スバル インプレッサSTI 走り

安心して走れるフォレスターのアクティブトルクスプリットAWD

 雨や雪など路面状況が悪くなればなるほど、AWD(オール・ホイール・ドライブ)のスタビリティ(安定性)の高さを、今更ながら実感する。長野県の女神湖で行なわれたスバルのシンメトリカルAWD試乗会に参加して、その思いはさらに強くなった。
 スバルAWD試乗会当日の女神湖は、暖冬の影響で湖面が溶け出し氷の上に水という最悪のコンディション。路面はグチョグチョでズルズル。AWDがイイのは分かっちゃいるが、気持ちが萎える。イマイチ気分が乗らないまま、一番楽に走れそうなフォレスターでコースイン。アクティブトルクスプリット式と呼ばれるAWDを搭載したモデル。通常のトルク配分は前60後40を基本として、ほぼ前後直結状態から前輪駆動状態までをコントロールする。
 発進はとても穏やかだ。まるで何事もなかったように発進する。ラフにアクセルを操作してフロンとタイヤが滑るカタチを作り出しても、穏やかに後輪にトルクを増やしトラクション(駆動力)を与えている。ボーっとしていれば、クルマが何をしているか分からないほど自然。滑り出しも穏やかで、女神湖上のような低ミュー路の肩ならしにはピッタリ。存在そのものが分からないくらい自然に乗れ、安定したトラクションを発揮してくれる。積極的にコーナーリングを楽しむというタイプではなく、雨の日の高速道路での安定した直進性などに、その魅力を発揮するAWDのように感じた。

スバル インプレッサSTI 走り
スバル インプレッサSTI 走り
スバル インプレッサSTI 走り

レガシィに搭載されるVTD−AWDは、走りを楽しむAWD

 フォレスターで肩ならしを終えた頃には、気分はノリノリ。次はVTD—AWD(バリアブルトルクディストリビューション)と呼ばれるシステムを積んだレガシィB4に乗る。このAWDの特徴は前後の基本トルク配分を45:55として、フロントタイヤの仕事量を減らし、優れた回頭性を与えたものだ。アクセルを踏むとアクディブトルクスプリットAWDのフォレスターと異なり、ちょっと後ろから押されるようなFR感覚に近い乗り味だ。さらに電子制御のLSDが加わり左右のトルク配分もコントロール。コーナーリング時や低ミュー路など、クルマが不安定な状況にも適切なトルク配分を行なってくれる。それだけに、コーナーリング中に積極的にアクセルを開けていったときや、コーナーリング中のブレーキングなどにおいて安定したトラクションが確保できるのだ。
 さらに、このレガシィB4にはVDC(ビークルダイナミクスコントロール)と呼ばれる横滑り防止装置が装着されていた。まずは、VDCをONにした状態でコースイン。緩やかに曲がったコーナーでも安定した姿勢のままだ。積極的にアクセルを開けリヤにトラクションをかけるとリヤタイヤが滑り出す。その瞬間、VDCが介入しリヤの滑りはピタリと止まり、ハンドル操作通りに曲がれるスピードにブレーキやアクセルをクルマが自動的に修正してくれるのだ。雪道で突如としてクルマが滑り出したときや、緊急回避したもののクルマが滑り出したときにとても有効。このシステムは、アクディブセイフティーと呼ばれる予防安全技術の中でも、もっとも中心となる技術だ。極論だがクルマが安定性を失わなければ、衝突しなくてもすむ。ぶつからなければ、衝突安全ボディもエアバッグも必要ない。しかしながら、日本の自動車メーカーの多くはエアバッグや衝突安全ボディのように分かりやすい装備ばかりにスポットを当て、少々分かりにくいVDCという素晴らしい技術を未だ標準装備化しないのだ。

シンメトリカルAWDとVDCの組み合わせは究極のパッシブセイフティー!?

 スバルは水平対向エンジンの低重心、左右対称であるメリットとAWDの組み合わせでシンメトリカルAWDを核としたクルマ作りを行なっている。より安全により愉しくを高い次元でバランスさせてシンメトリカルAWDを進化させていくと明言している。より安全というテーマがあるのであれば、ぜひともVDCを標準装備して欲しい。ある意味、AWDの安定したトラクションとVDCの組み合わせは、予防安全としては無敵なのだから。
 女神湖上やサーキットなど、ある程度クルマを滑らせて走らせることが前提の場所であるならVDCをオフにした方が楽しめるの事実。ということで、VDCをオフにした状態でコースイン。リヤがゆっくりと滑り出す。フロントタイヤのグリップ与えながら、ググッとアクセルを踏む。そうすると、ダダァーと雪を蹴散らしながらリヤタイヤがブレイク。フロントタイヤを中心に、クルマがグルリと向きを変える。そんなアクティブな走りも可能。フォレスターに装備されていたアクティブトルクスプリットAWDに比べれば、各段にスポーティ。よりアグレッシブにクルマを走らせたいと思うのなら、VTD−AWDがお勧めだ。

スバル レガシィB4走り
スバル レガシィB4走り
スバル レガシィツーリングワゴン走り

もっともアグレッシブなDCCD AWDはインプレッサSTIに搭載

 さあ、最後はもっとも走りに特化したインプレッサのSTIバーションだ。このインプレッサにはDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)方式のAWDが搭載されている。前後の基本トルク配分は41:59とかなりリヤにトラクションをかけている。スバルのAWDの中でも、もっともアグレッシブで緻密。そして最高のトラクションを確保する。メカニズムの特徴は、トルク配分を緻密に制御できる電磁式LSDと素早くリニアな制御ができる機械式LSDを組み合わせている点だ。このメカニズムの利点は、旋回初期にデフをフリーにして回頭性を高めたり、加速時には直結状態でトラクションを確保したりできる。さらに、ステアリングの操舵量も加味しドライバーの意思に忠実なパフォーマンスを発揮するというものだ。基本はオートモードだが、ドライバーのダイヤル操作でトルク配分を任意に設定できる機能もある。
 走り出してすぐに気が付くのが、そのトラクションのかかり方がハンパじゃないこと。アクセルを全開にすると、リヤタイヤをちょっと左右に振りながら、フロントタイヤがガガガガァーと路面をつかみ、氷上だということを忘れそうになりそうな加速を見せる。コーナリングスピードも段違いの速さ。ズリズリと滑りながらも、グリグリと曲がる。テクニシャンになら、左足ブレーキを使ってリヤを自由自在に振り回しながら、アクセルONで曲がれる。腕がなくても十分に速いし、腕があれば恐ろしく速く走れる。困ってしまうのは、楽しくてついついアクセルを踏みすぎてしまうことくらいだ。

卓越したスタビリティは、疲労軽減にもつながりロングドライブが楽しくなる!

 今回のスバル・シンメトリカルAWDの試乗会ではスタビリティはセイフティーであるということ再確認できた。高いスタビリティを確保していれば、安心にそして安全に走行できる。
 例えば土砂降りの雨の高速道路。路面状況が悪ければ悪いほど、ドライバーは緊張感を強めていく。長い距離を走るのであればあるほど、ドライバーの疲れは蓄積されていくだろう。そんなとき、スバルのAWDなら高いトラクション性能が安心となり、ドライバーの疲れを軽減させてくれる。心の余裕は安全にもつながる。目的地が遠ければ遠いほど、そして路面状況が悪ければ悪いほどスバルのAWDの真価が発揮されるのだろう。
 もちろん、それはVDC装備のクルマであることも前提だ。

スバル インプレッサSTI走り
スバル インプレッサSTI走り
スバル インプレッサSTI走り