レクサスIS350

【レクサスIS350】走り抜ける歓びを感じられる国産車が登場した by片岡英明

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ISのハンドリングは下手なスポーツカーなど寄せ付けないモノになっている。これにプレミアムセダンとしての質感が加わったら最高である。

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プレミアム性と共に操る楽しみをISに与えてくれるのがパドルシフトである。その変速スピードは従来のATを超えて、ギアチェンジが気持ちいいほど。

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ISが装着するタイヤは標準で17インチ、スポーツパッケージが18インチとなる。17インチタイヤを履くモデルは乗り心地にも粗さがない。

SPECIFICATIONS
車名:レクサスIS
グレード:350
型式:GSE20系
駆動方式:FR
全長:4575mm
全幅:1795mm
全高:1430mm
ホイールベース:2730mm
エンジン形式:V型6気筒DOHC
総排気量:3456cc
最高出力:318ps/6400rpm
最大トルク:38.7kg-m/4800rpm
トランスミッション:6速AT
サスペンション(F):
ダブルウイッシュボーン
サスペンション(R):
マルチリンク
価格:480万円(税込み)

北の大地で出会った  レクサスのエントリーモデル

ご存知のように『レクサス』は、トヨタの尺度を超えたプレミアムブランドとしての使命を帯びて誕生した。このレクサスの末っ子として送り出される、後輪駆動のハイクオリティ・スポーツセダンがISシリーズである。BMWニュー3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスと同じDセグメントに位置する4ドアセダンで、メカニズムやデザインなどにも日本らしい魅力を盛り込んだ。エンジンは2.5リッターと新設計の3.5リッターV型6気筒直噴DOHCを積む。ミッションは、パドルシフトを備えた6速ATを採用した。トヨタの士別テストコース(北海道)でステアリングを握ったのは、IS250とIS350のプロトタイプである。

パワーを楽しめる3.5リッターV6  ハンドリングを楽しめる2.5リッターV6

エクステリアはエレガントななかにスポーティ感覚を加味したデザインだ。躍動感あふれ、面の質感もうまく表現されている。ただし、サイドウインドウ後端の処理や跳ね上がったリアコンビランプのデザインは馴染みにくい。インテリアはオーソドックスなデザインだ。もう少し大人の演出、プレミアムムードがほしい気がする。LEDが発光する2眼メーターは見やすかった。シートは意外にも高めの着座ポイントである。だが、ドライバーズシートはサイズが大きく、ホールド性も良好だった。

3.5リッターV6直噴DOHCエンジンのハイライトは、世界で初めてデュアルインジェクターを採用したことだ。このエンジンは素性がいい。6気筒エンジンのなかでは五指に数えられる名機と断言できる。加速は豪快そのもの。鋭い高回転の伸びと力強いパンチ力を身につけ、ライバルを圧倒する加速を見せつけた。スペックは未公表だったが、300psオーバーの実力を秘めていることは間違いない。 ちなみに周回路では250km/hを超えるトップスピードをマークした。高回転での心地よいエンジンサウンドも魅力だ。2.5リッターのV6直噴エンジンも期待した以上の実力を秘めている。3.5リッターエンジンと比べるとパワフル感は薄いが、切れ味の鋭さは3.5リッターを凌ぐほどだった。6速ATは小気味よく変速するが、もう少し滑らかさがほしいところだ。

ハンドリングはアルテッツァの軽快なフィーリングを受け継いでいる。身のこなしは軽やかだ。ステアリングを切り込むと、俊敏に鼻先が向きを変える。クルマ全体の剛性はすこぶる高いし、フラットな路面では優れた接地フィールを見せつけた。17インチタイヤを履くモデルは乗り心地にも粗さがない。だが、回頭性はいいもののハイスピード領域での落ち着きは今一歩だ。操舵のリニアリティ、うねった路面での路面追従性などに課題を残している。

本当の市販モデルに乗ってみたい  完全に仕上がったレクサスが楽しみだ

スポーティな走りを披露するが、ワクワク感や感動はちょっと足りない。開発陣は9月の発売までにフットワークやハンドリングに磨きを掛ける、と言っているから今後の熟成と進化に期待が膨らむ。気になるのは販売価格だ。レクサスブランドを名乗るから、新車価格は400万円前後になるだろう。ちょっと高価に思えるが、BMW3シリーズなどの輸入車と比べれば買い得感は高い。また、中古車になっても魅力は色あせないはずだ。もう少し走りの質感が上がり、操る楽しさと感動が加われば、ボク個人としても食指を動かされるクルマになる。

達人プロフィール: 片岡英明
職業:モータージャーナリスト
学校の先生から自動車雑誌編集者経て、モータージャーナリストになったという異色の経歴を持つ。元教師ということもあり、分かりやすい評論に定評がある。さらに、クルマの細部まで見逃さない観察力はハンパではなく、徹底的に調べ上げてしまうほど。最新のクルマから、ヒ...