ATFとは?オートマオイルの交換費用、時期について整備士が解説

ATFとは?オートマオイルの交換費用、時期について整備士が解説

ATFは使用過程において劣化するので、トラブル予防のためにも定期的な交換が推奨されています。
この記事では現役の整備士がATFの交換目安時期や費用、ATFにはどんな役割があって、交換しないとどうなってしまうのかを分かりやすく解説します。

ATF(オートマオイル)とは?

ATFはAT(オートマ)に使用されている作動油および潤滑油を指し、オートマチックトランスミッションフルードの略称です。厳密にはフルードと呼ばれています。フルードは油圧によって部品を作動させる役割を持つ液体を指します。

ATFは一般的に分かりやすくオートマオイルと呼ばれることも多いです。

ATFの役割

ATFには油圧作動をさせたり、耐摩耗性を上げたりといった主に5つの大切な役割があります。それぞれ簡単に分かりやすくご紹介します。

①油圧作動をおこなう役割

ATは常に内部の複雑な油路を切り替えることで、ギヤを変速したりクラッチ作動でスムーズでショックの少ない変速を可能にしています。それらに必要な部品を作動させるために、ATFによる油圧を利用しています。

②動力を伝達する役割

ATにはエンジンからの力を増幅してミッション側に伝える「トルクコンバーター」と呼ばれる部品が採用されています。(一部除く)

トルクコンバーターは流体力学を利用した部品で、トルクの増幅のためには粘性のある液体であるATFの存在が不可欠です。

③潤滑の役割

機械が複雑に作動する場所にはオイルによる潤滑が必須です。潤滑することで各部品を保護する役割があります。

④耐摩耗性の役割

オイルやフルードが部品と部品の間に油膜を形成することで直接、部品と部品が直接接触することを防ぎます。これにより部品の耐摩耗性が向上します。

⑤冷却する役割

オイル・フルードといった液体には、触れるものを冷却する役割があります。ATFも同様に、走行によって熱を持ったATを冷却する役割を担っています。

【補足】ATFとCVTFの違い

ATFとCVTFは別物です。
ATFは「オートマチック・トランスミッション・フルード」、CVTFは「コンティニュアスリー・バリアブル・トランスミッション・フルード」の略です。
車のトランスミッションは厳密に言うと、MTとATの2種類だけではなく、2ペダルで運転できるAT車の括りの中で、構造の違いでさらに細分化されます。
一般的なATは有段自動変速機、CVTは無段変速機と呼ばれ内部構造がまったく異なり、そのため使用するのに適したオイルも別物になります。
まれに兼用を謳った製品もありますが、基本的にはATにはATFを、CVTにはCVTFを使うようにしてください。

ATF(オートマオイル)を交換しないとどうなる?

ATFを交換しないと、使用年数の経過および走行距離が増えていくごとに、以下のようなリスクが高くなります。

  • 摩耗した金属粉が油路を詰まらせる
  • 変速ショックが大きくなる
  • クラッチの滑り
  • エンストする
  • ギヤシフトの不具合

そのため、ATFは定期的な交換をすることが推奨されています。
しかし、交換目安時期を大幅にオーバーしてATFを交換すると、急な故障を引き起こすことがあります。
これはATFの交換作業過程、または新しいATFの清浄効果によって、摩耗して堆積した金属粉や汚れなどが剥がれ油路内を移動し、新たに詰まりを発生させてしまうことがあるためです。
よって、走行距離が多い車でこれまで一度もATFを交換していない場合は、交換後の故障リスクを避けるために、今後もあえて交換しない方が賢明です。(例:走行距離10万km未交換)

ATF(オートマオイル)交換費用の目安

ATFの交換費用目安は8,000円〜30,000円ほどです。
ATFの使用量が少ない軽自動車では値段が安い傾向にあります。また、使用するATFによっても費用は大きく異なり、安いオイルと高価なオイルではオイル代だけでも倍以上違ってきます。
交換方法としてもATFチェンジャーを使用して自動運転で交換する方法もあれば、オイルパンのドレンからATFを抜き取って、規定量注入する方法もあります。
ATFチェンジャーで対応可能な車種であれば、それがもっとも工賃が抑えられます。

ATF(オートマオイル)交換時期の目安

新車購入後、初めてのATF交換時は走行距離2万km前後を目安とし、その後の交換目安時期は2〜5万kmごとに定期的に交換することをおすすめします。
走行距離が少ない場合には、車検2回につき一度(4年ごと)程度を目安にするとよいでしょう。
参考として車載の取扱説明書などに記載のサービスデーターに、その車種に適した交換目安時期が記載されています。
国内では基本的にシビアコンディションにあたる項目を参照します。

整備士のまとめ

エンジンオイルほど重要視されないために見逃されがちなATFですが、オイル・フルードなので当然、使用とともに劣化します。
車のコンディションを良い状態で保つにも、定期的な交換は不可欠です。
あまりに未交換でいる場合に交換すると、逆に故障を誘発するリスクがあるので、その点に注意しつつ、気になる方は信頼のできる整備工場で自車のATFのメンテナンスについて相談してみるとよいでしょう。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。