車のバッテリーは、定期的に交換が必要な消耗品として周知されています。
しかし、車種によっては交換費用が高額になることもあるので、事前にいくらくらいかかるのか把握しておきたいという方も多いでしょう。
現役の整備士がバッテリー交換の費用目安や、安く抑えるポイントについて解説します。
バッテリー交換にかかる費用の目安
車のバッテリー交換に必要な費用はバッテリー本体、交換工賃、バッテリー廃棄費用を合わせて5,500円~73,000円ほどです。ただし、バッテリー交換費用はケースバイケースで大きく異なります。
【知っておくべきこと】使用するバッテリーは車によって異なる
使用するバッテリーの種類は多岐に渡り、以下のような条件によって搭載されているバッテリーが異なります。
- 車種の違い
- 同じ車でもパワートレインの違い
- 同じ車でもアイドリングストップ有無による違い
- バッテリーの製造メーカー、ブランドの違い
- バッテリーの容量の違い
※補足:パワートレインの違いとは…HV車とガソリン車、ディーゼル車とガソリン車など)
バッテリーの交換費用の目安を最安値を基準に考えられる方がいらっしゃいますが、車にはそれぞれ適切なサイズ、種類のバッテリーを使わなければいけません。
誤ったサイズや容量、種類のバッテリーを使用すると不具合を誘発したり、交換時期を早めてしまうといったことがあります。そもそも物理的に装着が不可能ということもあり得ます。
自分でバッテリーの購入を考えられている方は、かならず取扱説明書や実際に車についているバッテリーを見て、その車にあった適切なバッテリーを把握しておく必要があります。
バッテリー交換にかかる費用の内訳
おおまかなバッテリー交換費用の内訳は以下のとおりです。
内訳 | 費用の目安 |
---|---|
バッテリー本体 | 5,000円〜60,000円 |
交換工賃 | 500円〜12,000円 |
バッテリー廃棄費用 | 無料〜1,000円 |
交換に必要な合計金額 | 5,500円〜73,000円 |
交換工賃に廃棄費用を含む場合があります。
また、最近の車はバッテリーの交換後に専用のテスターを使って学習や、データリセットを実施しなければいけない車もあり、そういった車は交換工賃が高くなる傾向にあります。また、狭い場所や室内などで交換に時間がかかる車種だと交換工賃が高くなります。
こうした違いはあれど、バッテリー交換の費用で最も大きな差が出るのはバッテリー本体です。
各自動車メーカーの純正バッテリーは高額になりがちですが、社外品でも高性能なものは純正品より高額となるケースもあります。
【業者別】バッテリー交換にかかる費用の一覧
バッテリー交換は、依頼する業者によっても費用が異なります。
業者の種類 | 交換工賃目安 | 合計の交換費用目安 |
---|---|---|
カーディーラー | 2,000円〜8,000円 | 8,000円〜68,000円 |
カー用品店 | 500円〜5,000円 | 5,500円〜60,000円 |
民間整備工場 | 500円〜5,000円 | 5,500円〜55,000円 |
ガソリンスタンド | 1,000円〜4,000円 | 6,000円〜60,000円 |
出張整備 | 5,000円〜12,000円 | 15,000円〜60,000円 |
これらはあくまで目安となります。
バッテリーの購入そのものは、ホームセンターやネットで購入するのがもっとも安いです。
ただし、多くの整備工場でバッテリー持ち込みの場合には、工賃が割り増しとなる傾向にあるので注意しましょう。
また、カー用品店で交換工賃が非常に安くなるケースは、会員であることや当該店舗でバッテリーも購入することが条件であったりするので、よく確認しましょう。
バッテリーの交換費用を安くするポイント
バッテリーの交換費用を安くするためのポイントはいくつかあります。
ただし、それと同時に注意点もあるので合わせて解説します。
ホームセンターやネットでの購入が安い
バッテリーの購入は、ホームセンターやネットでの購入が安い傾向にあります。
カー用品店で販売されているバッテリーは、豊富なラインナップがあるので、安いものから高いものまでさまざまです。
バッテリーが上がる前に交換する
バッテリー交換を安く済ませるには、バッテリーが上がってトラブルに見舞われてしまう前に、弱ってきたら交換しておくことが大切です。
バッテリーが上がってしまうと、ロードサービスを利用しなければならないことがあります。また、出先でバッテリーを交換しないといけないとなると、選択肢が狭まってしまい、結果的に費用が大きくかかってしまう事例があります。
【補足】安すぎるバッテリーに要注意
バッテリー交換の費用を抑えるために、自分でバッテリーを購入することに問題はありませんが、安すぎるバッテリーには注意が必要です。
同じ車種でも、グレードや搭載エンジン、アイドリングストップの有無によってバッテリーの種類が異なりますが、安いバッテリーだと以下のようなケースに該当する恐れがあります。
- バッテリーサイズが小さい
- アイドリングストップ車なのにアイドリングストップ非搭載用バッテリー
これらによってバッテリーが早期劣化するリスクがあり、結果的に短期でバッテリー交換が必要になれば、むしろ出費が多くなる可能性があります。
また、値段の安い無名ブランドのバッテリーと、国産メーカーの誰もが耳にしたことのあるバッテリー(パナソニック、GSユアサなど)とでは、同じサイズであっても性能や品質に違いがある可能性があることを理解しておきましょう。
【補足】長期在庫バッテリーの注意点
バッテリーは使わずに放置していると徐々に放電が進んで弱ってしまいます。
さらに放電が進むと充電量の低下だけに留まらず、バッテリー性能の劣化にもつながります。
特にアイドリングストップ用のバッテリーは、充電量が極端に低下したときの劣化に弱い特徴があります。
ホームセンター等、あまりバッテリーの販売が多くないお店だと、販売されているバッテリーが長期在庫となっているケースがあります。
充電を実施してメンテナンスされていることも考えられますが、バッテリーの箱が明らかに色褪せていたり、埃が被っているようであれば購入を避けた方が無難でしょう。
自分でバッテリーを交換する手順と注意点
自分でバッテリーの交換をすることで費用を節約できます。
工具を使った作業に抵抗がなく、電気に関する知識が最低限あれば、チャレンジしてみるのも選択肢のひとつです。
自分でバッテリー交換をする手順
- バッテリーの種類に注意して購入する
- ボンネット、またはトランク/リヤゲートを開けてバッテリーにアクセスする
- 作業後に確実に元の状態に戻せるように、スマホ等で現状の写真を撮っておく
- 必要な工具を用意する(作業用手袋やワークライト、防護メガネ等があればなお良い)
- バッテリーを取り外す(プラス端子のカバーを外して、バッテリー固定のステーも取り外す)
- バッテリーを取り付ける(プラス端子カバーを取り付け、バッテリー固定ステーを取り付ける)
- 必要に応じて、リセット作業やナビや時計、車両の各設定をおこなう
- 交換後のバッテリーを正しく廃棄する
注意点
自分でバッテリーを交換する際の注意点を以下にまとめました。
- マイナスケーブルから取り外し、プラスケーブルから取り付ける
→この手順を守らないと、万が一のときにトラブルに遭うリスクが高まります - マイナスケーブルが接続された状態で、プラス端子とマイナス端子やボデーの金属部分を短絡させない
→電気はプラスからマイナスに流れる性質があります。短絡すると大きな電流が流れてしまいます。その結果、フューズの溶断によりエンジンが掛からなくなる、工具を介して短絡させてしまうと工具が焼け溶ける、火花が飛び散る、感電するといった危険を伴います - 交換後、リセットや学習が必要なケースがある
→よくあるのはナビのラジオの再設定や、バックカメラを設定しないと使えないなど。最近の車には電流センサがついてるものが多く、スムーズに車がバッテリーの充電状態を学習できるように、センサの取り扱いに指定のある場合があります。また、専用のテスター(診断機)を使用しないと、バッテリー交換後に必要なデータリセットや再学習ができない車もあります - バッテリーの廃棄
→基本的にバッテリーは家庭用のゴミとして廃棄できません。廃棄する場合は、整備工場やカー用品店に相談するのがベストです。その多くで、廃棄のためにバッテリーを持ち込むことを受け入れてくれるはずです
バッテリーを長持ちさせるには?
バッテリーを長持ちさせるコツは、「車に乗る頻度を増やす」「チョイ乗りをしない」といったシンプルなものや「充電器を使用する」「ドラレコの使用条件を見直す」といったことがあげられます。
バッテリーは車が走行してはじめて、充電がおこなわれます。
しかし、車に乗る頻度が多くてもチョイ乗りばかりだと、1番電気を多く使うエンジン始動にばかり電力が消耗され、十分な充電がしきれないことが繰り返されてしまい、バッテリーが短期間で弱ってしまいます。
充電器を使用する
車に乗る頻度を増やす、チョイ乗りは避ける…と言われても、カーライフのスタイルは人それぞれです。
どうしても、バッテリーが弱りがちな使い方になってしまう方も少なくありません。
頻繁なバッテリー上がりなどに困っている方は、家庭でも使えるバッテリー充電器を使うのもおすすめです。
実際にわたしも走行距離が少なく、バッテリーが長持ちしないお客様におすすめしている製品です。
駐車監視モード付きのドラレコの条件を見直す
最近のバッテリー上がりの原因として急増しているのが、ドライブレコーダーの駐車監視モードです。
国内メーカーの製品であれば、セーフティ機能が充実しているので、一定の電圧以下になると自動的にオフしたり、作動時間を設定できたりしますが、海外メーカーのものなどにはそういったセーフティ機能の備わっていないものもあります。
ご自身の車の使用状況に応じた駐車監視モードの使い方を選択することも大切で、場合によってはバッテリーの寿命を短くしてしまいます。
それでも、バッテリーに負担を掛けることなく駐車監視モードもしっかり活用したいようであれば、ドライブレコーダー駐車監視用補助バッテリーを併用することをおすすめします。
参考:
整備士のまとめ
基本的に軽自動車はバッテリーが小さく交換に掛かる費用が抑えられ、車格が大きくなるほどバッテリーは大きく高額になる傾向にあります。
安く抑えるにはネットでバッテリーを購入することをおすすめしますが、正確な知識が無ければ、間違ったバッテリーを購入してしまうリスクもあるので注意しましょう。
また、自分で交換する場合には気を付けなければいけない点が複数あります。
DIYでの交換に自信のない場合には、ネットで購入したバッテリーを持ち込んでも構わないので、安心安全のためにも整備工場でプロの整備士に作業を依頼するようにしましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。