後席って、シートベルトしなくっても・・・!?

皆さんは、クルマに乗るときにシートベルトをしているだろうか。「当たり前じゃん」って言っているあなた。後席だとどうだろうか。「え、後席はしなくてもいいんでしょ??」そう思っているヒトは、これを読んで今日からすぐに改めて欲しい!
【JAFユーザーテスト】衝突実験、衝撃の瞬間!

シートベルトをしなかったばっかりに・・・!

 JAF(社団法人日本自動車連盟)は4月19日、茨城県つくば市で「JAFユーザーテスト」を一般公開で実施した。このテストは、クルマの使用に関する様々な検証を継続的に行なっているものだ。JAF会員向けの広報誌などで、その模様を見たことがある方も多いだろう。今回行なわれたテストのテーマは、「後席シートベルトの効果と必要性の検証」だ。

 法令化された前席に比べ、極めて装着率の低い後席シートベルト。確かに後席は、一見するとハンドルのように乗員に直接ぶつかり危害を及ぼしそうな障害物は見あたらない。むしろフロントシートの後ろで守られているような感覚があり、前席に比べ万が一のときでも安全そうなイメージがある。
 しかし、それはただの思い違いでしかない。
衝突時に、後席乗員が車外に放出。後続車にひかれて死傷した事例。衝撃で後席からフロントガラスに目がけ飛び出し、本人のみならず前席の乗員にも重大な障害を及ぼした事例・・・
 このような痛ましい交通事故が、度々起きていることをご存知だろうか。
 後席で3点式シートベルトを装着していさえすれば、避けられた事故なのだ。「知らなかった!」では済まされない。大事な家族や恋人、友人らを守るためにも、シートベルトだけは絶対に忘れないでして欲しいのだ。

【JAFユーザーテスト】これから事故に遭ってしまう不幸な方々・・・

実験直前のダミー人形 4体

運転席:男性成人ダミー1名(3点式シートベルト装着)、後席手前(赤シャツ):女性成人ダミー(シートベルト非装着)中央:児童(2点式ジュニアシートで骨盤のみ支持)、後席奥(青シャツ):女性成人ダミー(3点式シートベルト装着)

交差点での出会い頭事故を再現

 「カーン!」金属と金属がぶつかり合った鈍〜い音が、静まり返った試験場に響き渡る。
 茨城県つくば市にある日本自動車研究所(JARI)の衝突実験場で行なわれた実車テストは、ホントウにあっという間の出来事だった。

 テストは、出会い頭事故を想定して行なわれた。直線の誘導路を時速25.5km/hで走る白い大型セダン(セルシオ)。直角に交差する誘導路に、時速45km/hで走る銀色のミニバン(ノア)。交差点で、セダンの左側面にミニバンがぶつかる、というシチュエーションである。
 出会い頭の事故で、ミニバンに乗せられた4名のダミー人形がどのような挙動をするかが、今回の実験のキモだ。

【JAFユーザーテスト】衝突実験、衝撃の瞬間!
衝突の瞬間! 白い大型セダン(セルシオ)の側窓が衝撃で粉々に散る。
【JAFユーザーテスト】衝突直後の模様
衝突直後の模様。銀のミニバン(ノア)より重たいはずのセダン車が、衝突のエネルギーで思いっきり吹っ飛ばされた!
セルシオの側面もくの字に曲がる
ご覧の通り、わずか時速45km/h程度で、大型セダンでさえ、こんなにくの字になってしまうのだ!

 運転席に男性成人ダミー1名(身長175cm、3点式シートベルト装着)、後席に女性成人ダミー2名(それぞれ身長145cm、体重45kg)と児童1名(6歳児ダミー・身長120cm、体重22kg)。
 運転席の真後ろにシートベルトを装着しない女性(赤シャツ)、真ん中の席にジュニアシート(骨盤のみを支持する2点式ベルトを装着)、そして助手席の後ろには3点式シートベルトをした女性(青シャツ)、という構成だ。

【衝撃!カメラは見た】衝突実験車の中で撮られた決定的瞬間!

【JAFユーザーテスト】衝突、その瞬間の車内の模様
【JAFユーザーテスト】衝突、その瞬間の車内の模様
左:衝突前/右:衝突時
画面右の青シャツ女性がシートベルトによって姿勢を保っていることがわかる。
【JAFユーザーテスト】衝突、その瞬間の車内の模様
【JAFユーザーテスト】衝突、その瞬間の車内の模様
後席でシートベルトをしていない赤シャツ女性の顔が、運転席ヘッドレスト左横まで飛び出している!
また児童も体重を支えきれず前のめりになっている様子が分かる。

 結果は、一目瞭然だった。運転席直後に座る赤シャツの女性ダミーは、衝突の衝撃でBピラー(前後ドア間の柱)、そして前席に叩きつけられる。その勢いで、運転手も前に押される格好となった。本来ならシートベルトと運転席エアバッグによって守られたはずの運転手にも、思わぬ被害が及んでしまったワケだ。
 いっぽう、センター席の児童も、衝撃で上体が大きく前屈。最後は左右の女性ダミーに押される格好で倒れこんでいた。
 もちろん後席左の青シャツの女性は、3点式シートベルトによって大きな被害もないようで、平然とした顔で(?)座っている。

後席の乗員にシートベルトを勧めないのは、殺人未遂行為!

 後席シートをフルフラットにしたまま走行するファミリーを、高速道のサービスエリアなどで見かけることがある。今回の実験を見れば、これはもはや殺人未遂に等しい、言語道断の行為だということがわかるだろう。ヒトの親がする行いではないのだ。
 いや、今までは知らなかったのだから仕方がない。しかし、このページを見たならば、二度とそんな愚行は繰り返さないで欲しい。

 実は会期中の第166回通常国会でも、「後席シートベルトの着用義務化」は審議の対象となっている。しかし、「違反になるから仕方なく」ではなく、その意味をしっかり考え、今すぐ自発的に装着して欲しいところだ。

【JAFユーザーテスト】衝突直後の車内の様子
衝突直後の車内の様子。赤シャツ女性はも児童も、ぐったり。青シャツ女性のみ姿勢を保っていることに注目。
【JAFユーザーテスト】運転手と後席の関係
運転手は一見無事なようだが、後部からの衝撃でシートが押され、シートベルトの位置が首のほうにズレている!
【JAFユーザーテスト】モニターで事故の模様を再現
車内外に取り付けられたモニターの映像は、すぐに会場で放映された。参加者は、中でも車内の模様を特に興味深く見ていたようだ。

( レポート:CORISM編集部 徳田 透 )

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