ライター紹介

モータージャーナリスト

こもだ きよし 氏

日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)、JAF交通安全委員会委員、セーフティドライビング・インストラクター・アカデミー会長、警察庁運転免許制度に関する懇談会委員、BMWドライバー・トレーニング・チーフインストラクターなど、多数の肩書きをもつ。しかし、実は単純にクルマを運転すのが大好きというモータージャーナリスト。そのため試乗記などは、いかにちゃんと楽しく走れるかがテーマ。走りに関して超一級の分析力をもつ。

軽量ボディにモンスターエンジンで強烈な加速

 BMW M社が創った5リッターV10は最大トルク520Nm/6100rpm、最高出力373kW(507ps)/7750rpmを発揮する。Mモデルには、過給器を使わないで、高回転でパワーを引き出すというフィロソフィーがある。5リッターという大排気量にもかかわらず、このV10もその原則に則って創られている。

 1820kgという車重に507psのエンジンなので、なんとレーシングカー並みの3.59kg/psというパワー・ウエイトレシオを実現している。
 これで低重心と軽量化、さらに前後のオーバーハングのイナーシャを軽くするカーボンの採用により、M6はワインディングロードを2回り小さなクルマのように軽快に走ることができる。この点がM5とは異なるM6の走りに徹したことによる特徴だろう。M3の取り回しの良さに507psの加速力が備わったという強烈なクルマだ。

状況に応じてパワーモードを選べる知能派

 エンジンを掛けただけだと400psである。通常の市街地走行ならこの方が走りやすい。しかし高速道路やワインディングロードに行ったときにはPOWERスイッチを押して507psにするといい。3000rpmくらいの中回転域からモリモリという力を感じ、5000rpm以上の高回転域になるとパンチがぜんぜん違ってくる。
 
 音も違う。いかにも力が出てそうな音になり、5000から8000rpmまでは去年までのF1のオンボード映像のときに聞こえるクォーンという音になる。
残念ながら日本では試せないが507psではあっという間に270km/hを出すことができる。エアロダイナミクスの良さで200km/hを越えてからの安定性の高さが光る。

モード選択可能な足回りで、奥の深い乗り心地

 サスペンションはEDCで硬さを変えられる。コンフォートでも速度によって硬くなるから充分。ワインディングでもノーマルでいける。一番ハードに固定したいときだけランプが2個点灯するスポーツにすればいい。

 M6はこれでもかと言わんばかりに、奥の深いところまでドライバーの欲求を満たしてくれる究極の1台だ。

代表グレード M6
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4870×1855×1370mm
車両重量[kg]1820kg
総排気量[cc]4999cc
最高出力[ps(kw)/rpm]507ps(373kw)/7750rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]53.0kg-m(520N・m)/6100rpm
ミッション7速SMG Drivelogic
定員[人]4人
税込価格[万円]1,585万円
レポートこもだ きよし
写真佐藤 靖彦

NAエンジンにこだわるのが "M" 流。V10エンジンは独特なフィーリングが魅力。パワーモードで大人し目にしても400馬力。これで十分に速いが、ハイパワーモードでは507馬力にもなり、パワーウェイトレシオはレーシングカー級になる。