BMW 335iツーリング フロントビュー

カッコ良さに引き込まれ、すっかり“私情”モード

 2005年に登場したE90・BMW3シリーズも街中で見る機会が多くなった。クーペに続きワゴンとセダン、そしてカブリオレの全モデルがデビューし、残すはM3だけとなったBMW3シリーズ。カブリオレのエレガントなスタイル、そしてクーペのスポーティなスタイルも魅力的だが、ワゴンのスタイルが一番好きだ。先代のBMW3シリーズ・E46のワゴンに一時乗っていたこともあり、BMW 335iツーリングはいつも以上に私情を交えて試乗をした。
 BMW 335iツーリングは直列6気筒直噴3Lツインターボから306馬力と40.8kgの高出力を発生する3シリーズ最強エンジン。更に試乗車はM-Sportパッケージ車で、車高が標準より15mm低く、エアロパッケージとの組み合わせは、乗る前から「カッコいい!」と、つぶやいてしまい、試乗を離れ完全に私情モード。運転したい気持ちは抑え、冷静になるために最初はリヤシートに乗り込んだ。

BMW 335iツーリング ホイール
BMW 335iツーリング リアビュー
BMW 335iツーリング サイド〜リアビュー

後席でも感じる心地よさ

BMW 335iツーリング 後席

 足下は広がったのは勿論であるが、E46モデルと比較して室内幅の拡大を一番感じる。乗り心地は変な突き上げもなく、従来M-Sportモデルは走行性能を重視しため、サスペンションの硬さを感じたが、このツーリングは「しなやか」で後席でも全く不満を感じない。サルーンとしても合格点だ。
 心地よいホールド感のあるスポーツシートの運転席に座ると、いつもの場所にいつものスイッチがあり335iだからと言って特別の事はない。
 気になるのは右ハンドルだからiDriveのコントローラーは当然左側にある。僕はパソコンのマウスを右手で動かす為、左手でのコントローラーを動かす事に違和感を覚える。慣れもあるだろうが、左ハンドル車の右手でコントローラーを動かす方が自然だと思う。

ワープしているようにさえ感じる、圧倒的な加速力!

BMW 335iツーリング ドライビング

 運転席に座ると乗り心地の良さを更に感じる。ランフラットタイヤを履いているがタイヤの重さや硬さは感じない。あまりにも車が安定しているため、自分の感覚よりスピードも高めになってしまい、時々スピードチェックが必要だ。ターボであるが低回転から充分なトルクがあり3リッターのエンジンの余裕を感じる。

 高速道路の本線進入路で試乗して初めてアクセルペダルを深く踏み込む。キックダウンにより低いギヤに落ちたと思った瞬間、自分の考えていたより急激に加速し、慌ててアクセルを戻してしまった。ポルシェ911ターボの加速力も驚いたが、アクセルペダル踏んだ瞬間は335iの加速力の方が凄い。スター・トレックという映画でワープする場面を思い出した。自分が加速するのではなく周囲が後に流れていくように感じるほど335iは瞬間的に加速する。このレスポンスの良さはターボとは思えない。
 それ程のエンジンレスポンスが良いのはわずか1300回転で最大トルクを発生するエンジン性能だけではなく、6速のATが優秀だからである。Dレンジのまま自由にスピードをコントロール出来て、ハンドルの裏に付いているパドルシフトでギヤを選択する必要性を感じさせない。

BMW 335iツーリング 走り(サイドビュー)
BMW 335iツーリング シフト
BMW 335iツーリング 走り(フロント)

まさに自分が「主役」と感じる運転を味わわせてくれるクルマ

BMW 335iツーリング エンジン

 アクティブ・フロント・ステアリングを装備した正確なステアリングと強力なパワーを受け止めるシャーシ、何処までも路面からタイヤを離そうとしないリヤのスタビリティも他のモデルと同様に高いレベルにある。いつもより高めのスピードでコーナーに進入しても弱アンダーステアのままで、出口でアクセルを踏んでもリヤタイヤは破堤しなく、公道では限界を確かめることは困難である。
 自分の狙ったライン通りに車を乗せることが簡単で、あたかも自分の運転テクニックが上手くなったのでは錯覚をしてしまう。その高性能を操る自分が「主役」と感じ、運転が楽しい。

BMW 335iツーリング リアビュー

 悩みのタネは一つだけ、700万円を超える車両価格。「良いモノは高い」であるが、ワゴンの実用性とセダンの乗り心地、スポーツカーの性能を兼ね備えた車であるので「3台分の価格と考えればお買い得」と我が家の財務大臣を説得できるだろうか。