ライター紹介

モータージャーナリスト

片岡 英明 氏

学校の先生から自動車雑誌編集者経て、モータージャーナリストになったという異色の経歴を持つ。元教師ということもあり、分かりやすい評論に定評がある。さらに、クルマの細部まで見逃さない観察力はハンパではなく、徹底的に調べ上げてしまうほど。最新のクルマから、ヒストリックカーまで幅広い知識をもつ。

ライバルを圧倒するV6エンジン

 3代目エスティマは、車格と質感をワンランク高めて登場した。ホイールベースは50mm長くなり、全幅も1800mmに広げられている。今度のエスティマは、兄貴分のアルファードやエルグランド、エリシオンまでも直接のライバルとしているのだ。新世代の3.5リッターV型6気筒エンジン(2GR−FE型エンジン)を手に入れたこともあり、動力性能はライバルを圧倒した。ミニバン最強スペックは伊達じゃない。不用意にアクセルを踏み込むと、タイヤはグリップを失い、オプション設定のS−VSCが助け舟を出す。それくらいパワフルだ。

 ライバルと比べてボディは軽量だから加速の鋭さは推して知るべし、である。同じように3.5リッターV6エンジンを積むのがエルグランドだ。実用域のトルクが太く、発進加速は鋭いが、追い越し加速やトップエンドのパンチ力はエスティマに遠く及ばない。6速ATも滑らかにつながる。動力性能では差をつけられるが、静粛性に関してはアルファードが一歩リードする。また、フラットなトルク特性が功を奏し、乗車人数に関わらず性能の落ち込みが少ないのはエリシオンだ。スムースさもエスティマのV6エンジンに肉薄する。
 2.4リッターの2AZ−FE型4気筒エンジンも実力派だ。CVTの採用もあり、低回転からフラットなトルクを発生し、軽快にスピードを上げていく。ただし、加速時はエンジン音が高まる。また、音色もあまりよくない。ホンダのK24A型4気筒エンジンは滑らかさ、加速時の音色ともにエスティマの4気筒を凌いでいる。

最もスポーティなエスティマの走り。

 フットワークはエスティマがもっともスポーティだ。自然なロール感を身につけ、一体感のあるコーナリングを披露する。ボディ剛性は高いし、電動パワーステアリングも正確な操舵フィールだ。ただし、サスペンションを締め上げているため、乗り心地はちょっと硬めである。

 エルグランドのような大らかな乗り味は望めない。アルファードやエリシオンのように重厚な乗り味を手に入れながらハンドリングをスポーティ方向に味付けしたミニバンを好むユーザーも少なくないはずだ。

サードシートの居心地は今ひとつ。

 キャビンはセカンドシートまでなら特等席である。2列目のスーパーリラックスモードならロングドライブも苦ではない。

 だが、アルファードと比べるとサードシートの広さと居心地のよさは今一歩にとどまっている。また、エルグランドと比べても広さと快適性は物足りない。エスティマのサードシートはシートアレンジにこだわったため薄いし、着座位置も低くなっている。エルグランドはサードシートが分厚くて居心地がいい。アルファードは足を伸ばせるほどの広さだ。エリシオンはエスティマ並みの広さだが、全席フラットフロアで気持ちよく座れる。