ザ・対決 ホンダ インサイト VS トヨタ プリウス
ハイブリッド編
ホンダ インサイト vs トヨタ プリウス

 ハイブリッドといえば、文句なしに日本は先進国である。そのなかでもしのぎを削っているのが、トヨタとホンダ。それぞれプリウスとインサイトをリリースし、燃費だけでなく、その背景にある技術、さらには価格についても競ってきた。それぞれ培ったノウハウを他モデルにも投入して勢力を拡大してきたのだが、いよいよホンダが新型インサイトをリリース。プリウスも3代目へのフルモデルチェンジを目前ということで、興味ある対決となった。
 そもそもシステム的にはまったく違うだけに、ただ燃費の優劣を決するというだけでなく、システムに対する評価というのも重要になってくる。まさにインサイトとプリウスの対決というだけでなく、ホンダとトヨタという2大ハイブリッドメーカーの対決といえる。価格についてはまずインサイトが勝ちといっていいが、それ以外はどうなる?

佐藤まいみ
PHOTO/佐藤靖彦 構成・文/近藤暁史
モデル/ 佐藤まいみ

ROUND1:ファーストインプレッション

ホンダ インサイト
ホンダ インサイト リヤ
販売面絶好調、
低価格ハイブリッドの実力とは?

 ホンダ グリーンカープロジェクトとして、発表以前から力が入っていたインサイト。とはいえ、プロトタイプについてはショーに出品されたり、写真は公表されていたので、やっと出たという感じがする。そもそも、プロトタイプの時点で話題になったのが、真っ向ライバルたるプリウスに似ているということ。初代インサイトといえば、省燃費に特化したスタイルだっただけに大転換した。ホンダによれば「空力を追求してこうなった」ということだ。ただし、現車を見ると5ナンバーボディなのでかなり小さく見え、プリウスに似ている感じはあまりしない。
 スタイルに加えて掲げられたのが、ハイブリッドを安く提供するということ。実際、189万円からですべて200万円前後というプライスが付けられ、プリウスに対して大きなアドバンテージを得た。ただし189万円といってもオーディオやアルミホイール、そしてVSA(横滑り防止装置)などはオプションだ。そういった装備をオプションで追加していくと、思ったより高くなってしまう場合も多い。
 肝心のシステムはホンダが長年に亘って培ってきたIMAを採用。これはエンジンとミッションの間にモーターを挟み込む形で、シンプルかつ低コストなのが特徴。そのためモーターの出力は低めで、あくまでもエンジンをアシストするのみ。アイドリングストップするとはいえ、例えるならモーターはターボのような効果を持つ。つまりトヨタとは根本からシステムというか考え方が違うのだ。
 エンジンは1.3リッターのi-VTECで、アシストを得た結果、1.5リッター並みの走行性能を実現。肝心の燃費は30.0km/Lと現行型プリウスの35.5km/Lに劣ってしまっている。プリウスが新型になったときの動向に注目だ。

[エコ&燃費]
 オデッセイで初採用されたECONスイッチをオンにすると、エンジン制御やアイドリングストップ領域、回生量などを拡大する。そのうえ、メーター内にはエコ状態がわかるアンビエントメーターやエコドライブ評価機能を装備し、視覚面からもアシストする。

[安全性能]
 歩行者保護にも配慮したボディ作りはさすがホンダ。シートベルトは全席3点式で、ヘッドレストも同様。いくら低価格こだわっているとはいえ、抜かりないのはさすがだ。サイドのエアバッグは一部グレードに標準となる。

[取材時実測燃費]
17.6km/L

[ホンダ インサイト価格帯]
189.0〜221.0万円

トヨタ プリウス
トヨタ プリウス リヤ
ハイブリッドのトヨタならではの
高性能を実現した最先端モデル

 世界に衝撃を与えた初代の登場。1997年のことだから、すでに10年以上が経過していることになる。その間、プリウスも2代目へと進化しつつ、トヨタはシステム自体を飛躍的に熟成させて、多くのモデルにハイブリッドを設定するに至っている。
 システム的にはインサイトが採用するホンダ独自のIMAとはまったく異なり、いわばハイブリッドと聞いて思い浮かべる、エンジンとモーターを並列に置くのが特徴。お互いを協調制御するという形をとっている。これは初代より変わらないのだが、エンジンは1.5リッターのまま、2代目プリウスでは可変電圧システムの採用、モーターの高出力化などを実施することで、ハイブリッドとしての性能はかなり向上している。
 実際の走行面ではアイドリングストップだけでなく、スイッチひとつでモーターのみで走行することもできるEVドライブモードを世界初で装備。モーターとエンジンの切り替えが、ほぼわからないほどで、ギクシャク感などはなく、完成度はかなり高いといっていいだろう。また始動時に必ずしもエンジンがかかるとは限らず、スイッチを入れるだけだったり、スティック状のシフトなど、"未来の乗り物感"を演出しているところもうまい点だ。
 パッケージングは、初代よりもひとまわりほど拡大されたボディをベースにハッチバッグスタイルを採用していることからも、各シートやラゲッジのスペースは余裕たっぷり。
 装備面でも全車アルミホイールやオーディオは標準装備。また走行用バッテリーの充電状態などを表示するエネルギーモニターも付いているので、メーカーオプションナビも割安でつけられる。このようにオプション類は少なく、ベーシックグレードでも比較的装備が充実している。また実用面でも実力レベルは高いところにあるのもプリウス人気を支えている理由のひとつだ。

[エコ&燃費]
 35.5km/Lという燃費は驚くべき数値で、実燃費もよく、環境性能についてはさすがに文句ないレベル。最近のトヨタ車の例に倣って、プリウスも開発段階から廃棄まで、すべてのステージにおいてエコに配慮している。

[安全性能]
 グレードは基本的にふたつで、SとG。この違いはズバリ、横滑りを防止するS-VSCが付くか否か。しかもS-VSCということは、ステアリング制御も入るので、より姿勢を安定させることができる。また実用面ではインテリジェントパーキングアシストにも注目だ。

[取材時実測燃費]
24.0km/L

[トヨタ プリウス価格帯]
233.1〜334.95万円

ホンダ インサイト G
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4390×1695×1425mm
車両重量
1190kg
エンジンタイプ
直列4気筒SOHC
総排気量
1339cc
最高出力
88ps(65kw)/5800rpm
最大トルク
12.3kg-m(121N・m)/4500rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
30.0km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/車軸式
ブレーキ(前/後)
ディスク/ドラム
税込価格
189.0万円
トヨタ プリウス S
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4445×1725×1490mm
車両重量
1260kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
1496cc
最高出力
76ps(56kw)/5000rpm
最大トルク
11.2kg-m(110N・m)/4000rpm
ミッション
電気式無段変速
10・15モード燃費
35.5km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格
238.35万円
ホンダ インサイト 1.3リッターエンジン

ホンダ インサイトは通常は1.3リッターエンジンで走行、発進や加速時などにモーターがアシストするというシンプルなシステムを採用する。

ホンダ インサイト 16インチホイール

最上級グレードのLS(写真)は16インチ仕様となり、カタログ燃費も28km/Lとなる。燃費を重視するなら15インチ仕様がおすすめだ。

トヨタ プリウス 1.5リッターエンジン

トヨタ プリウスのハイブリッドシステムは、エンジンとモーターの協調制御を行ない、EV走行モードも備えるという違いがある。

トヨタ プリウス 15インチホイール

通常モデル(写真)は15インチ仕様で、ツーリングセレクションが16インチとなる。こちらも16インチ仕様は燃費が悪化する。

ホンダ インサイト インパネ

低価格を実現するため、シンプルなデザインのインパネを採用している。だがチープさはなく、それなりの質感は備えている。

ホンダ インサイト シフトレバー

ミッションは通常のCVTを採用している。モーターはあくまでもエンジンの補助的な役割で、ターボのような効果をはたしている。

トヨタ プリウス インパネ

どことなく未来的な印象のインテリア。楕円のステアリングはユニバーサルデザインの思想を取り入れたもので、乗り降りもしやすい。

トヨタ プリウス シフトレバー

プリウスのミッションは電気式の無段変速タイプ。シフトレバーというよりはスイッチのようで、パーキングはボタン式となっている。

ホンダ インサイト フロントシート

小物の収納スペースも豊富に用意され、使い勝手はとてもいい。シートの出来は良く、横方向のサポートもしっかりしている。

ホンダ インサイト リヤシート

リヤシートのスペースは十分確保されているが、頭上の空間は空力を追求したボディ形状のため、あまり大きなゆとりはない。

トヨタ プリウス フロントシート

大きなセンターコンソールはアームレストも兼ねているので、快適なドライブが楽しめる。左右のウォークスルーが容易なのも魅力だ。

トヨタ プリウス セカンドシート

インサイトと同じ理由で、頭上の空間はあまり感じられない。中央席にも3点式シートベルトとヘッドレストがあり、安全面も互角だ。

ホンダ インサイト メーター

2段式の特徴的なメーターはアシストや回生状態を表示するのはもちろん、エコ走行時には文字盤がグリーンになりエコ走行を促す。

ホンダ インサイト ラゲッジ

ラゲッジスペースは十分な広さが確保されている。ハッチバック形状のため開口部も大きく、かさばる荷物も楽に積み込める。

トヨタ プリウス エネルギーモニター

ナビ画面には平均燃費や走行状態、そしてバッテリーの充電量などを表示可能。デジタル式のセンターメーターは視認性も良好だ。

トヨタ プリウス ラゲッジ

こちらもラゲッジの使い勝手はよく、広さなどはインサイトと同レベル。トノカバーは標準で装備されているのも注目したいポイントだ。

ホンダ インサイト ラゲッジ

リヤシートは左右分割可倒式なので、乗車人数や荷物の量などにあわせて、フレキシブルに対応することができる。

ホンダ インサイト ラゲッジ

リヤシートをすべて倒せば、かなり広いスペースが現われる。フロアは2段式になっており、使いやすい配慮がなされている。

トヨタ プリウス ラゲッジ

プリウスもインサイトと同じく、リヤシートは左右分割して倒すことができる。長さのあるものも積み込めるのでとても便利だ。

トヨタ プリウス ラゲッジ

開口部の高さは低めに設定されており、大きなものや重い荷物の積み下ろしなどでも、あまり苦労することはない。

ホンダ インサイト vs トヨタ プリウス

ホンダ インサイトは基本的にはエンジンで走行し、発進時や加速時などにモーターでアシストするタイプのハイブリッドカーだ。もちろん停車時はアイドリングストップするが、エアコン使用時などは比較的早めに再始動してしまうこともある。走りに関してはモーターのパワーもプラスされるので、とても1.3リッターとは思えない力強い走りが味わえる。対する元祖ハイブリッドカーのトヨタ プリウスは、エンジンとモーターの協調制御を行ない、走行状態にあわせてモーターのみ/エンジンのみ/エンジン+モーターの組み合わせを最適に制御してくれる。エンジンとモーターの切り替え時などの違和感もなく、普通のクルマのような感覚で扱える。