タイヤ交換時期の目安。寿命について整備士が解説

タイヤ交換時期の目安。寿命について整備士が解説

タイヤ交換はもっとも分かりやすい、お金の掛かる車の消耗品のひとつです。
車に乗っている限り、いつかは交換しなければいけませんが、そのタイミングを判断するのは難しいです。
どれくらいをタイヤ交換時期の目安にすればよいのか、現役の整備士が解説します。

タイヤ交換時期の目安と見分けるチェックポイント

タイヤには大きく分けて以下の3つの種類があります。

  • ノーマルタイヤ(夏タイヤ・サマータイヤ)
  • スタッドレスタイヤ(冬タイヤ)
  • オールシーズンタイヤ

それぞれのタイヤの交換目安は以下の表のとおりです。

タイヤ交換時期早見表

タイヤの種類 年数 走行距離(※1) 履き替え時期(※2)
ノーマルタイヤ 3年〜 3万km〜 通年/4〜11月
スタッドレス 3年〜 1.5万km〜 12月〜3月
オールシーズンタイヤ 3年〜 2万km〜 通年

※1:交換目安年数・距離は平均的なものです。タイヤの種類や使用環境、車種によって大きく異なることをご理解ください。

※2:履き替え時期はあくまで目安です。お住まいの地域やその年の気候に合わせて、余裕を持ったスケジュールでの履き替えをおすすめします。

タイヤの寿命を見分けるチェックポイント

タイヤの寿命を見分けるチェックポイントをまとめました。

  • タイヤ溝の残量
    →ノーマルタイヤはスリップサイン、スタッドレス・オールシーズンタイヤはプラットホームの残量が見分けるポイントです。
  • ひび割れ
  • 製造年月日
  • 損傷跡の有無

これら4つのチェックポイントを、どのように確認すればよいのかは後述します。

100円を使った溝の確認はスタッドレスタイヤの交換目安に有効

100円玉を使ったスタッドレスタイヤの溝の深さの確認

ネット検索してみると、100円玉を使用した残り溝の簡単チェックをしている画像が出てきます。
これは、100円玉の「1」の数字を下にした時に「1」の下端部が硬貨の端からちょうど5mmということを活かしたチェック方法で、スタッドレスタイヤの残り溝チェックに有効です。
交換目安についての詳細は後述しますが、この「1」の数字が丸見えの状態になっていると、溝の摩耗が進んでスタッドレスタイヤとしての十分な効果を発揮できなくなっています。
よって、スタッドレスタイヤの交換の時期が来ている目安となります。

タイヤ交換時期の目安

タイヤ交換の目安は年数や走行距離、溝の計測といくつかあるので基準が分かりにくいですよね。

具体的に分かりやすくタイヤ交換時期の目安について解説していきます。

タイヤ交換時期の目安のポイントは以下です。

  • スリップサインが見えたらすぐに交換
  • タイヤの残り溝は1.6mm以上あれば良いのではない。3㎜~4㎜が交換推奨
  • 走行距離はあくまで目安。タイヤの劣化は使用環境により変わる
  • タイヤの小さなひび割れ、ブレーキの利きの悪さは日頃から分かる目安

それぞれについて詳しく解説します。

スリップサインはすぐに交換しよう

スリップサインとはタイヤの残り溝1.6mmを示すインジケーターです。
これはタイヤとしての使用限度です。1.6mm以下の状態で走ることは、法令違反となります。もちろん、車検にも不適合です。
タイヤとしての性能を十分に発揮できません。法令の観点だけでなく安全運転の観点からも、スリップサインが出ているタイヤは、今すぐ交換必須の状態です。

タイヤの溝の深さ

では、溝の深さがスリップサインが出る1.6mmギリギリまでタイヤは使えるのでしょうか。たしかに、法令上は問題ありません。
しかし、タイヤは溝が少なくなればなるほどに、本来の性能を発揮できなくなります。
ここでいうタイヤ本来の性能とはグリップ力、つまりタイヤが路面を捉える力です。

タイヤは溝の深さが「4mm」を境にして、制動距離が長くなると言われています。特に雨の日は注意が必要です。雨の日のタイヤのグリップ力は、タイヤの排水性能が命といっても過言ではありません。
タイヤと路面の間の水をかき出す排水性能は、溝が少なくなるほどに低下します。
そのため、整備工場やタイヤショップでは、「3〜4mmの間」で交換を提案することが多いです。
私の勤める整備工場では、点検時に3.0〜3.5mmであれば、交換を推奨しています。


また、残り溝はタイヤの外側と内側で大きく異なる場合があります。
ハンドルを切って、内側の残り溝も確実にチェックするようにしましょう。

日常的に感じるタイヤ交換サインについて

タイヤの摩耗は制動距離が長くなるので「ブレーキの効きが悪い」と感じる場合があります。
タイヤが経年劣化し硬化することで、ロードノイズが大きくなることもあります。
年数が経過して、黒々としていたタイヤの色が薄くなり、表面に小ヒビが見受けられるようになってくることも、日常的に見て感じることのできるサインのひとつです。

また、タイヤを縁石などにヒットして損傷してしまい、こぶのような膨らみができてしまうことがあります。
これは、タイヤが急激な破裂(バースト)を起こすリスクを含んでいるので、早急な交換が必要です。

走行距離や年数でのタイヤ交換目安

タイヤの状態は、使用環境によって大きく異なります。
重量のある車ほどタイヤの摩耗は早く、軽自動車のように軽い車ほど摩耗は遅いです。
また、空気圧が高いと中央付近の摩耗が早く、空気圧が少ないと両端の摩耗が早いです。
同じ走行距離でも、高速道路ばかりを走っているのか、山道を走るとが多いのかで倍以上交換距離が異なることもあります。


もちろん、タイヤの種類によっても大きく異なり、エコタイヤであれば長持ちする傾向にあり、スポーツタイヤは摩耗が早い傾向にあります。
これらは、残り溝に関係することですが、年数の目安に関して言うと、普段車を停めている場所が屋外か屋内かによってゴムの劣化度合い、ひび割れの進行度は大きく異なります。ゴムは紫外線の影響を受けて劣化します。
そのため、走行距離と年数の交換目安時期はあくまで目安の平均的な提案時期であり、タイヤを実際に点検した上で判断することが大切です。

タイヤのひび割れといった交換サインについて

タイヤのひび割れは最悪の場合、バースト(破裂を伴うパンク)につながる恐れがあり、非常に危険です。
初期はタイヤ側面のサイドウォールに小ひびが出てきます。
これくらいのタイミングでは、タイヤ交換を急ぐ必要はありません。
さらにひび割れが進行すると、パックリと亀裂が入ったようになってきます。
この状態は、残り溝が十分にあったとしても要交換と判断してください。
またタイヤ側面だけでなく、路面と接する溝のあるトレッド面のひび割れも同様です。
ひび割れが大きくなってくると、ゴムが劣化している合図なので、交換の目安としましょう。

夏タイヤの交換時期と寿命

夏タイヤ

ここまで解説してきたことをもとに、ノーマルタイヤ(夏タイヤ)の交換時期と寿命について詳しく解説します。

夏タイヤは溝が3〜4mm以下が寿命

夏タイヤの交換時期はタイヤ溝が3㎜~4㎜以下を目安としましょう。

車検には通るからと、1.6mmギリギリまで使うのではなく、余裕のある方は4mm以下になったタイミングで…遅くとも3mm前後までには、タイヤ交換を実施していただきたいです。

夏タイヤの性能低下のひとつの指標として、雨の日の性能は安全のためにも気にしていただきたいポイントです。
もしもの時の急ブレーキ時に、タイヤの摩耗によって制動距離が長くなってしまった結果、止まれたかもしれないところで止まれなかったのでは、悔やんでも悔やみきれません。

溝に限らず3〜5年たったら交換時期

タイヤの劣化によるゴムの硬化は、想像以上にタイヤの性能を発揮できなくなっています。
以前、公道ではない場所で残り溝がかなりあるが、15年以上経過したスポーツタイヤを履いたことがあります。
運転している感覚としては、まるでプラスチックのタイヤを履いてるようなもので、タイヤはただ転がってるだけでグリップしていない…これまで感じたことのない感覚を味わいました。
これは極端な例ですが、年数の経過もひとつの交換目安として大切にしていただきたいです。

スタッドレスタイヤの交換時期と寿命

続いてスタッドレスタイヤ(冬タイヤ)についても解説します。

スタッドレスタイヤは溝が4〜5mm以下が寿命。プラットフォームを確認

スタッドレスタイヤのプラットフォーム

スタッドレスタイヤは、一般的にノーマルタイヤよりも新品時の溝の深さがあって、「7.5〜9.5mm」ほどあります。
そして、凍結路や積雪路を走行するときに、スタッドレスタイヤとしての性能を発揮できる限界値を示すサインがあります。
これは、サイドスリップとは別にある「プラットホーム」と呼ばれるインジケーターです。
このプラットホームは、新品時と比較して50%の残り溝になると露出します。
この50%が、おおむね4〜5mmとなっているので、これを交換時期の目安とします。

溝に限らず3年〜5年たったら交換時期

スタッドレスタイヤは性能を発揮するために、夏タイヤ以上にゴムの柔らかさが重要です。年数の経過とともに、タイヤ(ゴム)は硬くなります。
せっかくのスタッドレスタイヤが、いざという時に使い物にならなければ意味がありません。
目安として使用開始から3〜5年で交換するのが、安全のためにもおすすめです。
これはタイヤメーカーの公式HPにも記載のある目安時期です。

タイヤの寿命を延ばす方法

タイヤは交換費用が高いので、すこしでも寿命を延ばしたいところです。
タイヤの使用環境によって、寿命は大きく変わってくるので、寿命を延ばす方法をご紹介します。

空気圧の確認

車に合った適正な空気圧に保つことが非常に重要です。
空気圧が低いと、タイヤがたわんでしまい負担が大きくなり、なおかつ両サイドが磨耗しやすくなります。
一方で、空気圧を高くしていると中心付近の早期摩耗に繋がります。
最近の車は高速道路走行時に、あえて高めの空気圧にする必要もありません。
最低でも1〜2ヶ月に一度は、タイヤの空気圧が適正値かを確認して、必要に応じて空気を補充しましょう。
空気は温まると膨張し、冷えると収縮する性質があります。
このことから、特に気温の大きく変化する季節の変わり目には、かならずタイヤ空気圧のチェックをするようにしましょう。

保管場所に注意

タイヤ(ゴム)の最大の敵は紫外線です。
夏と冬でタイヤの履き替えをするユーザーさんは、外しているタイヤは暗所保管するようにしましょう。
家の中や、倉庫・物置などに保管できれはベストです。
倉庫や物置が無いのなら、直接日光が当たらないような場所(日陰など)かつカバーを掛けて保管します。
これだけでタイヤの劣化スピードは大きく変わってきます。
また、車も屋外駐車より屋内ガレージに駐車しておく方が、当然ながら紫外線の影響を受けにくいので、履いているタイヤが長持ちします。
カーポートだけでも随分と変わってくるので、おすすめです。

タイヤワックスはおすすめしない

普段、整備の仕事をしていていると、タイヤワックスを塗布していることが原因で、早期ひび割れを起こしているタイヤをよく見かけます。
タイヤワックスの塗布は、油性・水性問わずタイヤメーカーも推奨していないことが多いです。これは、タイヤの早期ひび割れの原因となるためです。
酷いものだと、1年〜1年半でかなり目立つひび割れが出てくるものもあります。
特に正しい知識を持たないままに、ただただタイヤワックスを塗り込むようであれば、なおさらNGです。
タイヤワックスは見た目が黒く艶っぽくなって綺麗かもしれませんが、タイヤの保護につながるわけではないので、注意してください。

タイヤローテーションの確認

現在の車の多くは、リヤに比べてフロントタイヤの方が早く摩耗します。
定期的に前後のタイヤを入れ替えるタイヤローテーションを実施して、溝の多いタイヤをフロントにすることで、ローテーションを全くしないで履いたままにするよりも、トータルでタイヤの寿命を延ばすことができます。
法定点検を整備工場で受けていれば、基本的に必要に応じてタイヤローテーションは実施します。

タイヤの交換時期について整備士のまとめ

タイヤの交換が必要になる時期は、タイヤの種類や使用環境によって、かなり幅があります。そのため、車に詳しくないユーザーが適切な交換時期を事前に予測することは困難です。
よほど年間走行距離が多い場合を除いて、夏タイヤも冬タイヤの場合も「3年以降〜」で、交換に備えておくようにしましょう。
あとは、整備工場での点検時に計測してもらった残り溝やタイヤの状態から、おおよその交換時期を把握するようにするのがベストです。

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車にはタイヤ以外にも消耗品があります。以下の記事ではバッテリーやエンジンオイルといった消耗品、部品の交換時期やセルフで出来るのか?について解説しているので参考にしてみてください。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。