フィアット500の基本コンポーネンツはパンダから流用している。搭載エンジンは1.2LのSOHC8Vで、デュアロジックと呼ぶATモード付きの5速シーケンシャルトランスミッションとの組み合わせとなる。エンジンの動力性能は69ps(51kW)/10.4kg-m(102N・m)だから、日本の軽自動車に搭載されるターボエンジンと同程度の実力と考えたら良い。パワーでは軽自動車をやや上回るがトルクは軽自動車並みの数値だ。
そんなわけで決してパワフルなエンジンとはいえないが、フィアット500は車両重量も比較的軽くて1010kgに抑えられている。なので走りにもそう不満を感じない。元気良く走らせようと思ったら、それなりに応えてくれるエンジンである。
それ以上にデュアロジックのデキが良くなったのが印象的だった。ATモード付きのシーケンシャルトランスミッションは、ヨーロッパではいろいろな車種に採用されているが、変速時のトルクの抜けに不満があった。それが今回の500ではかなり改善されている。
すでにシトロエンのC4ピカソやスマートのフォーツーなどでも改良型が搭載されているが、それと同じように変速時のトルクの抜け方が穏やかになり、変速時間も短くなっている。アクセルを踏み込んで発進していくときにはトルクの抜けも大きめになるが、普通にタウンモードで走らせようとするなら、それほど違和感を感じないですむ。
今回は街乗りを中心に首都高速を走らせてみたが、首都高で一定速になった後の走りは全く問題のないもので、首都高の流れに乗って走ることができる。
このトランスミッションはATモードとマニュアルモードを持つが、マニュアルモードのときには各ギアが固定になるので、ドライバーの意志でギアを選択する必要がある。またATモードのときにシフトレバーの付け根部分にあるEボタンを押すと、燃費重視の変速スケジュールになる。
このほかシティと書かれたボタンを押すと、ステアリングの操舵力が軽くなって車庫入れなどのときに便利な機構も備えている。
ボディサイズの割にはちょっと大きめともいえる15インチタイヤを履いていることも、走りのしっかり感につながる部分。やや柔らかめの乗り心地も悪くない。室内騒音についてはコンパクトカーの平均レベルという印象だ。
●お勧めグレード
試乗したのはラウンジSSという発売記念の特別仕様車だったが、これは200台の限定なのですぐに売り切れてしまったと思う。特別仕様の部分を除いたラウンジが225万円で販売されているので、これを選ぶことになる。
1.4Lエンジンを搭載したミニONEが231万円(AT車)で販売されていることを考えると、1.2Lエンジンとデュアロジックのフィアット500が225万円というのは、なかなか微妙な価格設定といえなくもない。
どちらもデザインが気に入って好きと思う気持ちの強い人が買うクルマなので、単純に競合させて比べて選ぶユーザーはほとんどいないだろうが、クルマの性格が似ていて価格帯が近いだけに、お互いに意識することになるのではなるのは間違いない。ユーザーとしては比べて選ぶくらいの気持ちで良いと思う。