ヨーロッパの秀抜なディーゼルがついに日本へ
メルセデス・ベンツのEクラスはラインナップの大幅な見直しを実施したが、中でも注目されるのはディーゼルエンジンを搭載したE320CDIだ。現在日本ではディーゼルエンジンを搭載した乗用車は1台もラインナップされていないが、その日本市場にあえて投入するモデルだ。環境のためにはディーゼルが重要な役割を果たすという確信と、優れたディーゼルエンジンを開発した自信とを表明したものと思っていいだろう。
ヨーロッパでは地球温暖化のためには燃費効率に優れたディーゼルエンジンが良いという理性的な反応や、燃費の良さからくる経済性への着目、さらにはガソリンエンジンよりも高い実力を発揮してスポーティであることなどを理由にディーゼル車が選ばれている。
ヨーロッパ17カ国では販売される乗用車のほぼ半分がディーゼル車で占められており、メルセデス・ベンツのラインナップの販売構成を見てもちょうど50%くらいがディーゼル車、Eクラスに限ってみればタクシーで使われることも多いため70%という高いディーゼル比率となっている。ヨーロッパでこれだけ売れているのに、日本でゼロということはないと考えるのはごく自然である。
現在のディーゼルエンジンはかつてのイメージとは全く違うものに仕上がっている。従来は騒音や振動が大きく、アクセルレスポンスが鈍く、黒煙を吐いて汚いクルマというイメージが強かったが、今のディーゼルはクリーンな排気ガスを出して黒煙を吐き出したりせず、振動や騒音は室内にいる限りではガソリン車と変わらない水準にあり、ガソリン車以上にパワフルな実力を持っている。
メルセデスのV6ディーゼルは物凄いゾ!
今回試乗したE320CDIも、カタログデータを見るとすごい。V型6気筒3.0Lのコモンレールディーゼル+インタークーラー付きターボという仕様により、155kW/4000rpm、540N・m/1600〜2400rpmという性能を発揮する。155kWのパワーは200psを超えるものでガソリンの3.0Lエンジンに相当するくらいの実力だ。また540N・mというトルクはガソリンならV型8気筒5.5Lエンジン並みの実力である。しかもこのトルクをわずか1600回転で発生するのだからスゴイ。
運転席に座ってエンジンを始動しても、コモンレールディーゼルの良さや騒音対策がしっかりなされているため、室内で座っている限りはディーゼル車であることが分からないくらいの騒音しかない。車外にいると高圧で噴射するコモンレールディーゼルのためにやや大きなアイドリング音を感じるが、室内は本当に静かだ。これは停車時や低速だけでなく高速時でも同じこと。ディーゼル車は回転数が抑えられるため、高速で走っているときもガソリン車より静かなのだ。
アクセルレスポンスも上々だ。発進時に一時的にディーゼルと感じさせられる瞬間があるが、走り出すともうディーゼルだかガソリンだか分からないような走りを示す。というか、トルクが太いのでアクセルを大きく踏み込まなくてもグイグイと押し出していくような走りを見せる。低回転域では特に、ガソリン車とは違った次元の走りとなる。タコメーターの針を見たときに回転の低さでディーゼルであることを改めて認識させられる。
トルクに余裕があるのでトランスミッションは7Gトロニックでなくても良いくらいだが、段数の多い7速ATだと一段と滑らかな走りが得られる。高速走行をしないと7速まで使わずに走れてしまうことも多いが、変速ショックの小ささやスムーズさは上々だ。
今回は燃費を測定するほどの距離を走れなかったが、10・15モード燃費にすると11km/L台の燃費が得られ、高速では15km/L前後の燃費になるとのこと。これだけ良く走って燃費が良いなら、ディーゼルという選択肢も十分にありだと思う。
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価格はちょっと高いけど……
価格は840万円で、残念ながら相当に距離を走るユーザーでないと燃費で車両価格の高さ分を取り戻すことはできないが、納得できる価格水準といえるだろう。
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代表グレード
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E320 CDI
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ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
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4850×1820×1465mm
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車両重量[kg]
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1770kg
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総排気量[cc]
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2986cc (ディーゼルターボ)
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最高出力[ps(kw)/rpm]
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211ps(155kw)/4000rpm
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最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
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55.1kg・m(540N・m)/1600rpm
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ミッション
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7Gトロニック
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定員[人]
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5人
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税込価格[万円]
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840万円
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発売日
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2006/08
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レポート
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松下 宏
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写真
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佐藤 靖彦
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