フォルクスワーゲン T-Crossに試乗!マイナーチェンジしたコンパクトSUV

フォルクスワーゲン T-Crossが2024年10月1日にマイナーチェンジされた。今回は試乗を通してT-Crossの走行性能や乗り心地について評価した。

フォルクスワーゲンの中古車在庫をチェックする>

T-Crossは国内フォルクスワーゲンを支える人気モデルへ成長中!

フォルクスワーゲン T-Crossに試乗!マイナーチェンジしたコンパクトSUV

フォルクスワーゲンの国内販売は、強力なブランド力をもつゴルフが多くの売上を稼いでいる状態が長く続いている。しかし昨今のSUVブームの影響を受け、最近では第2、第3の収益の柱となる車種も徐々に育ちつつある。

代表的な車種が、国内フォルクスワーゲン車で最もコンパクトなSUVであるT-クロス(T-Cross)だ。

 

T-クロスは2019年11月に投入された。販売は好調で、2020年から2022年まで3年連続で「輸入SUVカテゴリー登録台数」第1位を獲得している。

 

2020年7月にはTクロスの1クラス上のSUVであるT-ロック(T-Roc)が投入された。2023年の輸入SUVカテゴリーでは、登録台数第1位がT-ロック、2位がT-クロスとなった。

 

それでもゴルフは根強い人気を誇り、フォルクスワーゲンの国内販売で最も売れているモデルであることに変わりはない。しかしこれからは、T-クロスやT-ロックの存在感が増してくるだろう。

T-crossは小規模マイナーチェンジだが、着実に深化

T-crossの車両全景の画像

フォルクスワーゲン T-クロスは、2024年10月にマイナーチェンジされた。外観デザインはじっくり見比べてみないと分からない程度の変更があった。

T-crossのフロントフェイス画像

フロントバンパーからフォグランプが無くなり、スクエア形状のデザインからトライアングル形状のダクトに変更されている。全般的にスッキリとした印象になった。

T-crossのリヤエンド画像

リヤビューは、コンビネーションランプ発光時のデザインが変わった。マイナーチェンジ前と同じ一文字のコンビネーションランプであるが、マイナーチェンジ後のモデルではX字に点灯する。これはT-クロスのクロス(X)をイメージさせるものだ。この新発光パターンを用いた3DのLEDランプに変更されたことで、視認性も向上している。

T-crossの実用性は、BセグコンパクトSUVでトップレベル

T-crossのインパネデザインの画像

T-クロスの内装は、質感や装備などのグレードがグッと上がった。センターコンソール上部には、8.0インチの液晶ディスプレイを採用したデジタルメータークラスターである「Digital Cockpit」を全グレード標準装備した。

T-crossのメーター画像

ただ、ディスプレイの大型化が進んでいる国産モデルは、8インチはすでに平均的なサイズ。マイナーチェンジでようやく、平均的なディスプレイサイズになったと言える。

ダッシュパットには質感を高めたソフトパットを採用し、より上質なインテリアに仕上げている。

T-crossの内装:運転席の画像

装備面では運転席・助手席のシートヒーターが、3つのグレードのうち中・上級グレードにあたるTSI StyleとTSI R-Lineに標準装備された。T-クロスユーザーの約半数を占める女性にとって、シートヒーターは寒冷地ではなくても嬉しい装備といえる。

T-crossの内装:後席の画像

オプション装備には、プレミアムサウンドシステム「beats sound system」が設定された。T-クロスのマイナーチェンジで静粛性が向上されたことも相まって、より臨場感溢れるサウンドを楽しめるようになった。

 

かなり魅力度を上げたT-クロスだが、少し残念な点もある。それはパーキングブレーキが未だ手引きタイプであることだ。日本マーケットでは、すでに軽自動車でも電制パーキングブレーキが標準化してきている。300万円オーバーの輸入車としては惜しい点だ。

 

その一方で、T-クロスの使い勝手はとても高いレベルにある。18インチホイールを履きながら、最小回転半径は5.1mを達成。日本の狭い道や駐車場でも、十分に扱いやすい。

T-crossの荷室の画像

さらに、T-クロスの荷室容量は通常455L、リヤシートを倒すと最大1,281Lものスペースになる。国産BセグメントSUVでトップレベルの荷室を誇るホンダ ヴェゼルでも404Lなので、T-クロスの荷室がいかに広いかよく分かる。

T-crossはエンジンの静粛性がアップ!

T-crossのエンジンルームの画像

T-クロスに搭載されたエンジンは、DUS型直3 1.0Lターボだ。

マイナーチェンジ前はDKRだったが、マイナーチェンジ後ではDUSになった。何がどう変わったのかは不明で、最高出力116㎰、最大トルク200Nmという数値も同じだ。違いは、最高出力の発生回転数が5,000~5,500rpmから5,500 rpmになったこと。そして、燃費値(WLTCモード)が0.1km/Lアップし17.0km/Lとなったことだ。

 

少しずつでもクルマを深化させ、熟成させる姿勢からも、フォルクスワーゲンのマジメさが伝わってくる。だが、試乗からはこの差をあまり実感できなかった。

 

試乗で体感できたことのひとつが、車内の静粛性だ。走り出してすぐに気が付いた。エンジンノイズも少し控えめになった印象だ。また、街中でのロードノイズもしっかり抑えられている。高速道路の場合、速度を上げるとルーフから風切り音がわずかに聞こえてくるが、気になるレベルではなかった。

電動化に期待したいエンジン

エンジン関連で気になったのが、アクセルレスポンスだ。ストップ&ゴーや急勾配登坂路で一瞬無反応になる傾向があった。

混雑した街中で走行すると、ストップ&ゴーは頻繁に行われる。T-クロスのエンジンは、最大トルク200Nmとはいえ、排気量は1.0Lという小排気量だ。そのため、走り出す瞬間はターボによる過給が間に合わず、一瞬反応が無くなる。一旦ターボの過給が始まれば、元気よく走り出すのだが、ストップ&ゴーが頻繁に繰り返されると、一瞬のアクセルレスポンス無反応が若干のストレスに感じられた。

 

急勾配登坂路でも、こうした傾向をよく感じた。エンジンの回転を2,000回転以上にすると走りやすかった。

エンジンにマイルドハイブリッド機能などのモーターアシストがあるパワーユニットであれば、もう少しストレス無く走れるのだろう。次期アップデート時のT-クロスに期待したいポイントでもある。

正確無比のハンドリング

速度域の高い高速道路になると、フォルクスワーゲン車らしさが光った。コンパクトSUVながら、質の高い走りも楽しめた。

カーブでのハンドリングは、まさに正確無比だ。狙ったラインを正確にトレースする。旋回中のステアリング操作に対しても、しっかり反応。とにかくよく曲がり、気持ちがいい。車体の傾きも少なく、フラットな姿勢を維持した運転がしやすい。ハンドリング面では「背の高いSUVによるネガティブな部分」が見当たらないくらいだ。それでいて、直進安定性も高く、高速クルージングも安心感があった。

T-crossはマイナーチェンジで乗り心地も向上!

T-クロスの乗り心地は、マイナーチェンジ前のモデルに比べ、しなやかさが増していた。マイナーチェンジ前のT-クロスで、215/45R18タイヤを履いたモデルの場合、タイヤのゴツゴツ感があり、乗り心地も硬め。大きな凹凸ではリヤサスペンションの突き上げ感もあった。速度が上がると、少し乗り心地はよくなるものの、総じて硬めだ。

 

ところが、マイナーチェンジ後のT-クロスは、低速域でもしなやかさがあり、路面の凹凸をシッカリと吸収してくれた。大きな凹凸が連続するようなシーンでも、リヤサスペンションの突き上げが抑えられ、快適に走行できた。マイナーチェンジ前のオーナーであれば、すぐに気が付くほど大きな差だろう。

予算重視ならT-crossのおすすめグレードはTSI Active

マイナーチェンジによって洗練さを増したT-クロスのグレードは、TSI ActiveとTSI Style、TSI R-Lineの3タイプだ。エントリーのTSI Activeと最上級グレードのTSI R-Lineの価格差は約60万円と大きい。だが、中間グレードであるTSI Activeの装備も十分なレベルにあり過不足はない。予算重視ならTSI Activeがお勧めだ。

 

最上級のTSI R-Lineはとにかくスポーティ。特別感のある仕様が欲しいという人向けのため、価格はお高めだ。

 

フォルクスワーゲンモデルは、リセールバリューはあまり高くならない傾向があるので、中古車での買い得感がある。

だが、T-クロスは人気のSUVカテゴリーなので、やや高めのリセールバリューが期待できそうだ。日本マーケットの場合、スポーティなグレードだとさらに高リセールバリューになる傾向がある。T-クロスで高リセールバリューが期待できるグレードはTSI R-Lineになりそうだ。

T-crossの中古車在庫をチェックする>

フォルクスワーゲン T-Cross新車価格

TSI Active

3,299,000

TSI Style

3,599,000

TSI R-Line

3,895,000

フォルクスワーゲン T-Cross燃費、ボディサイズなどスペック

代表グレード

TSI R-Line

ボディサイズ

4,135mm×1,785mm×1,580mm

ホイールベース

2,550mm

最小回転半径

5.1m

車両重量

1,260kg

エンジン型式

DUS

エンジンタイプ

直列3気筒DOHCターボ

総排気量

999cc

最高出力

116ps(85kW)/5,500rpm

最大トルク

200N・m(20.4kgm)/2,000-3,500rpm

トランスミッション

7速DSG

燃費(WLTCモード) 

17.0km/L

駆動方式

前輪駆動(FF)

サスペンション

前:マクファーソンストラット式 後:トレーリングアーム式 

タイヤサイズ

215/45R18

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員