今や乗用車、そして小型トラック(日本車)でも主流になりつつあるコモンレール式ディーゼルはボッシュが特許を持つ技術だ。

軽油を送り込むポンプによって、最大1800気圧の圧力がかけられる。従来の直噴などとは比べモノにならず、コモンレール式の特徴のひとつ。

コモンレールとは「共通した部屋」という意味。ポンプから高圧を維持してこの棒状の部分(ここがコモンレール)に入る。ここから各インジェクターに送られるのだが、5回ほどに分けて噴射される。精度の高いコンピュータ制御とインジェクターの素早い応答性が重要となる。

触媒も当然装着されているのだが、始動時にできるだけ素早く効果を発揮させるために、エキゾースト直後に装着されている。

高効率実現には、ターボの装着は不可欠。小型のミニでも、ターボが搭載されている。

ヨーロッパでは主流のディーゼルの乗用車

 最近、ディーゼル車に対する注目が日本でも高まりつつある。日本では石原都知事が、ディーゼルエンジンが排出した煤を入れたペットボトルを振って見せ、汚い排出ガスを出すエンジンというイメージが強かったが、ここにきて見直す動きが広がってきた。
ヨーロッパでは従来から熱効率が高い分だけ二酸化炭素の発生量が少なく、地球温暖化を考えると環境に優しいエンジンとして評価されてきた。さらに最近は、コモンレール式ディーゼルターボの導入により、動力性能が高められたほか、静粛性や環境性能が一段と高いものになっていた。
 コモンレール式ディーゼルターボでは、1600〜1800気圧という高圧で燃料を噴射したり、1回転ごとに4〜5回も断続して燃料を噴射・爆発させることで、静粛性や環境性能を高めている。
熱効率の良さが燃費の良さにつながるほか、各国で軽油がガソリンよりも安く売られていることも含めた経済性の高さも人気の理由で、ヨーロッパでは売れる乗用車の半分くらいがディーゼル車に占められている。フランスなど南ヨーロッパでは50%を大きく超える比率でディーゼル車が売れているのが最近の状況だ。
日本のメーカー各社もヨーロッパではディーゼル車をラインナップして販売しており、環境性能の高いディーゼル車の開発に躍起になっている。

ディーゼルエンジンを搭載した各車の試乗記

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日本でも変化の兆し。今後は主流になる!?

 日本では今年から、メルセデス・ベンツがディーゼル乗用車の販売を開始することが明らかにされているが、ホンダも環境性能の高いディーゼルエンジンを開発して日本に投入することを表明するなど、ディーゼル車に対するイメージが段々に変わりつつある。
最終的には、ディーゼル車に対する次の排気ガス規制がどうなるかが大きな問題だが、メルセデス・ベンツはそれをクリアする自信があるから今からディーゼル車を販売していくとの姿勢だ。
 最新のディーゼルエンジン搭載車は、「遅い、汚い、うるさい」から、「パワフル、クリーン、静か、エコノミー」など、従来に比べて格段に良くなっている。ユーザーのイメージは簡単には変わらないし、ヨーロッパと違って小さなクルマでもAT車が主流の日本では、簡単にディーゼル車の比率が増えるかどうか難しい面もあるが、ガソリンもディーゼルもそれぞれが高い性能を備えることで、トータルで環境に優しいクルマを作っていくことが大切だ。

REPORT
松下宏
PHOTO
佐藤靖彦
構成
近藤暁史