エンジンブレーキはフットブレーキより緩やかな減速ができ、下り坂や高速道路、信号前でもよく使われます。しかしブレーキランプが点灯せず、減速に気づきにくいため、使いすぎると後続車にうざいと嫌がられることも。ここではエンジンブレーキとフットブレーキの違いや、適切な使い方について解説します。
うざい?賛否分かれるエンジンブレーキ
緩やかな減速や、下り坂での安全な走行のために使われるエンジンブレーキ。
2023年3月末、「エンジンブレーキの使用で警察に通報された」というSNSの投稿が話題になりました。ブレーキランプが点灯しないエンジンブレーキでの減速は「迷惑運転」と通報されたようです。
「エンジンブレーキはうざい」という意見
エンジンブレーキは、信号前の緩やかな減速などで使われることが多いです。しかしドライバーの中には、以下のような理由からこの減速方法を嫌厭する人もいます。
- ゆっくりとした減速は後続車に迷惑
- ブレーキランプが点灯せず、減速に気づきにくい
- ギリギリになって急ブレーキを踏む人も
後続車の立場になった時、あまりにゆっくりとした減速や、ブレーキランプが点灯しないことによるブレーキの踏み遅れのリスクが気になるようです。
エンジンブレーキ支持派も多数
一方、SNS上では「エンジンブレーキは必要」「うざいと言うのがおかしい」という意見も多く寄せられています。
- そもそも先行車とは車間距離をあけるべき
- 高速道路の料金所など、エンジンブレーキを使う人は多い
- 下り坂などでは必須機能
最も多いのは、「適切な車間距離が必要」という意見。先行車との車間距離を見て適宜速度を調整すれば、衝突のリスクは抑えられます。またエンジンブレーキは高速道路や下り坂での使用が推奨されており、一概に悪いものとは言えません。
そもそもエンジンブレーキとは
エンジンブレーキは、エンジンの回転を利用した減速方法です。エンジンブレーキを利用すると、クルマが緩やかに減速します。かけ方は、以下の2通りです。
- 走行中にアクセルペダルを離す
- 走行中にアクセルペダルを離してシフトダウン
クルマはアクセルペダルで加速しますが、ペダルから足を離せば減速します。この減速力こそが、エンジンブレーキです。ブレーキパッドを踏むといった特別な操作は必要ありません。
エンジンブレーキの制動力を高めたい場合は、シフトダウンします。MT車に限らず、AT車でも「D」レンジの下にある「L」「B」「2」といったレンジでシフトダウンできます。
※AT車のシフトの種類は、車種ごとに異なる
エンジンブレーキを使うタイミング
エンジンブレーキを使うのは、主に以下のようなタイミングです。
- 長い下り坂
- 高速道路での減速
- 滑りやすい路面での減速
- 信号前での減速
長い下り坂や高速道路でフットブレーキを頼りすぎると、ブレーキパッドに負担がかかります。このような使い方は事故に繋ががることもあり、危険です。また高速道路でブレーキランプを頻繁に点灯させると、後続車も慌ててしまいます。
街乗りでも、エンジンブレーキを使う機会はあります。例えば滑りやすい路面では、フットブレーキを勢いよく踏むとスリップする可能性があります。また信号付近では、少し先にある信号が黄色や赤になったら緩やかに減速したり、反対に赤から青になりそうな時はエンジンブレーキで減速した上で、スムーズに加速に切り替えたりします。
Q. 燃費が向上するって本当?
エンジンブレーキをかけた時、エンジン回転数が一定以上になっていると、エンジンへの燃料供給が止まります。これは「燃料カット」と言われるもので、燃費は若干良くなります。 ただし、燃費向上性はほんのわずかです。
エンジンブレーキとフットブレーキの違い
エンジンブレーキ | フットブレーキ | |
---|---|---|
仕組み | エンジンの回転を抑えることで減速させる | タイヤの動きを抑えることで減速させる |
減速の仕方 | 緩やかに減速 | ブレーキペダルを踏む力に比例して勢いよく減速 |
使うタイミング | ・長い下り坂 ・高速走行時の減速 ・滑りやすい路面での減速 ・信号より少し前など |
・赤信号の前での停止 ・車間距離がない状態での減速 |
ブレーキランプ | 点灯しない | 点灯する |
エンジンブレーキは、タイヤの動きを直接止めることができません。そのため緩やかな減速や、フットブレーキの補助として使われます。一方フットブレーキは、直接タイヤの動きを抑えることで車両を減速・停止させます。信号前で停止する時や、いざ車間距離がない状態で瞬時に減速しなければいけない時に使えます。
フットブレーキの頼りすぎは時に危険
フットブレーキでも、ブレーキペダルを踏む力を弱くすれば緩やかに減速します。 しかし長い下り坂のように、ブレーキを踏み続けなければいけない環境でフットブレーキを多用するのは非常に危険です。フットブレーキを使い過ぎると、ブレーキが効かなくなる「べーパーロック現象」や「フェード現象」が起こるリスクがあります。
2022年10月には、静岡県で観光バスがフェード現象によって横転。1人が死亡、多数の乗員が重軽傷を負う事故となりました。
エンジンブレーキの使いすぎによる問題は?
エンジンブレーキを使えば、ブレーキパッドの消耗は少なく済みます。また先述のように、フットブレーキばかりを頼れば事故に繋がることも。他方でエンジンブレーキを使いすぎても、かえって危険が高まったり、車両を傷めたりする可能性があります。
後続車が減速に気づきにくい
本来、後続車は先行車と適切に車間距離をあけて走行するものです。しかしドライバーによっては、先行車のブレーキランプで減速を感知していることもあります。また距離が離れている場合は、先行車の減速が分かりにくいこともあるでしょう。
フットブレーキを使わないことでブレーキランプが光らず、結果として他のドライバーに嫌がられたり、思わぬ事故になったりすることもあるので注意しましょう。
車体に負担をかけることも
エンジンブレーキの使い方や車両の種類によっては、エンジンブレーキの使い過ぎで車両を傷めることがあります。 気をつけたいのは、シフトダウンしてエンジンブレーキをかける場合です。シフトダウンをするとエンジンの回転数が上がりますが、回転数が上がりすぎると車体やトランスミッションに負担がかかります。
使い分けのポイント
エンジンブレーキとフットブレーキは、基本的に以下のように使い分けるのがおすすめです。
- エンジンブレーキ…長距離でゆっくり減速する時
- フットブレーキ…短い距離で減速しなければいけない時、停止する時
信号前の減速はどうあるべき?
エンジンブレーキに関して最もトラブルになりやすいのが、信号前の減速です。
信号前でエンジンブレーキを使うことは、悪いことではありません。しかしフットブレーキを直前まで使わないと、後続車に嫌がられてしまうこともあります。 エンジンブレーキをかける時は後続車の有無を確認しましょう。また必要に応じてフットブレーキを軽く踏み、ブレーキランプを光らせた上でエンジンブレーキを利用しましょう。
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- Supervised by norico編集長 村田創
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