M3譲りのパワーユニットで独自の世界を
M3の3.2リッターエンジンを移植されたMクーペは、M3より軽くホイールベースも短いことから走りのパフォーマンスはM3を上回っているかもしれない。
高回転型エンジンではあるが低回転域でも充分なトルクがあり、クラッチペダルをゆっくり戻すだけで楽に走り始める。そこからアクセルペダルを踏み込めば踏み込み量に応じて力強く加速するから、免許を取ったばかりのドライバーでも楽に扱える。しかしアクセルペダルを床まで踏み込んでタコメーターをイエローゾーン近くまでエンジン回転を上げて走ろうとしたら、熟練したドライビングテクニックを要求する。3.2リッターのトルクとパワーを使い切るのは容易ではない。しかしそれは危ないという意味ではない。アクセルペダルの踏み込みに従ったトルクの出方だし、ハンドリング性能もグリップのいいタイヤを造り込まれたボディとサスペンションでうまく使いこなせるからだ。セオリー通りの走りをすれば、Mクーペはよく躾けられた馬のように、ドライバーの言うことを素直に聞いてくれるから扱いやすい。
M専用に設計される強化ブレーキを採用
ブレーキはMモデルに共通の強化型である。鉄のディスク面とアルミのハブの部分がピンで連結されたコンパウンドタイプで、熱でディスクローターが膨張しても振動が起きにくくなっている。片側ピストンのフローティングタイプであるがこれには理由がある。対向ピストンにすると両サイドをつなぐブリッジを厚くしなくてはならなくなり、ローター径を大きくできないというデメリットがあるからだ。ハブとタイヤの位置関係のジオメトリーにも影響するし、ホイールの軽量化なども考慮してこのタイプを使っているのである。