トヨタ ヴェルファイア

達人「国沢光宏」が斬る!

アルファード/ヴェルファイア評価

国沢光宏

職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

オネダンは全般的にお高い

新型トヨタアルファード

 新型アルファード/ヴェルファイアのカタログを見ると思わずウなる! けっこうなオネダンなのだ。2.4リッター4気筒エンジン搭載の一番安価な『240X』で300万円! 姿勢制御装置S-VSCやサイドエアバッグ、HIDライトなどが標準装備されるものの、オーディオは無し。

 HDDナビとオーディオ付けると、それだけで45万1500円高くなってしまう。また、新型アルファード/ヴェルファイアのセールスポイントになっている『エグゼクティブパワーシート』が欲しいとなれば、416万円以上のグレードじゃないとダメ(これまたオーディオはオプション)。

 つまり最も安いグレードでさえ諸費用込み400万円。少し豪華なモデルを買おうとすれば、軽く500万円超という感じ。こんなクルマを月販6千台(2台の合計、発売後数ヶ月は倍程度売れると考えているそうな)売るという目論見を立てているのだからトヨタって凄い!

新型アルファード
先代のイメージをうまく残しながら、アルファードらしい押し出しをさらに強めたデザインといえるだろう
新型アルファード
風格あるスタイリングが特徴のリアビュー、リアワイパーはトヨタ初となる「リアスポイラー収納式」だ
ヴェルファイア
全体的に若々しいイメージのヴェルファイア、2段になったヘッドライトとクリアテールランプが特徴

全体的には良好な仕上がり

トヨタ ヴェルファイア

 となると気になるのが、価格に見合った内容を持っているかという点。結論から書くと「人によって評価は大きく変わると思う」であります。コストパフォーマンスを重視する実用品だったなら、要求される性能は「なるべく高い平均点を取る」というもの。80点主義も通用する。

 しかし嗜好性の強い高額商品になると、平均点より満足度が重要。好例はブランド時計。時を刻む精度や機能を持っていてもダメ。趣味性を追求しないといけません。といった観点で新型アルファード/ヴェルファイアを見ると、明らかに前者。

 例えば走り。先代モデルのハンドリングも高い評価を受けていたが、重心を低くした新型になって一段と安定感を増した。加えてショックアブソーバーの品質を向上させたのだろう。ワインディングロードをハイペースで走っても全く不安無し!

 エンジンの改良や無段変速CVT(従来型は4速AT) の採用で、大幅な重量増となったにも関わらず、動力性能、燃費共に改善されている。従来型と乗り比べると、動力性能、ハンドリング、乗り心地、静かさ・・・・・・全て良くなった。
 

新型アルファード&ヴェルファイア 2.4リッター
熟成を重ねた2.4リッター直4(CVTとの組み合わせ)、売れ筋はこちらだろう、価格は300万円から
新型アルファード&ヴェルファイア 3.5リッター
ミニバンらしかぬ豪快な加速が魅力の3.5リッターV6(6速ATとの組み合わせ)、価格は338万円から
新型アルファード&ヴェルファイア 18インチホイール
タイヤサイズは16インチ、17インチ、18インチの3種類(写真はスポーツグレード用の18インチ)

 インテリアの質感や、オーディオ類、そして国際線のビジネスクラスのシートをベンチマークとしたエグゼクティブパワーシートの仕上がりだって抜群! お気に入りの映画など見ながら移動すれば、4〜5時間のロングドライブだってあっという間だ。

新型アルファード&ヴェルファイア インテリア
インテリアは「ミニバン界のクラウン」という言葉がピッタリの仕上がり
新型アルファード&ヴェルファイア フロントシート
インテリアカラーは写真のダークグレーと白系のシェルの2種類
新型アルファード&ヴェルファイア セカンドシート(8人乗り仕様)
主力になると予想される3人掛けベンチシート、座り心地は良好
新型アルファード&ヴェルファイア エグゼクティブパワーシート
航空機のビジネスクラス並みの快適さを味わえるエグゼクティブパワーシート、ゴージャスさも満点
新型アルファード&ヴェルファイア サードシート
室内幅こそ広いが、シート形状はあまり良くなくLクラスミニバンらしいくつろぎ感に欠けるサードシート
新型アルファード&ヴェルファイア ラゲッジスペース
サードシートの跳ね上げは、ノア/ヴォクシーと同じくスプリングの力を利用したもので非常に簡単

クルマ通だと濃い味に欠けるか?

新型アルファード&ヴェルファイア/室内コントロールスイッチ

 それなら100%満足か? と聞かれたなら「微妙ですね」と答えておく。リアシートに乗っていると、荒れた路面での乗り心地がイマイチ。特にシート座面の形状良くない3列目シートは厳しい。高価な純正オーディオも普通の人なら大満足レベルながら、コダワリを持つ人だと物足りない。

 趣味の領域に入ってくると、全て「もう少し頑張れば良かったのに」レベルなのだ。ま、私の場合、500万円を「けっこうな高額」だと考えるから要求レベルが高くなるのかもしれぬ。500万円を実用車の範疇として考える人なら、全く文句のないミニバンだと思う。いずれにしろ気になる人はぜひとも試乗して頂きたい。 

新型アルファード&ヴェルファイア 走り
新型アルファード&ヴェルファイア 走り
新型アルファード&ヴェルファイア 走り