ESP、VSC、VDC、VSA、DSC、VDIM、PSM、ASCというアルファベットの略称を聞いたことがあるだろう。いろいろな呼び方をされているが、大雑把に言えばみな同じ。自動車保険を掛けるときに割引になる「横滑り防止装置」のことである。
 
 なぜ各社で呼び名が異なるのかというと、それぞれがコンセプトを持って自社のクルマに合わせて作っていると主張しているからだ。それにしても消費者にとっては紛らわしいだけなので、これらのシステムをカーメーカーに供給しているサプライヤー(アドヴィックス、ボッシュ、コンチネンタルテーベス)が集まって「ESC」という呼び名に統一しようと動いているが、まだなかなか浸透しない。とりあえずここではESCと呼ぶことにする。

事故の確率が30%以上も低くなる可能性があるESC。それなのになぜ日本車の装着率は低いのか?

 ダイムラークライスラーの調査によると、ESC装着車は非装着車に比べて単独事故の確立が30%以上低くなるというデータがある。トヨタで調査してもやはり単独事故の確率が約35%低くなるという。また正面衝突も30%くらい減っているというデータがある。

 メルセデスベンツは1999年からESCを100%装着にしている。Aクラスのエルクテストによる横転事故が話題になった直後からだ。ヨーロッパでは100%装着になっているメーカーが多い。ドイツでは2002年に販売台数の51%がESC付きになっている。

 ところが日本では2003年は販売台数全体の5%を越えたくらいだ。トヨタで8%程度、日産に至っては1%以下だった。いまはもう少し上昇しているはずだが・・・。

ユーザーの安全より、クルマのコストが大事な自動車メーカー。全車標準装備を早急に願う!

 ABSやエアバッグが標準装着になったように、このESCも全車標準装着にして欲しいものだ。ユーザーが欲しがらないからといってオプション装着にしたりしているのが現状だ。車種によってはオプションでも装着できるグレードが限定されていたりする。ユーザーは知らないだけであってテストコースでESCの体験をしたユーザーは全員欲しがる。

 現在オプション装着した場合6万円ほどアップになるが、これを全車装着にしたら相当なコストダウンが期待でき、半分以下の価格で装着できるだろう。そうしたら自動車保険の割引によって数年で元が取れるから、もし1回も使わなかったとしても付いていた方が得になる。

 シートベルトがあるから、エアバッグがあるから、衝突安全ボディだからと自慢するが、これらはみなぶつかったときの安全装置である。クルマはまずぶつからないことが大事なはずだ。

 カーメーカーの商品企画に携わっている方、安全を担当している方に言っておきたい。アクティブセーフティを万全にしておいて、それでもぶつかってしまったときの安全性確保がパッシブセーフティだということを忘れているのではないだろうか?