何も変わらず大きく変わった二代目ロードスター
そのモデルサイクルは9年。一般的なクルマは4年に一度フルモデルチェンジを行うというのに、初代ロードスターは9年の長きにわたり、その製産が続けられた。なぜか?普遍的なパッケージングを持つライトウェイトスポーツは、何年経っても古さというものを感じさせなかったからである。そして、マツダの努力により、何度と無く小変更が行われ、特別仕様車&限定モデルが投入されたからである。
しかし、世界中のロードスターファンから次世代のロードスターを!という要求は確実に高まっていた。普遍的なパッケージングを持つライトウェイトスポーツの進化版を。その思いを新しいロードスターに落とし込む。
難しいことである。
過去、数えきれないほどクルマがモデルチェンジに失敗してきた。ユーザーであれ、ファンであれ、そして開発者であれ同じなのである。新しいクルマはそれまでのクルマより良いものであることを過度に期待してしまう。今までよりも速く、今までよりも快適に、今までよりも燃費を良く、今までよりも室内を広く、今までよりも・・・。その期待をすべてつぎ込み、それまでのモデルが持っていた良さを打ち消してしまうようなクルマを作ってしまうのである。
ロードスターも、その轍を踏んでしまうのか?ライトウェイトスポーツであるロードスターも大きく成長してしまうのか?でも、新しいロードスターも見てみたい・・・。
一体どうなってしまうのか?そんな不安と期待をみんなが抱えるなか、1997年10月に開催された東京モーターショーに新型ロードスターが登場したのである。
ライトウェイト2シーターオープンスポーツ。「面白いほど楽しめる。」というキャッチフレーズと共に登場した2代目ロードスターは、見た目だけが大きく変わっていた。初代モデルではアイキャッチとなっていたリトラクタブルヘッドライト。これをやめ、固定式ヘッドライトとしたのである。
めちゃくちゃ大きな変化だ。
しかし、これ以上の変化は見た目上にはなかった。
2265mmのホイールベース、3955mmの全長、1235mmの全高は初代と同じ。唯一、全幅だけが1680mmと5mmほど拡大した。そしてトレッドがフロントは+10mmで1415mmに、リアが+20mmで1420mmとなった。これは凄いことである。年々厳しくなっていく安全基準にあわせて自動車の車体は大きくなっていくのが普通であるのに、過去のモデルとほとんど同じディメンションを持って登場。それでいて、当然のように安全基準はクリアーしている新型車。ボディ剛性の強化をはかったり、エアバッグ等の安全装備を満載しているのに、旧型に比べて車両重量は10kgしか増えていないのである。変わらなかったボディサイズの陰には、大きく変わった軽量化されたパーツが使われているのである。ヘッドライトがリトラクタブルから固定式に変わったのも、実は軽量化のためだというのだから恐れ入るばかりだ。