S65B40Aとは新しいM3に搭載されるエンジンコードである。4リッターV型8気筒から最高出力420ps/8300rpm、最大トルク40.8kg-m/3900rpmを発揮する。レーシングカーを一般道で味わえることをコンセプトにしているMモデルらしく高回転型になっている。V型8気筒になって重くなることを心配するが、先代モデルの3.2リッター直列6気筒エンジンより15kgも軽く仕上がっているから走りのパフォーマンスは上がるだけだ。
純粋なレーシングカー同様、8個のシリンダーのインテークバルブのそばにはそれぞれ独立したスロットルバタフライが装備されている。これにより高速域のレスポンスの良さと卓越した性能を発揮できるのだ。
これほどの高性能エンジンだとサーキット走行は良いが市街地走行はギクシャクして難しそうに思えるが、免許取立ての初心者でも簡単にスムーズに走らせることができる包容力も持っている。
高性能が簡単に引き出せるために先代よりも刺激が少なくなったと感じるドライバーもいる。しかしボクはニュルブルクリンクのノルドシュライフェを2日間雨の中を走った経験から、これは単に刺激が少ないのではなくドライバーの意思どおりに走ってくれる性能なのだということを実感した。4本のタイヤの先端まで神経が行き届いた感触により、特別滑りやすい雨のニュルでもスピードコントロール、ライントレースが非常にやりやすかった。そして走り終わったときには、疲れるどころかもっと走りたいという愉しさだけが残った。
3シリーズクーペに対してサスペンションは新設計になっているし、フロア下には新しくボディ補強も加えられたことにより、新しいM3も伝統のM3らしい走りが実現できている。