低燃費と2.4リッター並みのハイパワー!?
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直噴ターボディーゼルの技術を応用
フォルクスワーゲン(以下VW)では、近年のガソリンの高騰化やCO2削減等の環境問題対策として求められる低燃費エンジンの開発にあたり、様々なプロジェクトを行なっている。その中で、最も急務である既存ガソリンエンジンの改善について、まずエンジン排気量をダウンサイジングする手法が取られた。低排気量化により摩擦損失が低下、効率が向上することで単位あたりの燃料消費量は削減でき、さらに軽量化も図れ燃費に寄与する、という算段だ。
しかしその際に大きな課題となるパワーダウンによる性能低下を回避すべく、VWのTDIディーゼルエンジンで成功した直噴+ターボチャージャーという理想的な組み合わせを応用することにした。エンジン燃焼に必要な空気の導入量をターボチャージャーにより高め、直噴技術でより高効率化を図ったのだ。
そしてさらなる効率化を計るべく、機械式スーパーチャージャー(以下S/C)と組み合わせることで、ターボエンジンの弱点である低速域のトルク不足を補ったのだという。
そうして生まれたのが、新開発「TSIエンジン」だ。
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2つの過給機の連携に最大の注力
ターボチャージャーとS/Cを組み合わせるという手法自体は、決して新しいものではない。全域でレスポンスの良い元気なエンジン特性から、80年代のWRC(世界ラリー選手権)に参戦するグループBラリーカーで採用されているし、日本でも日産のコンパクトカー「マーチ」(初代)が『スーパーターボ』という名で1リッターツインチャージドエンジンを市販している例もある。
とはいえ、TSIエンジンが目指すのは競技専用車への搭載ではない。燃費や環境性能が低下してしまっては本末転倒。2ツの過給機の連携・高効率化に最も配慮が配られたようだ。
先に記したように、ターボには低回転域におけるトルク不足という欠点がある。それに対しS/Cは、エンジン動力により直接駆動させるため必ずしも効率的ではない点が劣る。しかも高回転域ではエンジンのパワーを大幅に消費してしまうのだ。それらのデメリット面を取り除くことが、TSIエンジン最大の特長といえる。
そのためVWでは、S/Cを低回転域における過給に限定。吸気はS/Cにまず加圧され、その下流にターボを配置し2段階の過給を行なう手法を取った。まず1500回転でS/Cに最大加給圧2.5バールに達する高い過給圧を実現させる。
2400回転からはコントロールユニットによる電磁クラッチ切り離し制御を加えつつ、適宜S/Cの加給を行なうことで切れ間のない加速感を維持しつつ、3500回転から上はターボのみによる単独加給とした。
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直噴化がもたらしたメリットとは
過給機付きエンジンでは、通常はノッキングを防ぐため圧縮比は低く設定されている。これについてもVWでは、燃料噴射に直噴技術「FSI」を導入し熱効率を向上。ノッキングを発生させにくくすることで、圧縮比9.7まで高めることに成功した。低回転域のトルク不足も補い、燃費にも貢献することができたという。
この直噴エンジンとツインチャージャーの高度な組み合わせで生まれたTSIエンジンが、結果として市販車として世界初という快挙を生んだのだ。
先行発売されている欧州では「’06インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」(英)の『Best New Engine』に代表される各賞を受賞するなど、ゴルフGT TSIのTSIエンジンは既に高い評価を得ている。
驚きの高性能
さて気になる性能だが、最高出力170ps(125kW)/6000rpm、最大トルク24.5kg-m(240N・m)/1500-4750rpmと、圧倒的な高出力、高トルクを発揮する。これは、自然給気エンジンでは2.4リッタークラスの性能に匹敵するとVWでは話す。また最高速度では218km/h、0−100km/h加速は7.7秒をマークする。ちなみにこれは、ゴルフの2.0リッターFSIエンジン車(6速AT)の0−100km/h加速9.5秒を大幅に凌ぎ、「GTI」(DSG)の6.9秒に迫るハイパフォーマンスを誇るという(※数値はドイツ仕様・VW調べ)。
一方で燃費についても、ゴルフ史上最高の数値をたたき出す。「GT TSI」の10.15モード燃費は、実に14.0km/Lをマークする。なお2.0リッター「GLi」は12.0km/L、1.6リッター車の「E」は12.8km/Lで、これらのモデルよりも好燃費なのだ。
GT TSIのシフトは、スポーツグレードGTIにも採用され人気の高い2ペダルシフト「DSG」。オートマチックとしても使用できるうえ、ダブルクラッチのギアボックスにより素早いマニュアルシフトも楽しめる。またその効率の高さにより、燃費性能にも寄与しているのだから素晴らしい。
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2.0GTの後継
GT名を名乗るように、「ゴルフGT TSI」は2.0リッターFSIエンジン搭載の「GT」の後継モデルとなり、ベーシックグレードである1.6リッター「E」、2.0リッター「GLi」の上位グレードに位置する。大型エアインテーク採用のフロントバンパー&スポイラーや前後のGTバッチを備えるいっぽう、装備も充実。パドルシフト付き3本スポークレザーステアリング、レザーシフトノブ、専用ファブリック地フロントスポーツシート、225/45R17タイヤ+17インチアルミホイールなどを標準装着する。ただし従来のGTにあったレザーシートパッケージの設定はGT TSIにはない。
価格は305.0万円(消費税込み)。VWでは、高度な制御装置を含む過給エンジンを搭載しながら旧GT比で3万円高と、価格上昇を最低限に抑えた戦略的プライスだという。
このGT TSIを皮切りに、今春にはゴルフトゥーランに140psのマイルドバージョンを出すほか、他のゴルフシリーズについても順次展開を進める。VWでは、TSIエンジンをゴルフクラスのガソリンエンジンにおける、将来の主力エンジンに位置付ける目論見だ。
( 写真/レポート:CORISM編集部 )
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代表グレード
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VW ゴルフ GT TSI
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ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
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4225x1760x1500mm
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車両重量[kg]
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1410kg
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総排気量[cc]
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1389cc
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エンジン
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直列4気筒DOHC(4バルブ)インタークーラー付きターボ+スーパーチャージャー
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最高出力[ps(kw)/rpm]
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170ps(125kW)/6000rpm
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最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
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24.5kg-m(240N・m)/1500-4750rpm
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ミッション
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6速DSG
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10・15モード燃焼[km/l]
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14.0km/L
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定員[人]
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5人
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消費税込み価格[万円]
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305.0万円
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発売日
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2007年2月6日
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写真/レポート
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徳田 透(CORISM編集部)
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