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ROUND1 ファーストインプレッション
トヨタ クラウン
日産 フーガ

ライター紹介

自動車ライター&エディター

近藤 暁史 氏

某自動車雑誌の編集者から独立。その前はファッションエディター(笑)。とにかくなんでも小さいものが好きで、元鉄チャンで、今ではナローゲージを大人買い中。メインのクルマは19歳の時に買ったFIAT500。エンジンのOHからすべて自分でやり、今やもうやるところがない状態でかわいがっております。表向きは自動車ライターながら、業界唯一の省燃費グッズの評論家というのがもうひとつの顔。

日本を代表する高級サルーンと言えば、やはりトヨタ クラウンだ。13代目となったばかりのクラウンは、ワールドワイドな展開を前提としたレクサスとは一線を画して、あくまでも日本の高級車とはなにかを強烈にアピールする。もちろん実質上のトヨタのフラッグシップとして君臨しているだけに、高級感の演出は内外装の装備や質感だけでなく、走りにおいても高いクオリティを追求し、実現している。
一方、日産も伝統のセドリック/グロリアの後継車として、フーガをラインアップ。日産らしいソリッドなイメージで、クラウンとはまた違ったテイストを醸し出す。

今回は、両車ともに力を入れているスポーティなグレードで対決させてみることに。クラウンは3.5アスリート。フーガは同じく3.5リッターなのだが、スポーティな位置づけとされている350GTタイプSを登場させた。車格などは、ほぼ一緒なのだが、味付けはまったく違うだけに、その結果が気になる。

ROUND1 ファーストインプレッション

トヨタ クラウン

見た目の変化は最小限に 中身については大幅に進化

レクサスが登場した今でも、日本のサルーンとはなんたるかを強烈にアピールしているのがクラウンだ。そのクラウンも現行型で13代目。派手さはないものの、着実な進化を遂げているところが、クラウンらしいところ。実際の見た目も先代と大きく異なる印象は受けない。ゼロクラウンと銘打ってリセット感を強調していた先代に比べてフルモデルチェンジをした感が薄く、基本的にゼロクラウン路線を踏襲したと思っていい。

シャーシもゼロクラウンのものを流用。全長と全幅が少しだけ拡大しているのみでボディサイズも大きくは変わっていない。

ただし、その乗り味は格段にレベルが上がっており、特にスタビリティと乗り心地はかなりのレベルで両立させているのは乗ってすぐにわかるほど。サスペンション形式はこれまた伝統のダブルウイッシュボーン/マルチリンクと変わらないものの、可変減衰力機構であるAVSを採用した結果といっていい。電子制御システムも各所に70ものCPUを配置し、処理能力を約2倍に。またそれぞれをつなぐLANの通信能力も2.4倍とすることで、より高度な制御が行えるようになったのも大いに貢献しているだろう。

一方デザインに関してだが、エクステリアはクラウンらしく、変化は最小限に抑えられつつも、内装に関してはさらなる質感の向上や装備の充実が図られている。アスリートに関しては大人のスポーツサルーンがなんたるかということを教えてくれる仕上がりだ

[エコ&セーフティ]

エンジンはすべてV6で、デュアルVVT-i採用の直噴とし、緻密な制御を施す。アスリートでは3.5リッターながら、10km/lという好数値としている。また安全性については、全グレードでVDIMを標準装備し、アスリートの一部グレードでは、ステアリング操作のサポートをする「アクティブステアリング統合制御」もプラスしている。

[取材時実測燃費]

7.9km/l

[クラウン価格帯]

368.0〜567.0万円

[エンジン]

回転の滑らかさやパワーフィールなど、アスリートにふさわしいパフォーマンスを発揮する。排気量の割には燃費も良好な点にも注目だ。

[ホイール]

18インチの超扁平タイヤながら、クラウンらしい乗り心地の良さを実現している。ハンドリングの良さもスポーツセダンらしさを感じさせる

[インテリア]

アスリートはブラックの内装色で、高級さとスポーティさを感じさせてくれる。ロイヤル系は明るいベージュで高級感を前面に出している。

[シフトレバー]

滑らかな変速フィールと優れた燃費特性を両立。スポーツモードでは変速タイミングだけでなく、エンジンや足まわりの設定も変更される。

[フロントシート]

フロントシートはサイズやクッションの厚みも十分で、快適性はとても高い。それでいてサイドのサポートもしっかりしているのはさすがだ。

[セカンドシート]

後席のスペースも申し分ない。大柄な男性でも頭上や足元のスペースにはかなり余裕があるので、長距離ドライブでもゆったりくつろげる。

[メーター]

スピードメーターを中心としたレイアウトは高級感も十分。燃費などを表示するインフォメーションディスプレイも大きな文字で見やすい。

[ラゲッジ]

クラウンのトランクは広さも十分あり、使い勝手はとてもいい。開口部も広く設定されているので、大きな荷物でも積み込みやすい。

3.5アスリート
ボディサイズ(全長x全幅x全高) 4870×1795×1470mm
車両重量 1650kg
エンジンタイプ V型6気筒DOHC
総排気量 3456cc
最高出力 315ps(232kw)/6400rpm
最大トルク 38.4kg-m(377N・m)/4800rpm
ミッション 6速AT
10・15モード燃費 10.0km/l
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格 487.0万円

日産 フーガ

サルーンでも日産らしい硬派ぶり 安全性向上にも重点を置く

セドリック/グロリアの後継車として、2004年に登場したのがフーガだ。それだけにサルーンといっても、ただ快適性のみを追求したのではなく、本来の日産が持つ硬派なエッセンスをもうまくプラスしたスポーツサルーンに仕上がっている。見た目もじつに精悍だ。

シャーシは日産の基幹となるFR-Lプラットホームを改良したもので、サスペンションを新開発。ダンピング性能と乗り心地をうまく両立させることに成功している。ちなみにホイールは19インチが標準装備され、日本初となる。

エンジンは世界的に高い評価を得ている日産自慢のVQ型を搭載。途中で北米仕様にはあった333馬力発生の4.5リッターを追加している。また当初よりある2.5リッターと3.5リッターについては、一部改良時に、バルブのリフト量を変化させることでスロットル機能を持たせたVVELをプラス。この結果、さらにダイレクトでレスポンスのいい走りが楽しめるようになった。ただし、ミッションに関しては、世界的にATの多段化が進むなか、未だに5速のみというのはつらいところ。実際の運転上問題なくても、走りのポテンシャルや燃費をさらに高めるという点でも6速は欲しいところだ。

インテリアに関しては、高級感を前面に出したデザインだが、インパネや内装色のセレクトなどで、日産らしいソリッドなテイストをうまくプラスしている。クラウンとはまったく違う解釈のサルーンと言っていいだろう。

[エコ&セーフティ]

登場時より、カーテンエアバッグを標準装備するなど安全性の確保にも力を入れているが、マイナーチェンジでは世界初となる先行車両との車間距離を維持操作を支援するインテリジェントペダルなどプラスした。またエンジンはバルブにスロットル機能を備えたVQ・HR型にすることで燃費の向上も図っている。

[取材時実測燃費]

6.8km/l

[フーガ価格帯]

396.9〜627.9万円

[エンジン]

パワー感など体感的なパフォーマンスはクラウンと同等。回転フィールなどにやや古さを感じさせるのが残念だが、気にならないレベルだ。

[ホイール]

日本車で初めて19インチホイールを標準装備したのがこのフーガだ。ソリッドなハンドリングが楽しめるが、突き上げ感はやや気になる。

[インテリア]

フーガのインテリアはクラウンとは異なるテイストだが、質感は互角。どちらかといえば若いユーザー向けのデザインテイストといえる。

[シフトレバー]

変速フィールは悪くないものの、走りのパフォーマンスや燃費などの面では5速ATというのは古くさい。ぜひ6速化してほしいところだ。

[フロントシート]

高級感やスペースの広さはクラウンにも引けをとらない。だがフーガの方がより若いユーザーを意識したスポーティな雰囲気でまとめられている。

[セカンドシート]

ドライバーをメインにしたスポーティなパッケージングだが、後席の広さも不満のないレベル。本革の質感もなかなかのものだ。

[メーター]

各メーターが独立したスポーティなデザインが印象的だ。視認性に問題はないが、インフォメーションディスプレイの表示はクラウンよりも少し小さい。

[ラゲッジ]

スペースの広さや内部の形状は満足できるが、開口部の下側が狭く、大きな荷物は少し上まで持ち上げる必要があるのが気になるところ。

350GT タイプS
ボディサイズ(全長x全幅x全高) 4935×1805×1510mm
車両重量 1710kg
エンジンタイプ V型6気筒DOHC
総排気量 3498cc
最高出力 313ps(230kw)/6800rpm
最大トルク 36.5kg-m(358N・m)/4800rpm
ミッション 5速AT
10・15モード燃費 9.3km/l
サスペンション(前/後) ダブルウィッシュボーン/マルチリンク
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格 468.3万円

どちらも高級車にふさわしい快適性とハンドリング特性を持っている。クラウンはアスリートでも乗り心地がよく、それでいてステアフィールもスポーティなのには驚かされる。一方のフーガは19インチタイヤならではのスポーティな走りは魅力だが、路面の悪いところではやや突き上げ感が気になってしまう。