ザ・対決 プジョー 207 VS フォルクスワーゲン ポロ
欧州コンパクトハッチ編
プジョー 207 vs フォルクスワーゲン ポロ

 いわゆるBセグメントと呼ばれるクラスは、日本で言うところのコンパクトハッチに相当するもの。取り回しもよく、日本人にとっても扱いやすいサイズで、トヨタのヴィッツや日産のマーチ、マツダではデミオなど、国産でも数多くのモデルがしのぎを削る人気のクラスでもある。そのルーツをたどるとヨーロッパになるし、実際に魅力的なモデルが数多く存在。お国がらも色濃く出ていて、じつに個性派揃いだ。それだけに、各メーカーとも満を持して開発しており、キビキビとした走りに加えて、絶妙なパッケージングも持ち味。大人4人がちゃんと乗れて、さらに荷物も積めるというのは必須だったりする。つまり気を抜けないわけだ。そこで今回は根強い人気を誇るプジョーから2007年に登場した207とフォルクスワーゲンのポロを対決。まさに日本人にジャストサイズながら、ドイツとフランス、持ち味は正反対だけに、その結果が気になるところだ。

PHOTO/高木博史 構成/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

プジョー 207
プジョー 207
プジョーを代表する看板モデル
豊富なバリエーションにも注目

 長らく販売されたプジョー206の後継となるのが待望のプジョー207。デザインは最近のプジョー顔を踏襲しつつ、インテリアもじつにフランス車的なまとめで、エレガントさが漂う。プジョーのメインモデルとなるだけに、グレードは多岐に渡り、標準グレードとなる207に加え、パノラミックガラスルーフとハーフレザーシートを採用することで、開放感と上質さを兼ね備えているのが207シエロだ。こちらは1.6リッターのNAが搭載される。またターボユニットも用意されており、さらに高級感とスポーティさを強調した207GTiに積まれている。ちなみにこのエンジンはBMWとの共同開発による新世代エンジンで、ターボは直噴とし、コンパクトなツインスクロールタービンを採用することで1000回転からの過給と吹け上がりのよさを両立。一方のNAは直噴ではないものの、全域連続可変バルブタイミング&リフトシステムなどによるち密な制御を行なうことで徹底的な高効率化を進めている。その結果、NAは115馬力、ターボは150馬力をそれぞれ発揮するのだが、どちらもそのうま味を存分に味わえる。ただし、NAは4速ATのみで、逆にターボは5速MTのみと、組み合わされるミッションが限定されてしまっているのは残念ではある。さらに電動開閉式メタルルーフを採用してクーペとカブリオレのスタイルを楽しむことができる207CCやワゴンボディの207SWも追加され、豊富なバリエーションを誇っているのも207の特徴であり、またプジョーらしい点でもある。

[エコ&燃費]
 BMWとの共同開発ユニットということで、この点も抜かりはなし。NAに採用されているのはいわゆるバルブトロニックだし、ターボも今や定番となりつつある小型のツインスクロールタービンを採用し、省燃費と排ガスのクリーン化にも効果を発揮。電動パワステも燃費向上にひと役買っている。

[安全性能]
 ユーロNCAPの乗員保護部門で最高の5つ星を獲得。さらにチャイルドプロテクションで4つ星、歩行者保護では3つ星(こちらの最高点は4つ星)をそれぞれ獲得している。トータルではセグメント中、もっとも優秀な成績だ。装備的には挙動を安定させるESPやサイドカーテンも含めた6つのエアバッグなどを装備している。

[取材時実測燃費]
11.3km/L

[207価格帯]
234.0〜346.0万円

フォルクスワーゲン ポロ
フォルクスワーゲン ポロ
新鮮は感じないものの
すべてで質実剛健な味付け

 ポロといえば、ゴルフの下に位置し、ルポがなくなった今、フォルクスワーゲンを下から支えるモデルでもある。2ドア/4ドア、NA/ターボなど、グレードラインナップは幅広く、クロスポロといった個性的なモデルも用意されている。登場からしばらく経っていることから、さすがに新鮮さは感じないものの、内容の濃いマイナーチェンジを行なうことで、着実な進化を遂げている。
 最新ラインナップを見てみると、エンジンはNAが1.4リッターと1.6リッターの2タイプとなり、ターボは1.6リッターでGTIに搭載されている。ミッションはGTIが5速MTであるほかは、6速ATという豪華ぶり。このクラスで6速ATだとパワーがスポイルされるだけでは? とも思ってしまうが、レスポンスよくシフトしてくれてストレスはないし、つながりもじつにいい。もちろん燃費や静粛性の向上にも有利に働いている。ただし、華やかさという点では欠ける部分が多いのも事実。エクステリアはボクシーであっさりしていて、インテリアに目をやってもがっしりとしたイメージでドイツ車然とした佇まい。シートも硬めだ。質実剛健で、使い込めば込むほどしっくりと馴染んでくるといった感じで、まさに実用最優先。実を重視する人にオススメのクルマだろう。価格もユーロ高ながらもマイナーチェンジでもほぼ据え置きとなり、超が付くほどのバーゲンプライスを維持。お買い得感は非常に高い。

[エコ&燃費]
 エンジンは直噴でないものの、マイナーチェンジで全グレード、ATが6速化されたこともあって、1.4リッター/1.6リッター問わず、燃費はいい。5速MTとなるが、1.6リッターターボのGTIでも13.2km/Lという数値を誇る。

[安全性能]
 高いボディ剛性というだけでなく、前後さらに側面衝突についてしっかりと対応する「衝撃吸収構造」を採用。エアバッグとカーテンエアバッグを含めて6つを標準装備。さらにブレーキや出力をトータルで制御することで、横滑りを回避するESPも標準で装備されている。

[取材時実測燃費]
11.8km/L

[ポロ価格帯]
169.0〜255.0万円

プジョー 207 GTi
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4030×1750×1470mm
車両重量
1260kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC ターボ
総排気量
1598cc
最高出力
175ps(128kw)/6000rpm
最大トルク
24.5kg-m(240N・m)/4500rpm
ミッション
5速MT
10・15モード燃費
-km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
320.0万円
フォルクスワーゲン ポロ GTi 4ドア
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
3915×1665×1465mm
車両重量
1210kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC ターボ
総排気量
1780cc
最高出力
150ps(110kW)/5800rpm
最大トルク
22.4kg-m(220N・m)/1950〜4500rpm
ミッション
5速MT
10・15モード燃費
13.2km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
255.0万円
プジョー 207 1.6リッターターボエンジン

BMWと共同開発した1.6リッターターボエンジンを搭載。滑らかな回転フィールを持つので気持ちよくクルマを走らせることが出来る。

プジョー 207 17インチホイール

GTIは精悍なイメージの17インチタイヤ&ホイールを装着する。スポーティな走りを重視したこともあり、やや硬めの乗り味を持っている。

フォルクスワーゲン 1.8リッターターボエンジン

1.8リッターのターボエンジンは、あまりターボらしさを感じさせないフラットなパワー特性だ。回転のバランスの良さも注目のポイントだ。

フォルクスワーゲン ポロ 16インチホイール

5本スポークのスポーティなデザインのホイールがとても印象的だ。GTIらしいシャープなハンドリングだが、乗り心地もまずまずだ。

プジョー 207 インパネ

ボディサイズが拡大され特に横方向に大きなゆとりができた。デザインはプジョーらしくシンプルで、おしゃれな雰囲気を感じさせる。

プジョー 207 シフトレバー

GTiは5速MT、その他のグレードは4速ATのみの設定。MTはシフトフィールもよく気持ちよく走れるが、ATの出来はいまひとつだ。

フォルクスワーゲン ポロ インパネ

インパネのデザインはフォルクスワーゲンらしい質実剛健な雰囲気。GTIはチェック柄のシートとなり、スポーティな印象を与えてくれる。

フォルクスワーゲン ポロ シフトレバー

GTIの5速MTはキビキビしたシフトフィールが特徴。その他のグレードは6速DSGとなり、MTのようなダイレクト感のある走りが味わえる。

プジョー 207 フロントシート

バケットタイプのシートは見た目にもスポーティな雰囲気十分。サイドのサポート性も高く、GTiらしい走りで体をしっかりと支えてくれる。

プジョー 207 リヤシート

GTiではリヤシートもバケットタイプの形状となるのが最大の特徴だ。そのため4人乗りとなるが、体をしっかりと包み込んでくれる。

フォルクスワーゲン ポロ フロントシート

サイドの張り出しが大きく、ワインディングなどでスポーティな走りをしてもしっかりと体を支えてくれる。長距離移動での疲労感も少ない。

フォルクスワーゲン ポロ リヤシート

207とは異なりポロはGTIでもシンプルな形状のリヤシートを採用する。ボディサイズを考えればスペース的にも大きな不満は感じられない。

プジョー 207 ラゲッジ

開口部の広さも大きめで、形状や使い勝手の良さは満足できる。スペース自体も不満は感じられず、横方向のゆとりも広くとられている。

プジョー 207 ラゲッジ

リヤシートはダブルフォールディングが可能だが、国産車のようにすっきりと収納できない。段差も大きく斜めになってしまうのは要改善ポイントだ。

フォルクスワーゲン ポロ ラゲッジ

タイヤハウスの張り出しもあまり気にならず、容量も十分確保されている。形状もいいのでコンパクトハッチらしい使い勝手の良さがある。

フォルクスワーゲン ポロ ラゲッジ

ポロも207と同様にリヤシートを収納すると段差ができてしまい、フロアも完全にフラットにならない。だがスペースの広さは十分確保されている。

プジョー 207 vs フォルクスワーゲン ポロ

プジョー 207 GTiは低速域のトルクがやや不足気味でスタートダッシュでは一瞬もたつく印象。だがエンジンを回したときのパワーフィールは印象的で気持ちがいい。プジョーといえば猫足といわれる乗り心地が特徴だが、やや硬めの乗り味。一方のフォルクスワーゲン ポロ GTIは全域でフラットなパワー特性で街中から高速道路まで扱いやすいエンジンだ。やはり乗り心地は硬めだが、スポーティなハンドリングが楽しめる。