車のスタビライザーとは、カーブを曲がるときなどに車体が傾くのを抑制する働きをしている部品です。
聞き慣れない名前に、メンテナンスの必要性がある部品なのか?不具合が出るとどうなるのか?と分からないことがたくさんあるという方々ほとんどでしょう。そこで現役の自動車整備士がスタビライザーの役割や不具合例、修理に関して分かりやすく簡潔に解説します。
- 車のスタビライザーとは
- スタビライザーは付いている車と付いていない車がある
- スタビライザー故障の症状例
- スタビライザーを交換しないとどうなる
- スタビライザーの交換時期の目安
- スタビライザーの交換費用の目安
- 整備士のまとめ
車のスタビライザーとは
車がカーブを曲がるときに遠心力とサスペンションの働きによって外側に傾くことをロールと呼びます。このロールが大きすぎると、コーナリング性能の低下や乗り心地の悪化につながります。
スタビライザーはこのロールを抑制する部品で、サスペンションを構成する部品の一部です。左右のサスペンションを繋いでいる、簡単にいうと鉄製の棒です。
スタビライザーを構成する部品
スタビライザーは一般的には以下の部品から構成されています。
- スタビライザー
- スタビライザーブッシュ
- スタビライザーコントロールリンク
(※コントロールロッド、リンクロッド、スタビリンクなど様々な呼び方あり) - スタビライザーリンクブッシュ(コントロールリンクの無いタイプ)
スタビライザーはボディに取り付けられたサスペンションクロスメンバーと呼ばれる部品に固定されています。サスペンションクロスメンバーにはサスペンションアームなどが取り付けられています。
スタビライザーは、コントロールリンクを介してサスペンションアーム(多くはロアアーム)やショックアブソーバーに接続されています。
また、中にはコントロールリンクが無く、ロアアームなどにブッシュを介して直接、接続されているタイプのスタビライザーもあり、この記事では「リンクブッシュ」と呼びます。
スタビライザーは付いている車と付いていない車がある
スタビライザーの取り付けは車種やグレードによって以下のような3つのパターンに分かれます。
- フロントのみ
- フロント+リヤ
- そもそもついていない
最近流行りのハイト系ワゴンやSUVは重心が高く、ロールが発生しやすい特性があるので、基本的にスタビライザーが装着されています。
スタビライザー故障の症状例
スタビライザー関連の故障(不具合)の症状例としては異音やブーツ破れ、グリス漏れが挙げられます。
鉄製の棒であるスタビライザー本体は、事故などよほどなことがない限り壊れることはありません。一方、ブッシュやコントロールリンクに関連する不具合があると、走行中の路面の凹凸や段差に応じて足廻りから「コトコト」「ゴトゴト」「カタカタ」「ガタガタ」といった異音が発生するのが特徴です。
主な部品の劣化による不具合について紹介します。
スタビライザーブッシュの劣化
スタビライザーブッシュは、スタビライザーをサスペンションクロスメンバーに固定する場所に使われているゴム製のブッシュです。振動や衝撃を吸収する役割があります。
ゴムが劣化すると痩せてガタが発生することがあり、異音発生の原因となります。
コントロールリンクのボールジョイントのガタやブーツの破れ
コントロールリンクの両端はそれぞれ、スタビライザーとショックアブソーバーまたはロアアームに接続されています。接続部はサスペンションの動きに応じて可動するように、ボールジョイント構造となっています。
このボールジョイントを保護するためにグリスが封入されており、その周囲はゴム製のブーツで覆われています。
経年劣化によりブーツが破れるとグリスが漏れ出し、このままでは車検に通りません。
また、グリスが漏れたまま放置するとボールジョイントが保護できずに、急速に劣化が進んでガタが発生することがあります。
一方でグリス漏れが発生していなくとも、経年劣化により先にボールジョイントにガタが発生することもあります。
ボールジョイントにガタがあると走行中の異音の原因となります。
スタビライザーを交換しないとどうなる
スタビライザーそのものは、普通に車を使用している過程で交換が必要になることはありません。すでに解説したとおり、関連部品であるブッシュやコントロールリンクは経年劣化するので、ガタが出ると走行中に発生する足廻り・フロア下からの異音の原因になります。
また、ブーツの破れやボールジョイントのガタの発生は車検に通らないので注意が必要です。
スタビライザーの交換時期の目安
部品名称 | 交換時期の目安 |
---|---|
スタビライザー本体 | 基本的に未交換 |
スタビライザーブッシュ | ガタが発生したら |
コントロールリンク | ガタが発生したら、ブーツが破れたら |
リンクブッシュ (コントロールリンクの無いタイプ) |
ガタが発生したら、 ブッシュのひび割れや潰れが酷くなったら |
スタビライザーに関する部品の交換時期は新品から数えて3回目の車検となる7年前後以降を目処に、上記の目安を迎えるケースが多いです。
あくまで目安時期なので、それよりも早いタイミングで交換が必要になるケースも稀にあります。
わたし自身も整備の仕事において、新車から3年でコントロールリンクのブーツに破れがあったり、ボールジョイントにガタがあって交換したことは何度かあります。
また、ローダウンしていると純正のコントロールリンクのままだと負荷がかかりやすく、早期のブーツ破れやボールジョイントのガタ発生につながります。
(※スタビライザー本来の性能を発揮するためにも、ローダウンしたときはそれに合わせてショートタイプのコントロールリンクに交換することが推奨されています。)
スタビライザーの交換費用の目安
スタビライザー関連部品の交換費用の目安は7,000円〜です。以下の表に各部品の目安をまとめました。
部品名称 | 交換費用の目安 |
---|---|
スタビライザーブッシュ | 10,000円〜(両側同時交換) |
コントロールリンク | 7,000円〜(片側) |
リンクブッシュ (コントロールリンクの無いタイプ) |
7,000円〜(片側) |
スタビライザーブッシュは、車種によって交換の難易度が大きく異なります。
大変なものだと、サスペンションクロスメンバーの脱着等を伴うケースもあり、その際は交換にかかる費用は高くなります。
整備士のまとめ
スタビライザーに関連する部品で、もっとも交換することが身近なのはスタビライザーのコントロールリンクでしょう。
経年劣化によるブーツの破れやガタの発生を放置していると、走行中に路面の凸凹に応じた「コトコト」「ゴトゴト」といった足廻りからの異音が発生することがあります。
スタビライザーに関係するところは、車検の合否に関わってくる箇所もあるので、点検の結果交換をおすすめされたときには、早めに整備してもらうようにしましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。