは、遊星ギアを採用した電気式無段変速機で、ハイパワーをキッチリと路面に伝える働きをしている。それだけでなく、フラッグシップサルーンにふさわしい、シームレスで滑らかな走りを大いにアシストしている。

6リッターV12に匹敵するLS600の5リッターエンジン

肝心のシステムとしての出力は445馬力ものハイパワーを実現。エンジン単体では5リッターであり、394馬力なのだが、トータルでは6リッターV12に匹敵するパワーの持ち主であることから、車名には600と付けられた。
もちろん、エンジン本体にもサルーンの品格を確保するべく、トヨタの技術が存分に投入されている。例えば、クランクシャフトには鏡面仕上げが施されるなど、ウルトラスムーズなフィーリングを実現する。

足回りはLSをベースに様々なシステムを採用

足まわりの形式は他のLSと同じものを使用。
しかし、設計自体はAWD専用とし、走行モードに応じた減衰力制御を行なうAVS機能付き電子制御式エアサスペンションと組み合わされている。さらに、アクティブスタビライザーサスペンションシステムを採用するという念の入れようだ。

装備面でもロングホイールベースの600hLでは、リアシートを中心に豪華装備を大量に採用。なんと冷蔵庫まであるほどで、これぞ本当のおもてなしである。

6.レクサス LSの性能

レクサス LSの性能について詳しく解説。

エコ&燃費:重量級サルーンでも文句なしの燃費

ハイブリッドとはいえ重量級サルーンだけに、燃費は気になるところだが、3リッター並みの数値を達成。なんと10・15モードで12.2km/L!
排ガスも「平成17年基準排出ガス75%低減レベル」と、文句なし。もちろん、エコカー減税(取得税と重量税が100%減免)の対象となる。

安全性能:エアバッグは最大で11個も標準装備

奇をてらうことなく、高剛性ボディ/高強度キャビン/歩行者傷害軽減ボディなど、基本部分からきっちりと安全性について配慮している。
また、エアバッグは、リヤシートサイドなど考え得る部位すべて。最大で11個も標準装備するのは、高級車ならではといったところ。

取材時実測燃費

9.2km/L

レクサス LS価格帯

773.0〜1510.0万円

レクサス LS600hLのスペック情報

レクサス LS600hLのスペック情報は以下の通り。

ボディサイズ(全長x全幅x全高) 5150×1875×1475mm
車両重量 2320kg
エンジンタイプ V型8気筒DOHC
総排気量 4968cc
最高出力(エンジン) 394ps(290kw)/6400rpm
最大トルク(エンジン) 53.0kg-m(520N・m)/4000rpm
最高出力(モーター) 224ps(165kw)
最大トルク(モーター) 30.6kg-m(300N・m)
ミッション 電気式無段変速機
10・15モード燃費 12.2km/l
サスペンション(前/後) マルチリンク/マルチリンク
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格 1350.0万円

7.レクサス LS600hLのエクステリア&インテリア

レクサス LS600hLのエクステリア&インテリアについて詳しく解説。

驚くほどの低燃費を実現するLS600hL

600hLは5リッターV8エンジンとモーターの組み合わせで、驚くほどの低燃費を実現。4.6リッターを積むLS460も燃費は悪くない。

レクサス LSは18インチのタイヤとアルミホイールが標準装備。標準ボディのみに用意されるバージョンSは19インチ仕様となる。

厳選された豪華で快適な装備されるインテリア

インテリアの質感の高さは申し分なく、ゆったりと豪華な雰囲気が味わえる。各部の本革や本木目も厳選されたものを使用している。

ハイブリッドのLS600は電気式無段変速機、ガソリン仕様のLS460は8速ATを採用。どちらも滑らかな走りと低燃費を両立する。

本革シートには夏は冷風、冬は温風が吹き出す「コンフォータブルエアシート」が装備され、1年中快適なドライブが楽しめる。

写真は5人乗り仕様だが、LS600hLとLS460L(FR)には、4人乗り仕様の「後席セパレートシートパッケージ」も用意される。

BMWに引け劣らない快適装備

メーター中央には外気温や燃費、ハイブリッドシステムの作動状態を表示するインフォメーションディスプレイを装備している。

レクサス LSもリヤエンターテイメントシステム(9インチモニター)を装備する。設置場所は天井部分で、左右共用となっている。

エアコンやオーディオの操作はアームレストのスイッチで行なえる。オーディオの操作に関してはワイヤレスリモコンでも可能だ。

ハイブリッド仕様では走行用のバッテリーが搭載される関係で、トランクスペースが狭くなってしまうのが残念なポイントといえる。

8.燃費は圧倒的に差が出たが、足回りのバランスは同等

BMW 7シリーズは、先代よりも排気量を落とし、ツインターボ化することで省燃費とパワフルな走りを両立させようとしている。
しかし、レクサス LSとの比較では、車重がほぼ同じガソリン仕様のLS460と740iを比べてもカタログ燃費で負けている。
今回対決した、750LiとLS600hLでは、ハイブリッドというハンデもあるので、その差はさらに大きくなってしまっている。

快適性に優れた走行性能を誇る両車

足まわりのセッティングに関しては一日の長があり、優れたハンドリングと快適性のバランスは素晴らしい。

対するレクサス LSも全車エアサスを標準化し優れた快適性を確保。コーナー走行でも、想像以上に安定感のある走りを実現している。

(PHOTO/佐藤靖彦)