911正統派モデルの風格漂うクルマ
今回乗ったモデルはカレラSの6速マニュアルトランスミッションモデル。997モデルもデビューから時間が経ち、伝統を受け継ぐスタイルは、デビュー当時は少しアンバランスな印象を持ったが、996モデルと改めて比較すると現代のスポーツカーとして確実に一世代進化し、ケイマンSが弟分として名乗りを上げた現在は、911正統モデルとしての風格さえ感じられる。

心地よい存在感のあるエンジン音が運転の楽しさを引き立てる
年々ボディが肥大化していくライバルとは違ってカレラSのボディは大きくなったとはいえ相変わらずコンパクトで3800cc,355psのエンジンの割には車重も1460kgと軽量。軽いドアを開け、張りのある革シートに座り、シートベルト締め上げ、ブレーキを踏みながら、左手でイグニッションを回すと、いつものポルシェサウンドが後方から聞こえてくる。少し遠くから、しかし存在感のあるエンジン音が響いてくるのが911の良さ。ミッドシップの様に頭の近くからエンジン音が聞こえてくると、気持ちが焦り、ゆっくり運転を楽しむ事が出来ない。勿論、ミッドシップの独特の気分を高揚させる演出は嫌いでないが、911のゆったりした大らかな気持ちで運転を楽しむには、遠からず近すぎないボクサー・エンジン音がとても心地よい。

クルマとの一体感がたまらない!!
適度な重さを持ったクラッチを踏み、1速にギヤを入れ、ゆっくりクラッチペダルをもどすと車は滑らかに発進、2000回転でシフトアップをして法定速度で巡航。この低速域でさえ、クルマと自分が一つになった様な一体感を感じる。
「カレラSって、こんなにいいの!」
従来の996モデルのクラッチは軽すぎ、シフト・フィーリングも誉められたものでは無かったが、この997モデルはその違和感が消え、純粋にシフトを楽しむ事が出来きる。

どんな道でも快適さは変わらない!!
郊外に出てスピードを上げると、フロントの接地感も996モデルより大きく進化し、極めてスタビリティが高く、ここまで出来が良いとカレラ4が不必要だと感じてしまう。また911の美点であるアクセル・コントロールも健在で、自信を持ってコーナリングを楽しめる。見通しの良い道で強くアクセルペダルを踏むと、スムーズに、しかも力強く頂上を目指して後方よりエンジンは存在感が急激に増す。
「速い!速すぎる!!」
高速域になっても軽くステアリングに手を添えているだけで、路面変化の影響は受けにくくリラックスして運転出来る。しかもミリ単位で意のままに反応するアクセル、ステアリングは運転の楽しさを教えてくれる。ここまで良いとオートマチック(5速ティプトロニックS)で乗るには勿体ない。是非マニュアルトランスミッションを選んでポルシェライフを楽しんで欲しい。

一度は乗ってみる価値のあるクルマ
軟弱になったとの批判を受ける事もある997モデルですが、扱いやすさや快適性を増しながら、スポーツカーらしい速さ、楽しさはそのままで受け継ぎ、他のモデルには無い911ワールドの新世代スポーツカー。欠点は1273万円のプライスであるが、その価格の価値は充分にあり一度は所有したいクルマである。