M6がスパルタンなクルマかと思って試乗すると肩透かしを食らうことがある。実際にボクがそうだった。スペイン南部にあるセビリアのホテルからサーキットに向かって出発したとき、あまりにも乗りやすく、快適なのに驚いた。
しかしこれにはちょっとしたカラクリがあった。それはエンジンパワーもシフトのつなぎ方もサスペンションの硬さも自在に選ぶことができるから、どんなセッティングで乗るかで印象が異なるのだ。まずエンジンパワーは400psと507psの選択ができる。SMGのシフトレバーの横にあるスイッチを押してランプが点けば507psだ。サスペンションはダンパーの硬さを選ぶことができる。EDCというスイッチを押すとランプが点く。一つ点いているときはノーマルでワインディングロードを走る程度までならこれで充分だ。
二つ点いている状態にすると一番ハードに固定される。これはサーキット走行など相当攻めた走りをするときにマッチする。ランプが点いていないときはコンフォートで、一番ソフトなセッティングになる。コンフォートでもノーマルでもクルマのスピード、横G、ハンドル角などを元にハード側に変化していくから、コンフォートでも意外と走れる。
クラッチのつなぎ方やDモードで走るときのエンジン回転の引っ張り具合を選べるドライブロジックを変えることができる。Dモードで5段階、Sモード(マニュアル)で6段階ある。これらの選択により快適なラグジュアリカーにもサーキットを疾走するスーパースポーツカーにも変身できるのだ。サーキットで走るときSモードでドライブロジックを6段目にするとシフトアップしたときにガンと背中を叩かれる感じのショックがあるほどになる。
でもドライブトレインのダイレクトなつながり感はクラッチペダルのない7速SMGでもサーキット走行を満喫させてくれる。DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)をキャンセルすると激しいドライビングではテールスライドを誘発するが、滑りはゆっくりでグリップ感も残っているのでコントロールはしやすい。M6は507psを扱いやすいレベルにまでボディとサスペンションを鍛えられたクルマだ。