左:アラン・ムラーリー氏/右:ビル・フォード氏

左:アラン・ムラーリー氏/右:ビル・フォード氏

 

ビル・フォードは会長に

 フォード・モーター・カンパニーは、アラン・ムラーリーを社長兼最高経営責任者(CEO)に選出したと発表した。ムラーリーはまた、取締役会メンバーにも選出された。ビル・フォードは引き続き、会長職に留まるとのこと。

 ビル・フォードは、「今年私が戦略的優先事項と考えているものは3つあり、その中の1つがフォードのリーダーシップの維持だ。幸運にも、すでに優れたリーダーたちが世界中で当社の経営にあたっているが、業績の大幅改善のためには、我々が直面しているようなさまざまな課題を解決し、しかも大規模にビジネスを展開しているメーカーの中で、その手腕を発揮できるエグゼクティブを必要としていた。ボーイング社の民間航空機部門の黒字転換を果たしたアラン・ムラーリーがフォードの社長兼CEOに就任するという発表をすることができて、とても嬉しく思っている。」とコメントした。
 また、「彼は顧客満足、製造、サプライヤー関係、労使関係などの分野で豊富な経験を持っているが、こういった経験はフォードが直面している課題の解決に生かされるだろう。また彼のパーソナリティやチーム・ビルディングのスキルは、フォードを正しい方向に導いてくれる。ムラーリーは、フォードのトーラス開発の成功から多くのことを学び、ボーイング社で革命的なボーイング777型機の開発を実現させた。この開発時の経験はジェームズ・P・ルイス氏著「Working Together」という本に詳述されているが、ムラーリーがフォードから学び、ボーイング社で発展させた方針は他の事業分野にも応用できる。ボーイング社が過去数年間にわたって直面していた課題とフォードが現在直面している課題とは明らかに共通点がある。マーク・フィールズとWay Forwardプランのプロジェクト・チームが遂行しているビジネス・プランをムラーリーがさらに加速させてくれると期待している。彼は、2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件後、当時のボーイング社は問題に直面し、熟考されたプランと実行力をもって全力で立ち向かい、道を切り開くとはどういうことかを経験している。また、長期的な商品サイクルや燃料価格変動への対応、転換期に下す難しい判断なども熟知している」と述べている。

 この度、社長兼CEOに選出されたアラン・ムラーリー(61歳)は、ボーイング社に37年間勤務し、同社ではエグゼクティブ・バイス・プレジデントを務めていた。ボーイング社における前職は、1994年に民間航空機開発担当シニア・バイス・プレジデントに就任し、航空機開発、飛行テスト、証明取得、技術に関する政府との連絡業務などを担当、1997年2月にはシニア・バイス・プレジデントと情報、宇宙・防衛グループ社長に就任し、ボーイング社の防衛・宇宙・政府関連事業を統括したとのこと。
 1998年9月には民間航空機部門社長、また2001年3月からはボーイング社の民間航空機部門社長兼最高経営責任者(CEO)も務め、民間航空機プログラムおよび関連事業のすべての活動を統括した。2005年には新規受注および販売額としては過去最高の226億ドル超を達成している。

アラン・ムラーリー氏

 ムラーリーは、「多くの偉大な友人と楽しい思い出があるボーイング社以外の仕事に魅力を感じた唯一の会社は、フォード・モーター・カンパニーだ。現在再建を進めているフォードでビル・フォードと一緒に仕事ができるのをとても楽しみにしている。またフォードの経営チームとともに働けることにも楽しみだ。私はチームワークを非常に重視しており、生産性の高い経営活動をともに展開できると期待している。私がボーイング社の民間航空機開発に従事していたときに直面した課題は、今、フォードが直面している課題と共通点が多い。フォードから学んだことをボーイング社で活用できたが、その逆もできると思っている。フォードの事業基盤は堅固で、今後も発展させていけると確信している。革新、新市場の創出、消費者の価値観を具現化する象徴的なクルマの開発など、フォードが築いてきた伝統は、私たちが将来に向けて前進していくうえで重要なアドバンテージとなる」とコメントしている。

 ムラーリーは、ワシントン・コンペティティブネス・カウンシルの共同議長のほか、NASA、ワシントン大学、カンザス大学、マサチューセッツ工科大学の諮問委員会メンバー、米空軍科学諮問委員会メンバーを務めている。また、米国技術アカデミー、英国王立技術アカデミーのメンバーでもあるという。
 また、ムラーリーはカンザス大学で航空宇宙工学の学士号と修士号を取得したほか、マサチューセッツ工科大学で、1982年アルフレッド・P・スローン特待生としてマネージメントの修士号を取得したとのこと。

 ビル・フォード(49歳)は1988年に取締役会メンバーに就任し同年9月に会長に選出され、1999年1月1日に会長職に就いた。取締役会内の財務委員会メンバー、および環境・企業理念委員会の委員長も兼任している。2001年10月30日には最高経営責任者(CEO)も兼務していた。
 2005年までの3年間連続でフォードを黒字に導いたビル・フォードは、「私はアラン・ムラーリーと協力してグローバルな戦略的課題に取り組んでいくことが楽しみだ。私はどこにも行かない。会長として引き続きフォードを積極的に主導していく。毎日、会社で働き、フォードのために将来を確立できるまで休むことはない」と全社員に向けた電子メールの中で述べているとのこと。