三菱ふそう エアロエース・ショートタイプMM

誰もがじっと見つめたバスの運転席

 はめられるのはイヤだけど、男なら一度は回してみたいワッパ。ワッパって文字にするとヒジョーに間抜けな感じだけど、そうワッパとはハンドルのこと。しかも大きいのな! 子供の頃、じっと見つめたバス運転手のグルングルンという大胆なさばき。これぞ男の中の男、「大きくなったら絶対にオレもバスの運転手になる」と心の中で熱く決意した人は多かろう。ちなみに個人的には、うなるシフト(今思えばメチャクチャ入りにくい)をだましだまし操作するのにもしびれたものだ。

大型観光バスといっても、ショートボディ

三菱ふそう エアロエース・ショートタイプMM

 そこで今回はいつもとは趣を変え、男心をくすぐるバスに乗ってきた。もちろん乗るのは新型で、三菱ふそうのエアロエース・ショートタイプMMという大型観光バス。ショートタイプというだけに、フルサイズよりも短くて、まぁ、コンパクトといえばコンパクト(とはいえ大きいけど)。

三菱ふそう エアロエース・ショートタイプMM インテリア

 町内会のオッサン慰安旅行がピッタリといえばイメージできるだろうか。現に定員は42名と少な目なうえに、後半部分が応接間のようなサロンタイプも用意されていることから、そこそこの規模の旅行に適しているのは確かだ。

意外にアッサリと運転できるのだ

三菱ふそう エアロエース・ショートタイプMM 運転席

 じつは先行発売されているロングボディのエアロエースには以前乗ったことがあるのだが、あちらは長いオーバーハングの先に座っている形で、それこそ子供の頃に憧れた「運転手さん、座っているところ路肩からはみ出て曲がっているじゃん」だったけど、よく説明を聞きつつ見てみると、ショートタイプの場合はタイヤの上あたりでそんなに違和感はなさそう。実際に運転してみると、確かに(乗用車に比べて)超ロングホイールベースなので、曲がるときに意識して大回りしなくてはならない以外は意外にフツー。極太のトルクに身をゆだねて、まさにクルージング感覚で流すのは、なんだかアメ車っぽい感じがしなくもなく、気持ちいい。

三菱ふそう エアロエース・ショートタイプMM シフト

 ただし、ショートなのでロングに比べて少し直進安定性が悪いのと背が高いだけに風に流されやすいので、まさに手放しで楽チンというわけではなかった。ちなみに大型を運転するといつも思うのが、モビルスーツっぽいということ。ステアリングはタイヤと。アクセルはエンジンとつながっている感がかなり薄くて、シフトは電子制御でただのスティック。運転というより操縦といったほうがピッタリくるかも。そこがまたいいんですけど。

まじめに進化のポイントを紹介しよう

三菱ふそう エアロエース・ショートタイプMM

 じつはこのエアロエース自体は、昨年になんと15年ぶりのフルモデルチェンジを実施。フロントウインドを強調した、流面なスタイルへと変身した。さらにインテリアも、入り口がシアター風だったりと、じつにモダンだ。走ってもディーゼルエンジンは凄く静かで振動も少なく、その昔、遠足に行って乗っただけで気持ち悪くなったような閉塞的な雰囲気は一切なし。シートの間隔も広くて伸び伸びだ。そして、やはり時代的に安全性を大幅に向上させており、運転席にはエアバッグが付いたり、ABSや駆動輪のスリップを防ぐASRなどを装備可能。また坂道発進をアシストするEZGO(イージーゴー)なんていう装備もある。

三菱ふそう エアロエース・ショートタイプMM エンジン

 そしてやはりディーゼルとくれば環境性能が一番重要。15年ぶりのフルモデルチェンジとはいえ、改良を繰り返しており、別に15年前の仕様のエンジンを最近まで使っていたということではないので、悪しからずだ。エンジンは7.5リッター・インタークーラーターボ付きで、コモンレール式を採用。270馬力/80kg-mという立派なスペックを誇る。だから、太いトルクを利用してゆったりと流すような走りが楽しめるわけだ。

乗用車レベル!? 意外にいい、巡航での燃費

 まず燃費はサロンタイプで5.0km/Lと意外にいい数値。実際に高速周回路を走りつつ、インジケータ(乗用車と同じようなのが付いている)を見ると8〜9km/Lぐらい出ていたので、乗り方にはよってはさらにいいようだ。たぶん燃費基準の問題と空荷ということも関係しているのだろうけど、まぁ、ガソリンだと3.5リッターと同じぐらいか。ちなみにアイドリングストップも可能だ。
 問題の排ガスについては、大型では尿素式を採用しているものの、このサイズだと日頃の使い勝手が重視されることから、再生式DPFで対応している。DPFとは粒子状物質を除去するフィルターのことだけど、低速では詰まりなどが発生する場合も。そのときは、詰まりを強制的に除去するので再生式と呼ばれるわけ。その結果、平成17年長期排出ガス規制をPM10%低減レベルで適合させている。
 最初は運転できるだけで、ただうれしくて違いはわからなかったものの、乗用車とはまた違う事情や規制、基準を知るにつけ、ますますはまってきました、ワッパの世界! また乗りたいっす。