マツダCX-60がマイナーチェンジ!より多くの人が乗りやすいSUVへ進化

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2022年9月に発売されたCX-60が、2025年2月にマイナーチェンジした。以前感じた乗り心地の硬さ等の課題は解消されたのだろうか?
今回はマイナーチェンジによるCX-60の改良点について、試乗を通して評価した。

CX-60の概要

マツダの「モノ造り革新」により生まれたCX-60

マツダ車というと、デザイン哲学である「魂動デザイン」が注目されやすい。だが、2022年9月に販売が開始されたKH系CX-60を見た時「マツダは技術の会社」でもあるとつくづく感じた。マツダの「モノ造り革新」によって、すべての基幹ユニットを一新したからだ。

KH系CX-60は、発売当初から新開発、またはマツダ初の技術が数多く搭載されていた。

  • 後輪駆動ベースのプラットフォーム「ラージ」
  • 3.3L直6ディーゼルエンジン
  • トルコンレスの8速AT
  • マツダ初のPHEV
  • ドライバー異常時対応システム(DEA)
  • 後輪駆動ベースのAWDシステム

一般的なフルモデルチェンジは、プラットフォームかパワーユニットのどちらか一方だけを新しくし、もう一方は前のモデルを引き継ぐパターンが多い。開発期間の短縮やコスト低減、信頼性の確保のためである。

だがマツダは、数々の構想を積み重ねた「モノ造り革新」により、双方を新開発した。一括企画を土台とし、開発部門と生産部門との密な連携によって、短期間で全車種に展開し「手軽な価格」を実現。
その「モノ造り革新」の第1弾モデルとなったのがCX-60だった。

チャレンジに潜んでいたリスクとは?

「モノ造り革新」という大チャレンジには、リスクもあった。CX-60の場合、修理や部品交換を行うサービスキャンペーンを繰り返してしまった。
この品質問題に対して、マツダは真摯に向き合った。CX-60の次に投入予定だったCX-80の発売を一時凍結して、CX-60品質問題の解決に注力したのだ。

CX-60改良モデルの発売。乗り心地改善が重要テーマ

CX-60 の全景の画像

2025年2月に改良モデルの発売を開始した。CX-60の品質問題は落ち着いたものの、もう一つ大きな課題があった。それは、乗り心地の硬さだ。とくに、リヤサスペンションの突き上げ感が大きく、一定の振動周波数になると揺れが収まらなかった。前席であれば、割り切れるレベルだったが、後席での長距離移動は、さすがに辛いと感じたほどだ。今回の改良で注目したい大きなポイントでもある。

マイナーチェンジによるリヤサスペンションの改良点は?

CX-60 のエンジンルームの画像

マイナーチェンジでは、リヤサスペンションを中心に改良が加えられた。リヤサスペンションのスプリングは、約20~25%柔らかめに変更された。これに合わせダンパーの減衰力も変更。これくらいなら、よくある話だ。

加えてバンプストッパーをウレタン系の短いタイプへ変更した。バンプストッパーで止めるのではなく、できる限りストロークを止めるという考え方だ。クロスメンバーブッシュ特性も見直した。

リヤサスペンションの大きな変更は、スタビライザーが外されたことだ。これは、スポーティな走りを標榜するCX-60の走り本質に係わる大きなチャレンジだ。
リヤサスペンションの変更に合わせ、フロントサスペンションも変更された。ナックルの締結ポイントを1mm下げたのだ。わずか1mmにも徹底的にこだわるマツダの姿勢に、よりよいCX-60に仕上げたいという想いを感じる。
これにより安定傾向のハンドリングとなった。ダンパーの減衰力も併せて変更されている。

CX60はマイナーチェンジで乗り心地が劇的に快適になった

CX-60 の運転席の画像

今回試乗したのは、CX-60 XDハイブリッドプレミアムスポーツだ。
走り出してすぐに、荒れた路面では235/50R20もの大径タイヤをやや持て余し気味に感じた。凹凸が大きいと低速域では、タイヤがドン、ゴトゴトと硬さやバタつきを伝えてくる印象がある。少し速度が上がると落ち着きをみせた。
ルックスとしては20インチが良いかもしれない。けれど、標準は19か18インチでも良いのでは…と感じた。

気になる乗り心地は、劇的に良くなった。一般道でもドンドンと突き上げてきたリヤサスがとてもマイルドになったのだ。サスペンションストロークをと使い足を動かしていて、粘り強さを身に着けている。大きな入力に対しても収束は良好だ。乗り心地が良くなった上に、揺れが長引くこともない。

高速道路の良路になると、快適性はさらに輝きを増す。もともとわずかな凹凸にも反応しゴンゴンと突き上げてきたリヤサスは、今回しなやかに凹凸をいなした。まるで、滑るように走る。

CX-60 の内装、後席の画像

従来型を運転している際は全身に力が入り揺れに対応していたが、改良後モデルではホワっとリラックスした状態でクルージングができる。
後席の乗り心地も同様だ。従来型では、後席で寝ることは不可能と思ったほどだが、改良後のCX-60であれば、リラックスして眠りつける後席になった。「これが、あのCX-60? 同じクルマですよね?」と、思うほどの激変ぶりだ。

CX-60 の荷室の画像

快適な乗り心地を得たことで、失ったモノとは?

CX-60 のフロントフェイスの画像

ただ、悩ましい点もある。リヤスタビライザーを外したことで、CX-60の持っていたピュアなスポーティさがやや失われていることだ。

もともとCX-60は、運転を愉しめる「ドライビングエンターテインメントSUV」をコンセプトとしている。車体の傾きをガッチリと抑え込み、微妙なステアリング操作に対しても瞬時に反応。大きな車体のSUVながら、ギュンギュン良く曲がるピュアなスポーティさがCX-60の美点だった。スポーティさと乗り心地は二律背反することが多いが、いかにバランスさせるかが腕の見せ所とも言える。

CX-60 のリヤエンドの画像

3列シートSUVであるCX-80であれば、リヤスタビライザーを外して、乗り心地を重視するのもいいと思う。ただ、個人的な好みで言えば、 CX-60はリヤスタビライザーを装着し車体の傾きを抑えて欲しかった。CX-60がもつピュアなスポーティさが曖昧になるからだ。

CX-60はパワーユニットや駆動方式、内外装の種類などが豊富だ。その中でも上級グレードは、大きくスポーツとモダンに分類できる。叶うのであれば、スポーツ系グレードにはリヤスタビライザーありでスポーティさを際立たせ、モダン系はリヤスタビライザー無しで乗り心地重視。そんな選択肢をユーザーに与えてみてもよいのではないか? と思う。

CX-60 のインパネデザインの画像

だが、リヤスタビライザーを外したことで、改良前のCX-60よりも運転しやすくなったと感じる人も増えただろう。
高速道路のジャンクションのようなカーブを、やや高めの速度で走ると、車体が大きめに傾く。しかし車体が傾くスピード(ロールスピード)は、穏やか。ステアリングを切っても、急にグラっと車体が傾いたり、怖さや不安感を抱いたりすることはなかった。

CX-60 のメーターの画像


乗り心地の他に改良が施されたのが、トルクコンバーターレスの8速ATだ。デビュー時には、ストップ&ゴーや低速域ではギクシャク感が明確に伝わってきた。また、リコールにも大きく係わった部分でもある。
CX-60の改良では、すでに問題を解決したCX-80と同じ8速ATが搭載された。そのため、デビュー時にあったギクシャク感は姿を消し、違和感なく走行できた。トルクコンバーターレスのダイレクト感あるシフトフィールは、なかなか気持ち良い。乗り心地の向上も含め、改良後のCX-60はより洗練されて万人受けするSUVになった。

CX60は改良モデルから新グレードを追加

CX-60 の特別仕様車「XDハイブリッド トレッカー」の車両画像

※上図:CX-60 特別仕様車「XDハイブリッド トレッカー」

今回の改良タイミングで、新たなグレードも加わった。
「XD SP」は20インチホイールやブラック系外装パーツでスポーティさを演出し、買い得感ある価格としたグレードだ。
さらに特別仕様車として「XDハイブリッド トレッカー」が設定された。パノラマサンルーフを標準装備したアウトドア感溢れるグレードだ。
選択肢が増え、より自分好みのCX-60が選べるようになっている。

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マツダCX-60新車価格

グレード FR 4WD
25S Sパッケージ 3,267,000円 3,492,500円
25S Lパッケージ 3,795,000円 4,020,500円
25S エクスクルーシブモード 4,097,500円 4,323,000円
XD SP 4,125,000円 4,350,500円
XD Lパッケージ 4,224,000円 4,449,500円
XD エクスクルーシブモード 4,565,000円 4,790,500円
XD ハイブリッド エクスクルーシブモダン 5,307,500円
XD ハイブリッド エクスクルーシブスポーツ 5,307,500円
XD ハイブリッド トレッカー 5,527,500円
XDハイブリッド プレミアムスポーツ 5,670,500円
XDハイブリッド プレミアムモダン 5,670,500円
PHEV Lパッケージ 5,700,200円
PHEV プレミアムスポーツ 6,462,500円
PHEV プレミアムモダン 6,462,500円

マツダCX-60ボディサイズ、燃費などスペック

代表車種 マツダ CX-60 XDハイブリッド プレミアムスポーツ4WD
全長×全幅×全高 4,740mm×1,890mm×1,685mm
ホイールベース 2,870mm
最低地上高 180mm
車両重量 1,950kg
総排気量 3,283cc
エンジン型式 T3-VPTH
エンジンタイプ 直列6気筒DOHC直噴ディーゼルターボ
最高出力 254ps(187kw)/3,750rpm
最大トルク 550N・m(56.1kgm)/1,500-2,400rpm
モーター最高出力 16.3ps(12kw)/900rpm
モーター最大トルク 153N・m(15.6kgm)/200rpm
燃費(WLTCモード) 20.9km/L
駆動方式 四輪駆動(4WD)
トランスミッション トルクコンバーターレス8速AT
サスペンション型式 前:ダブルウィッシュボーン 後:マルチリンク
タイヤサイズ 前後 235/50R20
最小回転半径 5.4m
バッテリー種類 リチウムイオン

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員