【トヨタ「iQ」試乗記】 エクステリア フロントビュー 走り 画像

このサイズで4人乗り!トヨタのiQ(頭脳)ってすごいでしょ?

 トヨタiQという名に、まずはドキッとした。自分の頭脳にコンプレックスのあるボクとしては、iQという名前のクルマをちょっと横目で見ながら、なんだかモヤモヤした思いがあった。「そうだよなぁ、世界のトヨタだからみんな賢いんだろうな・・・」。すでにファーストインプレッションで、負けを宣告されたようなものだ。
 そんなiQコンプレックスを多分に含みながらも、トヨタiQに対してドキドキしている自分がいる。まずは、なんていってもスタイル。丸くコロッとしたスタイリングは、実物大のチョロQのよう。全長はなんと3mを切って2985mm、全長1500mm、全幅は1680mmというプロポーションをもつ。それでいて、4人乗りだというのだから驚いてしまう。名前の話に戻るが、このサイズで4人乗りのクルマをつくったトヨタのiQ(頭脳)ってすごいでしょ? と、問われているようだ。

【トヨタ「iQ」試乗記】  エクステリア フロントビュー  画像
【トヨタ「iQ」試乗記】  エクステリア サイドビュー  画像
【トヨタ「iQ」試乗記】 エクステリア リヤビュー  画像

mm単位の設計!こだわり深いパッケージング

 走っている姿が、またスゴイ。クルマを真横から見ると、ドライバーはクルマの中央より後ろに座っている。その後ろはというと、すぐにリヤのハッチゲート。それなのに、後席に人が乗れるのだ。どこに乗っているの? と、思わず後席の人を探したくなるほど不思議なシルエットをもつ。
 4人乗りといっても、基本は大人3人と子供1人といったイメージ。実際には前席に大人2人が座ると、後席の大人は若干オフセットして座ってなんとかなる程度。広くはない。ただ、基本は2人乗り。後席はカーゴルームと考えるのなら十分なスペース。スマートなどが含まれるAセグメントと呼ばれるクラスの中でトップレベルだ。
 このパッケージングを実現するために、エアコンを小型化したりインパネを左右非対称にしたり、エンジンルームをコンパクトにするなど、今までのトヨタには無かった新たな手法でmm単位の設計が行われている。利幅の少ないコンパクトカーなのに、かなり多大なコストを投下して設計が行われているのだ。コスト意識の高いトヨタにおいて、かなり異例。チーフエンジニアの中嶋さんは「今のままではダメ。この新しいチャレンジは、後々のトヨタ車にとって必ず役に立つ。そういい続けて会社には納得してもらいました」と語る。そのこだわりは深く、1mmたりとも基本設計に妥協すること無く、開発を続けたという。言葉は悪いが、このパッケージングの妙技は設計オタクと思われるほどのこだわりが生んだ結果だ。

【トヨタ「iQ」試乗記】 インテリア インストルメントパネル  画像
【トヨタ「iQ」試乗記】  インテリア フロントシート  画像
【トヨタ「iQ」試乗記】 インテリア リヤシート  画像

物足りない!?安心安定方向のセッティング

 さあ、全長3mを切るその走りはどうか? 良くも悪くも意外とフツーであった。1リッターエンジンとCVTの組み合わせは必要十分。1名乗車で120km/hくらいまでなら、それなりに加速する。振動なども気にならない。
 フットワークは、短いホイールベースをもつiQは、スピンしやすい傾向になる。それを抑えるために、リヤサスのスタビリティ(安定性)は高く設定されている。徹底したアンダーステア(曲がらない)傾向。それではダメなので、ステアリングのギア比をクイックにしてスポーティ感をプラスした妙なフィーリングだ。ステアリングの切り出した瞬間は、スイっと反応するもののその先はズルズルとアンダーステアになる。確かにスピンは最悪の状態なので、一般ユーザーには一番安心できるだろう。ところが、ちょっと腕に自信がある人には物足りない。しっかりとフロントタイヤに荷重をかけて曲がろうとすると、かなり早い段階からVSC(横滑り防止装置)が効く。とにかく安心安定方向のセッティングだ。後々に出てくるといわれている1.3リッター車などは、もう少しスポーティなセッティングになればいいなぁ、と思うのだ。
 ちなみに、驚くべきことに最小回転半径は3.9m。軽自動車が4m前半だから、なんと軽自動車より小回りがきく。

【トヨタ「iQ」試乗記】 エンジン 画像
【トヨタ「iQ」試乗記】  エクステリア 走り 画像
【トヨタ「iQ」試乗記】  エクステリア 走り 画像

日本での「iQ」大ヒットを阻む"軽自動車"の存在

 そんなよくできたiQなのだが、日本で発売する場合には大きなハードルが待ち構える。日本が誇る軽自動車だ。税制的にも優遇され、維持費は圧倒的にリーズナブル。リッターカーと税金や任意保険まで加えると3年で約30万円近く違う場合がある。それだけでも、軽自動車より小さいiQを積極的に選べない。自動車を持つためには、これでもか! っていうほどの税金が山のようにかかっている。今の貧しい日本では、背に腹はかえられない。それほど、一般ユーザーはクルマを乗り換えることに消極的だ。もはやクルマを維持するのすらいっぱいいっぱいなのだから。
 価格も軽自動車の上級グレード程度がiQの廉価版のスタート金額らしい。小さいクルマは安くないと売れないよ! という本音が聞こえてくる。ネッツ店での発売ということからも、そんな印象だ。でも、それでは軽自動車と真っ向勝負になり負けは目に見えている。日本においては、インスピレーションで買うクルマを目指し、ディテールやクオリティに磨きをかけて、200万円程度の価格で富裕層のセカンドカーになるのもいいと思う。レクサスとiQが大きなガレージに並んでいるようなイメージだ。もしくは、iQに対して特別な思いを抱いた人が買う趣味のクルマだろう。

【トヨタ「iQ」試乗記】 エクステリア フロントビュー 走り 画像
【トヨタ「iQ」試乗記】 エクステリア サイドビュー 走り 画像
【トヨタ「iQ」試乗記】 エクステリア リヤビュー 走り 画像

この国の自動車文化を変えてくれ、iQ!

 トヨタは「iQのような市場創造型の商品で日本市場を元気にしたい」という、まるで参考書のような話をする。しかし、日本市場はもはやイチ商品だけで活性化できるほどの力は残っていない。自力での再生は不可能といってもいいほどの重症だ。世界一の自動車メーカー、トヨタにできることは、いい商品を作るだけではなくて「政治を変えること」も重要だと思う。世界的に見ても、GMとフォードなどは密接に政治と絡み合っている。それこそ、少々無責任かもしれないがトヨタ党でも作って、減税に取り組んで欲しいと願う。クルマを維持することが苦しい、と思う世の中は、我々クルマ好きにとっては地獄でしかない。iQのような個性的なクルマが欲しくても買い替えられない、維持できない。ただでさえ、日本の自動車メーカーは、母なる日本市場で儲からなくなっている。そのためか、日本市場を意識した国内専用車は激減中。このままでは、この国の自動車文化は終わるかもしれない・・・。

written by 大岡 智彦

代表グレード
トヨタ iQ プロトタイプ
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
2985×1680×1500mm
ホイールベース[mm]
2000mm
トレッド[mm]
前:1475mm 後:1460mm
最小回転半径[m]
3.9m
室内長[mm]
156mm
室内幅[mm]
1515mm
室内高[mm]
1145mm
前後席間距離[mm]
641mm
DP席間距離[mm]
710mm
定員[人]
4人
【トヨタ「iQ」試乗記】 エクステリア フロントビュー  画像
達人プロフィール: 大岡 智彦
職業:コリズム編集長
自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。

 

関連記事はこちら

【トヨタ iQ 新車情報】小さいことがイマドキの正義! 超高効率パッケージングの「トヨタ iQ」が自動車の価値観を変える!?

【新車情報】  written by CORISM編集部 (2008.10.15)

トヨタは10月15日、全く新しいジャンルの超小型車「iQ(アイ・キュー)」を発表した。全長わずか3.0メートル以内ながら4人の定員を持つ、他に類を見ない驚異の超高効率パッケージングが特長だ。小ささこそ正義だと主張する新種のプレミアムカーiQ、その詳細を速報でレポートする! >> 記事全文を読む


【トヨタ「iQ」プロトタイプ試乗記】スタイルだけでは軽、エコカーに勝てず! 全長3m2ドア「iQ」は日本市場に向かい風!

【新車情報】  written by 国沢光宏 (2008.09.11)

iQは3m未満のクルマに対する優遇措置の多いヨーロッパ市場を強く意識して企画された。だからこそ3mという全長に意義もある。おそらく「リアシート付きのスマートがあったら欲しい」というユーザー層をガッチリ取り込めることだろう。 >> 記事全文を読む


【速報! トヨタ iQ プロトタイプ 試乗記】短い全長のボディに超高効率パッケージング! 市販化が楽しみな新時代コンパクトの実力とは!?

【新車情報】  written by 松下 宏 (2008.08.29)

iQはトヨタが全く新しいコンセプトで開発した新時代のコンパクトカーだ。そのプロトタイプ車にトヨタの士別テストコースで試乗したのでさっそくレポートしたい。 >> 記事全文を読む


【トヨタ iQ 新車発表会レポート】異例尽くしのパフォーマンス!超個性派「トヨタ iQ」の発表会は驚きの連続だ!

【特集】  written by CORISM編集部 (2008.10.15)

08年10月15日、トヨタから全く新しい発想で創られた超小型車「iQ」が発表された。その気合の入れようは、新型車のお披露目にも現れていた。千葉・幕張メッセにて行われた発表会イベントの模様を速報でお届けする。 >> 記事全文を読む


【トヨタ iQ 新車速報】今年最大の話題作を間近で見た!触った! 全長3mの超高効率パッケージ、今秋デビュー「トヨタ iQ」を速攻チェック!

【新車情報】  written by CORISM編集部 (2008.06.12)

トヨタは、今秋日本デビューを予定するコンパクトカー「iQ」のプロトタイプカーを国内で初めて公開した。トヨタ iQは全長3m未満の超コンパクトなボディに大人3人が乗れる超高効率パッケージングを誇る、今年最大の話題作となる1台だ。個性的なフォルム・インテリアをじっくりご覧あれ! >> 記事全文を読む