この記事の目次 CONTENTS
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1.エスティマはミニバン界の異端児?
2.新型エスティマの「立ち位置」とは?
3.使い勝手が大幅に向上
4.エスティマの室内、インテリア
5.サイド&ワイドビューモニターの使い勝手は?
6.2.4リッターでも走りは十分!
7.乗り心地には感心だが、シートはアレンジ重視?
8.気になる燃費は!?
9.エスティマのエクステリア
10.注目を集める安全装備、VSCの装備なるか?
11.新型エスティマのスペック情報

ライター紹介

221616 編集部

世の中の自動車ニュースとは一味違う視点でスローニュースを発信。編集部員はクルマ初心者からクルマをこよなく愛するマニアまで幅広いメンバーで構成。全国のガリバーで売れている中古車や車のスタッフレポートなど、生の情報をお届け中。

1.エスティマはミニバン界の異端児?

3列シートのミニバンの特長とは何だろう。それはセダン車では求めることも出来ない室内空間の広さや3列シート多人数乗車といった「効率の高さ」だ。
それゆえの背の高さであり、箱型のボディスタイルであったりする。

しかし、ミニバン界の人気者「エスティマ」は、必ずしも「効率の高さ」ばかりを追い求めているワケではない。
むしろ「未来的な曲面スタイリング」に「適度なスペース」という、Lクラスミニバンとしては異端なコンセプトをウリとしているところがある。
しかも直接対抗する同コンセプトのミニバンは今だ現れず、長いあいだ孤高の存在となっているのだ。

他のミニバンにないコンセプトでも販売好調

ただそのコンセプトが間違いではなかったことは、新型エスティマが先代モデル同様にバカ売れしている現状からも、良く理解出来るだろう。いわば「ミニバンらしくない」ミニバン。
その独自の立ち位置とは、一体何処にあるのだろうか。

2.新型エスティマの「立ち位置」とは?

新型エスティマの3列目シートのスペースは、はっきり言ってさほど広くはない。椅子自体もやや小ぶりかつ薄い。
もちろんオトナが2名乗車するにはまあ問題ない広さではあるが、新型になって随分と3列目シートを割り切って設計したように見受けられる。

エスティマユーザーは多人数乗車性能よりもデザイン重視

トヨタは、先代エスティマユーザーの多くが3列目の席を普段あまり使っていない現状を、良く知っているのだろう。
ユーザーにとってのエスティマは、『未来的なカッコイイスタイリングのスペースワゴン』。
3列シートは「あれば便利」という付加価値の一つでしかないのだ。

だからトヨタも、多人数乗車性能よりスペースを有効活用することのほうに注力を傾けている。
そう考えれば、エスティマというクルマの立ち位置が良く見えてくるというワケだ。
「3列目が狭い!」と声高に叫ぶのは的外れな論評なのかもしれない。

一方で箱型ボディで車内の広いクルマも用意したトヨタ

一方で、3列目を常時使用するユーザー向けに、箱型ボディでより車内の広いアルファードやノア・ヴォクシーをしっかり用意している。
ぬかりのなさも、サスガはトヨタだ。

3.使い勝手が大幅に向上

新型エスティマの3列目シートには、座席を手軽にポンと折り畳みし、荷室を拡大出来る機能がついている。
先代では座面先端を「く」の字状に跳ね上げ、さらに2列目までスライドさせて荷室スペースの拡大を図っていた。
しかし、左右別々にスライドすることは出来ないうえ、さほど広いスペースが生まれるワケでもなかった。

新型エスティマは実用性のあるアレンジができる

新型は、片側だけ畳んでスペースを生み出すことが可能だ。
また、先代同様に、2列目は座面跳ね上げタイプのスライドシートになっているため、こちらを前席側にスライドすればかなりの広大なスペースが誕生する。
8名乗りのタイプの場合6対4に、7名乗りタイプの場合は左右で個別にスライドさせることも出来るなど、実用性本意のアレンジも出来る。

例えば、自転車通勤・通学の家族を駅まで迎えに行った時。ホームセンターで長尺の家具を衝動買いした時。
日々の生活に「時々」発生する積載シーンは、先代モデルでは対応しづらかった。
しかし新型エスティマなら、そんな要件もいともカンタンに対応出来る。「新しいエスティマにして良かったね」そう言っているユーザーの声が聞こえてきそうだ。

床下収納の活用で広大な収納スペースを確保

さらに、収納スペースはシートを収めない時には広大なフロアトランクとしても活用出来る。
例えば、この中に巨大なゴルフバッグを積むことだってできる。フタを外せば縦にかさばるモノも積めるのだ。

ちなみに試乗車は手動収納だったが、グレードによっては電動格納のオプション設定もある。
とはいえ手動でも十分に素早くアレンジ出来る(むしろ電動より早い)から、あえて必要な装備とは思えなかった。

4.エスティマの室内、インテリア

センターメーターレイアウトは継承されたが、曲面を多用した先代モデルとは一転した印象がある。
新型エスティマのインパネデザインは、シンプルな直線基調となった。実際に目の当たりにすると、その品質感の高さに圧倒される!

着座位置が思いのほか低い2列目シート。足を投げ出して座ったほうが居心地がよい。
3点式シートベルトは、シート自体に定員分内蔵されている。シートスライド時でも安全に座ることが出来るのは、評価すべきポイントだろう。

3列目シートの背もたれはやや短めだ。写真はヘッドレストを下げた状態。
乗車時はこれを上げないと、背中に違和感が残る。あえて違和感を残すことで、正しくヘッドレストを使ってもらおうというカシコイ手法なのだ。

3列目シートが出されている状態でも、十分に広いラゲッジスペース。
さらに、この下には、深く広いデッキスペースが隠されている。

操作は極めて簡単。しかも軽々行なえるから、これなら女性ユーザーでも気軽に出し入れ出来るだろう。

カバーをかければ収納完了!
さらに2列目シートをスライドすればさらに広大なスペースが広がるのだ。コレは便利!

5.サイド&ワイドビューモニターの使い勝手は?

まずは、ボディ幅を1800mm以内に収めてきたことにホッとひと安心。
やはりそれ以上大きいと、駐車するスペースで苦労する。

ボディが大きいため、やや視界に影響がある

とはいえ、新型もやはり「デカイ」。
最近出来たような大型ショッピングセンターの駐車場では問題なさそうだが、駐車場が狭い店もまだまだ多い。
しかも、フロントの見切りはスタイリッシュなボディゆえ、ちょっとツライ。
試乗車には、サイドモニターとフロントのワイドビューモニターがオプション装着されていたが、走り出すと自動的に消えてしまうのであまり有効ではない。

例えば日産のサイドブラインドモニターなどは、走りながらでも使える。
その上、左前の見え方も、より分かりやすかったように記憶している。

6.2.4リッターでも走りは十分!

残念ながら『エスティマユーザーの平均乗車人数』というデータは持ち合わせていない。おそらく多くのユーザーは、子供を含め、2〜5名乗車というのが一般的だろう。
しかし、今回はあえて『ミニバンの効率性能』という点についてもチェックしてみた。

多少の騒音に耐えられれば追い越しも可能

興味の中心は、果たして「直4 2.4リッターのエンジンで7名乗車に耐えうる」のかどうか。

結論から言えば「コレで十分」だ。

本格的な山道は試す機会がなかったのでその点は微妙ではあるが、追い越し加速の雰囲気から推測して、そこそこ走れるフィーリングは感じられた。
3000回転以上回すと、途端に騒々しくなるのは他のトヨタ車同様だ。
しかし、重量の重いミニバンとCVTはマッチングが良いようで、7名乗車でも空いた高速道では流れに乗った走りが可能だった。
多少の騒音を気にしなければ、遅いクルマをパスするために追い越し車線の流れに乗ることだって十分に出来る。

3.5リッターはスピードが出やすいため要注意

以上から導き出される仮定は、上級グレードに積まれるV6 3.5リッターのパワーでは、相当の自制心がないと危ないかも、ということ。
乗員の大事な命を預かっているのはドライバー。定員が増すごとにその責任は重くなる。
速いからといって、くれぐれもムチャはしないよう。

7.乗り心地には感心だが、シートはアレンジ重視?

感心したのは乗り心地だ。
アエラスSは18インチを履くスポーティなグレード。乗り心地もハードなものと覚悟していたが、意外にも1〜3名乗車くらいでは極々安楽なモノ。
この状態で気持ちよくコーナリングを愉しもうものなら、2列目席の乗員はいっぺんにクルマ酔いしてしまうことになる。

むしろ7名乗車のほうがずっと車体が安定しており、もちろん足が底付きするようなこともなく乗り心地も良くなっていたのだ。
コレは同乗者も気付くくらい大きな変化だった。

シートのサポート性はいまひとつ

シートのサポート性はいまひとつだ。
先代アエラスSでは前席に専用のスポーツシートが装着されていたが、現行型では他モデルと共通のモノになっている。
特に8人乗り仕様の場合、後席はサポート性の低いシートとなり、これも乗員が体を安定させられない原因のひとつとなっている。

シートアレンジ時のフルフラット性能に気をとられ、本来のサポート性が下がるようでは本末転倒。
せめて2列目まではもうすこし良いシートをおごって欲しいものだ。

8.気になる燃費は!?

今回、およそ150kmのコースを、7名乗車と1名乗車のパターンでそれぞれ走ってみた。

埼玉県の岩槻インターから東北道を下り、佐野藤岡インターまでの約45kmの道のり。
3車線の真ん中を周囲の流れに乗って走り、時に追い越し車線に出て遅いクルマを追い越す、という感じだ。
その後は栃木県、群馬県、埼玉県と国道をひた走り、再び岩槻でゴールするコースだった。
エアコンは前席オートで常時つけていた。

同じクルマで別の日に計測したため、コースの混み具合や気候が異なる(※1名乗車時のほうが気温も高く交通量も多かったためエアコンの作動率は高かった)ため、あくまで参考値としてみて欲しい。

燃費比較の結果は…

  • 7名乗車 リッターあたり約8.9km/l
  • 1名乗車 リッターあたり9.4km/l

ほぼ全コースが平坦な関東平野内を走るコースだったこともあり、思いのほか違いが出ないことにびっくり。
山道の走りが加われば、大きく違いが出たかもしれない。
国土交通省審査値の10モード燃費では12.4km/lとなっているから、いずれにせよ十分に優秀な結果だった。

9.エスティマのエクステリア

エッジの立った大胆なキャラクターラインが特徴的だった先代に対し、上質な柔らかい面構成を特長とする新型のリアビュー。
先代のイメージを継承しつつ新鮮度も感じさせる、実に上手いスタイリングだ。

アエラスSにはついに18インチアルミホイールが採用された。
アエラス系のボリューム感あるエアロに大径ホイールはよく似合う。タイヤサイズは225/50R18だ。

新型エスティマの未来的フォルムをより強調する「アエラス」系専用のエアロパーツ。
「アエラス」系は先代ではダントツ人気のグレードだったが、おそらく新型でもその傾向は続くだろう。

10.注目を集める安全装備、VSCの装備なるか?

最近注目を集める「VSC」という装備をご存知だろうか。
メーカーによってESC、ESP、VDCなどと呼ばれるが、要は『横滑り防止装置』と呼ばれる安全装備のことだ。
滑りやすい路面やカーブで車体の横滑りを感知すると、4輪各々のブレーキやステアリングが制御され、事故の発生を未然に防いでくれる。
「アクティブセーフティ」(予防安全)と呼ばれる装備である。

VSCは3.5リッター車でのみ選択可能

最新鋭の新型エスティマは、残念ながら3.5リッター車のオプションでしか選ぶことが出来ない。
ミニバンは、セダン車やコンパクトカーに比べもともと車両の重量も重く、さらに多人数乗車となれば、万が一の時のダメージは非常に大きくなることが予想される。
VSCでより多くの命が助かる可能性がさらに高まるのなら、ぜひ2.4への設定、いやVSCがABSやエアバッグのように標準装備となることを期待したい。

11.新型エスティマのスペック情報

今回のテスト車両、エスティマ アエラスS 2.4(FF)のスペック情報は以下の通り。

ボディサイズ(全長×全幅×全高) 4795x1800x1745mm
車両重量 1720kg
総排気量 2362cc
最高出力 170ps(125kw)/6000rpm
最大トルク 22.8kg-m(224N・m)/4000rpm
ミッション Super CVT-i(自動無段変速機)
10・15モード燃焼 12.4km/l
定員 8名
税込価格 302.4万円
発売日 2006年1月16日