両側スライドを持つスーパーハイト系の軽自動車は、特にファミリー層や高齢者に人気だ。今回は新たに登場したタントファンクロスと、根強い人気のスペーシアギアを比較した。購入を検討している人は是非参考にして欲しい。
- 幅広い年齢層から人気のスーパーハイト系の概要
- ダイハツ タントファンクロスの特徴
- スペーシアギアの特徴
- マイルドハイブリッド非搭載のファンクロスが燃費で勝る快挙
- 両車、甲乙付け難い価格設定
- 値引きはライバル車同士、しっかりと競合させることが重要!
- 愛着がわくデザインが魅力的なスペーシアギア
- 両車、高いレベルの使い勝手の良さ
- タントファンクロスはオプションフル装備でハイレベル予防安全装備に
- 街乗り重視ならスペーシアギア。4WDで悪路ならタントファンクロスがお勧め
- スペーシアギアは、フルモデルチェンジに注意
- 使い方次第で異なる選択になる
- ダイハツ タントファンクロス 価格・スペック
- スズキ スペーシアギア 価格・スペック
幅広い年齢層から人気のスーパーハイト系の概要
スーパーハイト系は、軽自動車マーケットで非常に高い人気を誇るカテゴリーのひとつだ。全高が高く両側スライドドアをもつモデルを指し、特に上部方向のスペースが広いモデルが多い。
スライドアが装備されているので、小さな子供がいるファミリーや高齢者の送迎などフレキシブルに使える。迫力あるルックスのカスタム系も相まって、若年独身層にも人気があり、幅広い年齢層から支持を得ている。
スーパーハイト系軽自動車の近年の傾向
そんなスーパーハイト系も、近年では手詰り感が出てきていた。各メーカーがライバル車を徹底研究した結果、どれも似たようなモデルになってきている。
この状況を打開したクルマが、2018年に登場したスズキ スペーシアギアだ。スーパーハイト系軽自動車にSUVテイストをプラスしたクロスオーバー車である。
スズキには、ハスラーでの成功経験がある。ハイト系のワゴンRをベースにSUVテイストをプラスし大ヒットに繋がった。スペーシアギアは、そうした成功経験を活かしたモデルといえる。このクラスではユニークな存在となった。
一方のダイハツは、約4年越しでスペーシアギアのライバルとなるタントファンクロスを投入し、スペーシアギアとの直接対決に至った。
ダイハツ タントファンクロスの特徴
4WDモデルは、悪路も走れるスーパーハイト系に!?
ダイハツ タントファンクロスは、タントのマイナーチェンジのタイミングである2022年10月に新グレードとして発売された。
タントとファンクロスの共通箇所には、パワーユニットやプラットフォーム(車台)、ボディなどがある。タントファンクロスは、アウトドアシーンに合うタフでアクティブ感あるデザインをプラスした。両側スライドドアや、Bピラーレスのミラクルオープンドアなと、使い勝手の良さがベースとなっている。
アウトドアでの利便性も向上した。濡れて汚れたギア類などを積載するときに便利な防水加工シートバックや、夜間の積み下ろしで役立つラゲージルームランプやUSBソケットも装備されている。
4WDの最低地上高はクラストップレベルの165mmだ。同じSUVルックのダイハツ タフトほどではないものの、4WDであればちょっとした悪路の走行も苦にならないレベルだ。
スペーシアギアの特徴
マイルドハイブリッドシステム搭載で、静粛性や快適性もアップ
スズキ スペーシアギアは2018年末に発売された。コンセプトは「広い室内空間とアクティブスタイルを融合したSUVな軽ハイトワゴン」だ。エンジンやボディなどはスペーシアをベースとしつつ、丸形のヘッドライトに角を丸くした四角いボディと組み合わせ、愛嬌のある個性的なデザインに仕上げた。
撥水加工を施した専用ファブリックシート、防汚タイプのラゲッジフロアやシートバック背面も採用した。アウトドアシーンでの水濡れや汚れを気にせず使える工夫が施されている。
エンジンは、すべてマイルドハイブリッドシステムを搭載している。低燃費だけでなく、アイドリングストップからの再始動時に静かで振動もほとんど感じず、快適性や静粛性に優れている。
マイルドハイブリッド非搭載のファンクロスが燃費で勝る快挙
1.燃費比較
タントファンクロスの評価:4.0
スペーシアギアの評価:3.5
タントファンクロスとスペーシアギアの燃費は以下の通り(すべてFF、WLTCモード)。
|
600cc |
600ccターボ |
タントファンクロス |
21.9km/L |
20.6km/L |
スペーシアギア |
21.2km/L |
19.8km/L |
タントファンクロスの燃費性能は、マイルドハイブリッドシステムを使うスペーシアギアを上回る数値となった。スペーシアギアより車重も重く、ハイブリッドシステムも持たないファンクロスの燃費は、かなり優れているといえる。
スペーシアギアは、2018年デビューと開発時期が古いため仕方ない部分がある。ベースとなるスペーシアもそろそろフルモデルチェンジ時期なので、燃費性能は新型スペーシアギアに期待したい。
両車、甲乙付け難い価格設定
2.価格比較
タントファンクロスの評価:3.0
スペーシアギアの評価:3.0
タントファンクロスとスペーシアギアの新車価格帯は以下の通り。
車種 |
エントリーグレード |
ハイエンドグレード |
タントファンクロス |
1,721,500円(FF) |
1,930,500円(ターボ 4WD) |
スペーシアギア |
1,725,900円(XZ FF) |
1,987,700円(XZターボ 4WD) |
両車の価格設定は、ほぼ同等だ。ターボ車はタントファンクロスがやや安価だ。ダイハツの価格設定は、スペーシアギアをかなり意識している。
機能差は一長一短といえるが、運転支援機能では差が付いた。
装備比較 |
タントファンクロス |
スペーシアギア |
ミラクルオープンドア |
○ |
✕ |
マイルドハイブリッドシステム |
✕ |
○ |
全車速追従機能付クルーズコントロール |
オプション |
全車標準装備 |
サーキュレーター |
✕ |
○ |
全体的には、スペーシアギアの装備が若干良いように見える。細かい差はあるものの、甲乙つけ難い。
両車のエントリーグレードでも、ナビなどのオプションを追加すると200万円を超える。安価なクルマとは言い難い。
お勧めは、両モデル共にターボ車だ。スーパーハイト系は、背が高く重い。アウトドアレジャーなどロングドライブをすることが前提であれば、高速道路でも余裕がある走りができるターボ車がよい。
値引きはライバル車同士、しっかりと競合させることが重要!
3.購入時の値引き術
タントファンクロスの評価:3.0
スペーシアギアの評価:3.5
タントファンクロスは、2022年10月にデビューしたばかりの新型車だ。しばらくは値引きゼロに近いだろう。
だがタントファンクロスの価格設定は、スペーシアギアをかなり意識している。そのため、スペーシアギアの見積りを先に取ってから商談に向かえば、値引きアップの期待は大きくなる。新型車でも、ある程度の値引きは引き出せるだろう。
対するスズキ スペーシアギアはモデル末期に入っているので、大幅な値引きが期待できる。
だが個性的なモデルのため、指名買いが多い。そのため、何もしないと5万円程度の値引きになる可能性がある。
あえて今、モデル末期の車を買うのであれば、20万円位の値引きは引き出したいところだ。そのためにもライバル車であるタントファンクロスの見積りを先に取り、しっかりと競合させることが重要である。
スペーシアギアは、未使用車が無いか探してみるのも有効だ。
未使用車(登録済み未使用車)とは、メーカーやディーラーの都合で買い手がいないのに登録(届出)した車両のことだ。一度登録(届出)すると中古車扱いになるため、新車価格よりかなり安価なケースが多いので探す価値がある。
愛着がわくデザインが魅力的なスペーシアギア
4.デザイン比較
タントファンクロスの評価:3.5
スペーシアギアの評価:4.0
タントファンクロスには、ブラック塗装された大きなサイドモールに、フロントのプロテクタ、アンダーガード風のデザインが施された。ひと目でタフな印象を受ける、分かりやすいデザインといえる。
ボディカラーは、鮮やかさを抑えたグリーンやベージュなど流行りのアースカラーが多いのも特徴だ。
インテリアデザインもタントと同様だ。
各部にはアウトドアツールで人気の差し色であるオレンジを採用。シートのカモフラージュ柄でタフさを表現した。
対するスズキ スペーシアギアも、ブラックで塗装された各プロテクタを装備し、アクティブなスタイルにまとめている。
スペーシアギアの特徴は、角を丸くした四角いシルエットに、クリっとした丸型ヘッドライトを組み合わせた点にある。とても愛嬌のある顔だ。愛着が湧くデザインという面では、タントファンクロスの一歩先を行く。
インテリアのカラーも、スペーシアがベースだ。
メーターリング、エアコンルーバーリングに流行りのオレンジ加飾が施されるなど、色味が少し変更されている。
両車、高いレベルの使い勝手の良さ
5.室内空間と使い勝手比較
タントファンクロスの評価:4.5
スペーシアギアの評価:4.0
タントファンクロス、スペーシアギア(両車FF)のボディサイズ、ホイールベース、室内サイズは以下の通りだ。
車種 |
全長×全幅×全高 |
ホイールベース |
室内長×室内幅×室内高 |
タントファンクロス |
3,395×1,475×1,785mm |
2,460mm |
2,125×1,350×1,370mm |
スペーシアギアXZ |
3,395×1,475×1,800mm |
2,460mm |
2,155×1,345×1,410mm |
*室内サイズは、各社独自測定のケースが多いため参考値
軽自動車はボディサイズの上限が決められているため、全幅と全高は両車共に同じである。スペーシアギアの全高は15mmほど高いが、室内スペースもほぼ互角だ。大差は無い。
タントファンクロスには以下の機能が付いており、利便性が高い。シートアレンジでは、タントファンクロスが上回る。
- 上下2段調節式デッキボード
- 540mm運転席ロングスライドシート(オプション)
- 380mm助手席ロングスライド(オプション)
小物入れなどの収納スペースは、ほぼ互角だ。
シートの撥水機能や後席シートバックの防汚機能などは両車共に装備している。両車の考え抜かれた使い勝手の良さは魅力的だ。
タントファンクロスはオプションフル装備でハイレベル予防安全装備に
6.安全装備の比較
タントファンクロスの評価:4.0
スペーシアギアの評価:3.5
自動ブレーキは、両車共に昼夜の歩行者に対応する。前後の誤発進抑制も標準装備されている。
スペーシアギアの優位な装備は以下の通りだ。
- 後退時のブレーキサポートが追加
- 全車速追従式クルーズコントロール機能(全車標準装備)
※上図:スペーシアギアのインパネ
※上図:スペーシアギアのメーター
対するタントファンクロスの全車速追従式クルーズコントロール機能(オプション)には、同一車線内を維持するLKC(レーンキープコントロール)があり、ややスペーシアギアを上回る。
※上図:タントファンクロスのインパネ
※上図:タントファンクロスのメーター
他にもタントファンクロスには、以下の装備がある。運転が苦手な人にとって、リスク軽減できる機能だ。
- スマートパノラマパーキングアシスト(自動でステアリング操作する駐車支援機能)
- ブライドスポットモニター(後側方から接近する車両を検知し、接触の危険がある場合は、警報を発する)
こうした機能をフル装備すると、スペーシアギアを上回る予防安全性能を手に入れることができる。
デビューが新しいタントファンクロスがリードしているからこそ、ブラインドスポットモニターくらいは標準装備して欲しいところだ。
街乗り重視ならスペーシアギア。4WDで悪路ならタントファンクロスがお勧め
7.走行性能の比較
タントファンクロスの評価:4.0
スペーシアギアの評価:4.0
ダイハツ タントファンクロスとスズキ スペーシアギアの最高出力と最大トルク、車重は以下の通りだ。(すべて600cc)
車種モデル |
最高出力&最大トルク |
車重(FF/4WD) |
タントファンクロス |
52ps&60Nm |
920kg/970kg |
タントファンクロスターボ |
64ps&100Nm |
940kg/990kg |
スペーシアギア |
52ps&60Nm |
880kg/930kg |
スペーシアギアターボ |
64ps&98Nm |
890kg/940kg |
※上図:タントファンクロスのエンジンルーム
加速感は、ほぼ同等レベルにある。スペーシアギアは車重が軽くモーターアシストが入るので、若干力強さを感じる。特にターボ車は若干だがアクセルレスポンスがよい。
両車共スーパーハイト系であるため車重が重い。そのため自然吸気エンジンモデルは、高速道路で力不足感がある。アウトドアレジャーでロングドライブすることが多い場合、パワフルなターボ車がお勧めだ。
※上図:スペーシアギアのエンジンルーム
乗り心地は、ややタントファンクロスの方がよい。スペーシアギアは、少しタイヤのゴツゴツ感が伝わってくる。
各車には得意な走行シーンがある。
4WD車の最低地上高は、タントファンクロスは165mm、スペーシアギアは150mmだ。悪路や荒れた雪道などを走行する機会が多いのであれば、タントファンクロスが優れる。FF車は、タントファンクロスとスペーシアギア共に150mmと標準的な数値だ。
市街地ではスペーシアギアが快適だ。スペーシアギアは、マイルドハイブリッドシステムを搭載している。アイドリングストップからの再始動時、モーターのキュルキュル音や、エンジンが始動した時のブォーンという音や振動がほとんどしない。マイルドハイブリッドシステムのモーターを使ってエンジンを始動させるので、シュルンという音だけがなんとか聞き取れる程度だ。市街地では数えきれないくらいアイドリングストップからの再始動を繰り返すため、この差は大きい。スペーシアギアの静粛性や快適性は、タントファンクロスを上回る。
スペーシアギアは、フルモデルチェンジに注意
8.リセールバリュー比較
タントファンクロスの評価 4.0
スペーシアギアの評価 4.0
タントファンクロスは新型車のため、リセールバリューはまだ不明だ。
しかし軽自動車は全般的にリセールバリューが高い。その中でも需要の高いスーパーハイト系、タントのブランド力など、リセールバリューが下がる要因は見つからない。恐らく、タントカスタム並みのリセールバリューになると予想できる。
スペーシアギアも同様に高いリセールバリューを誇っている。
2019年式スペーシアギアの中古車相場は、およそ120~180万円とやや幅が広い。発売当時の新車価格が161~181万円程度だったので、新車価格の約75~99%という高値を維持している。リセールバリューも当然高くなる。
注意したいのは、スペーシアギアがモデル末期で、いつフルモデルチェンジしてもおかしくない状況にあることだ。フルモデルチェンジすると旧型になるため、リセールバリューはグッと落ちる。売却を考えているのなら早めがよい。
使い方次第で異なる選択になる
9.まとめ・総合評価
ダイハツ タントファンクロスとスズキ スペーシアギアは、得意とする走行シーンが異なる。そのため、自分がどんな使い方をメインにしているかで選択肢は変わる。
悪路や荒れた雪道での走行が多いのであれば、最低地上高が高い4WDのタントファンクロスをお勧めしたい。両車ともSUVルックだが、タントファンクロスの4WD車以外は、悪路走行をあまり想定していないので注意が必要だ。
悪路走破性能が高い軽自動車を選びたいなら、タフトやハスラーという選択肢になる。最低地上高はタフトが190mm、ハスラーが180mmと十分だ。
市街地走行が中心であれば、スペーシアギアがお勧めとなる。
マイルドハイブリッドシステムの恩恵で、アイドリングストップからの再始動時がとにかく静かで快適だ。街中で幾度となく繰り返されるので、快適さは重視したい。
その他はそれほど大差がないので、デザインの好み次第だろう。
評価項目 |
タントファンクロス |
スペーシアギア |
総合得点(40点満点) |
30.0 |
29.5 |
1.燃費 |
4.0 |
3.5 |
2.価格 |
3.0 |
3.0 |
3.購入時の値引きしやすさ |
3.0 |
3.5 |
4.デザイン |
3.5 |
4.0 |
5.室内空間と使い勝手 |
4.5 |
4.0 |
6.安全装備 |
4.0 |
3.5 |
7.走行性能 |
4.0 |
4.0 |
8.リセールバリュー |
4.0 |
4.0 |
ダイハツ タントファンクロス 価格・スペック
ダイハツ タントファンクロス価格
モデル |
FF |
4WD |
タントファンクロス |
1,721,500円 |
1,842,500円 |
タントファンクロス ターボ |
1,809,500円 |
1,930,500円 |
ダイハツ タントファンクロス燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード |
タントファンクロス 4WD |
ボディサイズ |
3,395mm×1,475mm×1,805mm |
ホイールベース |
2,460mm |
最低地上高 |
165mm |
最小回転半径 |
4.4m |
車両重量 |
970kg |
総排気量 |
660cc |
エンジン種類 |
KF型 直3 DOHC |
エンジン最高出力 |
38kW(52ps)/6,900rpm |
エンジン最大トルク |
60N・m/3,600rpm |
WLTCモード燃費 |
21.4km/l |
サスペンション前/後 |
マクファーソンストラット/3リンク |
タイヤサイズ |
155/65R14 |
スズキ スペーシアギア 価格・スペック
スズキ スペーシアギア価格
モデル |
FF |
4WD |
スペーシアギア XZ |
1,725,900円 |
1,845,800円 |
スペーシアギア XZ ターボ |
1,802,900円 |
1,922,800円 |
スズキ スペーシアギア燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード |
スペーシアギアXZターボ FF |
ボディサイズ |
3,395mm×1,475mm×1,800mm |
ホイールベース |
2,460mm |
最低地上高 |
150mm |
最小回転半径 |
4.4m |
車両重量 |
890kg |
総排気量 |
660cc |
エンジン種類 |
R06A型 直3 DOHCターボ |
エンジン最高出力 |
47kW(64ps)/6,000rpm |
エンジン最大トルク |
98N・m/3,000rpm |
WLTCモード燃費 |
19.8km/l |
サスペンション前/後 |
マクファーソンストラット/トーションビーム |
タイヤサイズ |
155/65R14 |
スペーシアギアのカタログ情報
- 平成30年12月(2018年12月)〜令和5年11月(2023年11月)
- 新車時価格
- 161.5万円〜192.3万円
スペーシアギアの在庫が現在69件あります
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