ザ・対決 トヨタ ヴェルファイア VS 日産 エルグランド
フルサイズミニバン編
トヨタ ヴェルファイア vs 日産 エルグランド

 トヨタのアルファード/ヴェルファイアが新型になり、さらに激戦の様相を呈してきたのが、フルサイズミニバン。価格も含めて今やサルーンよりも高級なほどで、トヨタ、日産、ホンダが満を持してリリースし、三つ巴の状態となっている。もちろん、今やその台風の目となっているのはトヨタのアルファード/ヴェルファイアなのだが、今回は元祖押し出し強い系、日産のエルグランドと、これまた強烈なインパクトを放つヴェルファイアを対決させることにしてみよう。エルグランドも新型のウワサがチラホラ出てきているものの、マイナーチェンジで世界初となるアラウンドビューモニターを装備するなど未だに色あせてはいない。元祖フルサイズミニバンとして高い人気を誇る。先頃のマイナーチェンジでさらに押し出しが強くなっているなど、走りやパッケージングも含めてその結果が気になる!

PHOTO/佐藤靖彦 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

トヨタ アルファード
トヨタ アルファード リヤ
アルファードと一線を画す
押しの強いフロントマスク

 トヨタのアルファードが2代目へとスイッチ。その際に加わったのが、ヴェルファイアだ。トヨタが得意とする販売店対策の兄弟車と言ってしまえばそれまでだが、ただのバッヂ違いではなく、フロントマスクのデザインを中心にイメージをガラリと変えている。つまりノア/ヴォクシーのような2トップ体制というわけだ。ちなみにアルファードはトヨペット店。ヴェルファイアはネッツ店での販売となる。
 価格はさておき、とにかく高級感アップに力を入れているのが特徴で、オットマン付きのリラックスキャプテンシートなど、その充実ぶりたるや書ききれないほど。さらにオプションの「エグゼクティブキャプテンシート」を選べば、電動リクライニング&オットマンとなるだけでなく、大型ヘッドレストやフットレストなどでさらにゆったり。文句なしのファーストクラスぶりだ。その点からすると、やはり8人乗りよりも7人乗りがオススメではある。またオーディオとナビは全グレードでレス仕様、好みで選ぶのもフラッグシップらしい点だ。
 エンジンは2.4リッター直4と3.5リッターV6の2本立てで、3.5リッターはエスティマ譲りの280馬力。組み合わされるのはそれぞれCVTと6ATなのだが、ただエスティマからの流用とするのではなく、さらに静粛性に磨きをかけ、燃費も20%アップとは驚く。また足まわりも重心の高さゆえにセッティングが重要となるところだが、ロールを押さえて操縦安定性を大幅に向上させるなど、まさにフルサイズミニバンに君臨するという言葉がピッタリ。極上の乗り味を演出している。

[エコ&燃費]
 2.4リッターでは20%も燃費性能をアップ。さらに 3.5リッターも3リッターに対して、排気量をアップしながらも7%燃費性能を向上させているのはさすがのひと言。たとえば2.4リッターでは11.6km/Lという数字を誇る。さらに窒素酸化物などの排出も抑え、全グレードがグリーン税制対象車となっている。

[安全性能]
 ボディは全方位で衝突安全性を高いレベルで確保するだけでなく、歩行者保護にも配慮。2トン近い重量級だけに、全グレードの全輪を16インチディスクブレーキとし、ブレーキ性能もさらなる煮詰め直しを実施。エンジンパワーだけでなく、ブレーキ、電動パワステとの一体制御を行なうS-VSCも全車に標準装備としている。さらに7つものエアバッグや全席3点式シートベルトの標準採用など、安全性に関しても最先端を行っているといっていいだろう。

[取材時実測燃費]
8.9km/L

[ヴェルファイア価格帯]
300.0〜468.0万円

日産 エルグランド
日産 エルグランド リヤ
元祖フルサイズミニバン
ファーストクラスの提唱車

 2002年の登場と、正直なところかなり時間が経った感は強いものの、いまだに古くささは感じられず、根強いファンも多い日産のエルグランド。強烈な押し出しや存在感の強さは確かに新鮮さすら感じられるほどだ。日本のミニバン界において、フルサイズミニバンというカテゴリーを作り上げた立て役者であり、ファーストクラスという表現をいち早く使用したクルマでもある。
 それだけに内装は、シートまわりを中心に高級感の演出に抜かりはなし。とくにセカンドシートはサイズもゆったりで、座り心地や足もとなど各部のクリアランスも十分だ。まさに掛け値なしで快適なドライブを楽しむことが可能。この点もライバルと比較しても色あせてはいない。さらに気になる3列目もサイズも大きく、クッションも肉厚で、フルサイズらしい極上のパッケージングが特徴となる。
 エンジンは2.5リッターと3.5リッターの2タイプを用意。どちらもV6。しかもミニバン唯一のFRということで高級車的な乗り味を楽しむことができる。クルージングという言葉がピッタリくるのだが、その分、ワインディングなどでは、高い車高や2トン近い重量もあって、ロールはけっこう大きいし、ふわつくこともある。2007年10月に行なわれた一部改良では、トヨタのアルファード/ヴェルファイア対策もあってか、フロントグリルを2段としてさらに押し出しを強くするとともに、内装の質感もアップさせ、そのキャラクターに磨きをかけている。


[エコ&燃費]
 モデル末期近くということもあり、エンジンも設計の古いVQ型。さらに車両重量などを考えると、エコや省燃費の点から見てもかなりつらい。実際に燃費基準のクリアぶりを見ても2.5リッターのFFが+10%を獲得しているのが最高だ。一方の排ガスも「平成17年基準排出ガス50%低減レベル」に止まっている。

[安全性能]
 前後制動力を最適化するEBDやブレーキアシストは標準装備。横滑りを防止するVDCは3.5リッターにメーカーオプション。2.5リッターでは設定はなく、プリクラッシュシートベルトやインテリジェントブレーキアシストも同様だ。ちなみに2列目/3列目中央席のシートベルトも2点式というのは残念なところ。世界初となる「アラウンドビューモニター」は、大きなボディを簡単に駐車できるなどの利便向上に役立っている。

[取材時実測燃費]
7.2km/L

[エルグランド価格帯]
289.8〜483.0万円

2.4Z(FF・8人乗り)
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4865×1840×1900mm
車両重量
1890kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
2362cc
最高出力
170ps(125kw)/6000rpm
最大トルク
22.8kg-m(224N・m)/4000rpm
ミッション
CVT
10・15モード燃費
11.6km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
334.0万円
250ハイウェイスター ブラックレザーエディション
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4835×1815×1910mm
車両重量
2030kg
エンジンタイプ
V型6気筒DOHC
総排気量
2495cc
最高出力
186ps(137kw)/6000rpm
最大トルク
23.7kg-m(232N・m)/3200rpm
ミッション
5速AT
10・15モード燃費
8.6km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/マルチリンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格
325.5万円
トヨタ ヴェルファイア 2.4リッターエンジン

エンジンは直4が2.4リッター(写真)でV6は3.5リッターへと500cc排気量がアップした。2.4リッターでも不満のない動力性能を発揮する。

トヨタ ヴェルファイア 18インチホイール

エアロなどを装備したスポーティなグレードとなる2.4Zは18インチのアルミホイールを装着する。乗り心地の良さなど快適性も高い。

日産 エルグランド 2.5リッターエンジン

エルグランドは3.5リッターだけでなく2.5リッター(写真)もV6となるのが最大の特徴だ。滑らかな回転フィールは6気筒ならではのもの。

日産 エルグランド 17インチホイール

ハイウェイスターの17インチホイールは見た目もスポーティで好印象。コーナーなどで、ややふわふわした乗り心地なのが気になるところ。

トヨタ ヴェルファイア インパネ

トヨタのフラッグシップミニバンらしく、高級感と質感の高さは文句なしのレベルを確保する。ナビやエアコンなどのスイッチ類も扱いやすい。

トヨタ ヴェルファイア シフトレバー

2.4リッターモデル(写真)はCVTで、3.5リッターモデルは6速ATとなる。CVTはもちろん6速ATも滑らかな加速と低燃費を両立させている。

日産 エルグランド インパネ

スポーティさを重視したハイウェイスターでもフルサイズミニバンらしい高級感は十分。着座位置はやや高めで、運転席からの視界はいい。

日産 エルグランド シフトレバー

登場時期が古いということもあり、エルグランドのミッションは5速ATとなる。マニュアルモードも備えているのでそれなりに走りも楽しめる。

トヨタ ヴェルファイア フロントシート

ヴェルファイアのフロントシートは着座位置が低めだが、視界はよく運転しやすい。小物の収納スペースも豊富で快適性と実用性を両立させた。

トヨタ ヴェルファイア セカンドシート

ヴェルファイアのセカンドシートは座面や背もたれのサイズも十分確保されているので快適性は高い。足元や頭上の空間の余裕はかなりのもの。

日産 エルグランド フロントシート

エルグランドのレザーシートは手触りがよく、ソフトな座り心地が好印象。スペースの広さや視界の良さはヴェルファイアにも引けを取らない。

日産 エルグランド セカンドシート

シートアレンジを重視したためか、座面の長さや背もたれの高さが不足気味なのが気になるところ。頭上の空間もヴェルファイアほどの余裕はない。

トヨタ ヴェルファイア サードシート

サードシートはスペースも十分で路面からの突き上げ感もあまりない。フロント&セカンドシートとの乗り心地の差は少なく快適性は高い。

トヨタ ヴェルファイア セカンドシート オットマン

エルグランドはセカンドシートだけなのに対して、ヴェルファイアは助手席とセカンドシートにオットマンを装備しており快適性は十分以上。

日産 エルグランド サードシート

スペース自体は十分確保されているが、路面からの突き上げ感がやや強いのが気になる。決して長距離移動が厳しいわけではないが少し残念だ。

日産 エルグランド アラウンドビューモニター

エルグランドやセレナに搭載されるアラウンドビューモニターは、クルマを真上から見た様子が画面に表示される。車庫入れなどで便利な装備だ。

トヨタ ヴェルファイア ラゲッジ

開口部が大きく大きな荷物の積み込みも容易。さすがにフル乗車時のスペースには余裕はないがそれなりの大きさの荷物は積載可能だ。

トヨタ ヴェルファイア ラゲッジ

サードシートの収納はレバーひとつで片手で行なえる。シートの重さはほとんど感じることはないので、女性でも苦労することはない。

日産 エルグランド ラゲッジ

フル乗車時のラゲッジスペースはヴェルファイアとほぼ同等。若干エルグランドの方が広いが、実用上の差はあまり感じられないほど。

日産 エルグランド ラゲッジ

シートのサイズが小さめなこともあり、スペースはヴェルファイアよりもやや余裕がある。だがシートの収納には力が必要だ。

トヨタ ヴェルファイア ラゲッジ

セカンドシートを前方にスライドさせればかなり広い空間が現われる。このスペースをフルに使う機会は少ないだろうが使い勝手はよい。

トヨタ ヴェルファイア フルフラットシート

ヴェルファイアのフルフラットシートはサードシートのヘッドレストを外す必要がないのが好印象。だが完全に平らにすることは出来ない。

日産 エルグランド ラゲッジ

ヴェルファイア同様、エルグランドもフロアがフラットなので荷物を積み込むときの使い勝手はいい。スペース自体も十分確保されている。

日産 エルグランド フルフラットシート

エルグランドではフルフラットにするときにサードシートのヘッドレストを外す必要がある。だが広さは十分あるのでゆったりくつろげる。

トヨタ ヴェルファイア vs 日産 エルグランド

トヨタ ヴェルファイアはフロントシートからサードシートまで、乗り心地の差が少なく快適に移動できる。一方の日産エルグランドは後方に行くにつれてやや路面からの突き上げ感を感じるようになる。それでもフルサイズのミニバンらしくゆったりとくつろぐことは出来る。静粛性の高さはややヴェルファイアが優れている。