ゴルフを世界のコンパクトカーのベンチマークとすれば、ヴィッツは国産コンパクトカーのベンチマークだ。それほど、このクルマの存在意義は高く、さらに国産コンパクトカーの基準を作り高めてきた。2代目となる現行モデルは、2005年に登場。これを機に従来の1リッター、1.3リッターに加えて1.5リッターを最初からラインアップしている。。ボディサイズも拡大されたが、それは安全性能を向上させるためである。もちろん、居住性もアップしている。それと同時にボディ剛性や内外装のクオリティをアップ。ヨーロッパのコンパクトカー市場も視野に入れた作り込みがされている。ハンドリング性能は、とにかく素直のひと言。乗り心地に関しては、従来のコンパクトカーの常識をうち破る上質さがあり、デビューから2年を経過するが未だ色褪せ感はない。
ヴィッツがコンパクトカーの基準を変えて2年。初代モデルからの最強ライバルであるフィットも2007年にフルモデルチェンジ。先代モデルから居住性の部分ではヴィッツよりアドバンテージをもっていたが、新型になってさらに磨きをかけてきた。価格も、同等グレード同士で比較すると、ヴィッツより低めの設定。最小回転半径といった取り回し性能、燃費性能もほぼイーブンだ。ただ、絶対的なボディサイズでは、やはりヴィッツのほうが小さく、カタログデータでは比較しきれない市街地での取り回しでは、やはり有利だ。さらに、ヴィッツの良さはガラスエリアの開放感。ちょっとタイトめで、それがクルマとの一体感を醸し出す。スポーティさではフィットに軍配があがるだろうが、女性ユーザーには素直なヴィッツのほうが乗りやすく感じるかもしれない。さらにヴィッツのライバルとなるのが新型デミオだ。ヨーロッパ基準で作られており、軽量化を実現しつつ剛性感のあるボディは、乗ったときのしっかり感がある。ただ、インテリアの作り込みや車両本体価格からの質感は、間違いなくヴィッツに一日の長を感じさせる部分がある。
安全性能の向上でボディサイズが拡大し、車重も1ｔ超となったため、それに見合ったエンジンパワーと価格のベストバランスは1.3リッター。グレードは、FをボトムエンドにU、I'LL（アイル）、RSをラインアップ。ちなみに1.5リッターモデルもグレードラインアップは同様で、１リッターモデルにはさらにベーシックなBを設定（1リッターのFとBにはアイドルストップ機構付きのインテリジェンス・パッケージもある）。さて、この4グレードから価格と装備のベストバランスはI'LLとUとなるが、このどちらを選ぶかが悩みどころだ。その価格差は約6万円。装備を細かく比較すると、I'LLはスエードトリムや本革ステアリング、フォグライトを装着。室内に入ったときの印象や手触り（ステアリングも）といった感覚的な部分では、間違いなくI'LLのほうが上質だが、それにフォグライトを含め7万円という価値を感じるかが分岐点となるはずだ。FグレードとUの価格差は約17万円と大きいが、オートエアコンやスマートエントリーシステム、イモビライザー（盗難防止装置）などの快適装備が標準。価格も含めてコンパクトカーらしさを求めるのならFでも十分といえる。スポーティグレードのRSに限っては、1.5リッターモデルがオススメ。5速MTの設定もあり、コンパクトカーというよりホットハッチを求めるユーザーにはピッタリだ。
トヨタ ヴィッツの試乗記
