サスペンション交換時期や費用の目安を整備士が解説!

サスペンション交換時期や費用の目安を整備士が解説!

サスペンションは車の足廻りのことを意味し、乗り心地や車の運動性能に関わるとても大切な部分です。ただ、一般の自動車ユーザーからすると、いまいち交換時期や何をすれば良いのかなど分からないというのが正直なところでしょう。
今回は現役の整備士がサスペンションの交換について、分かりやすく解説します。

サスペンションを交換しないとどうなる?

サスペンションは以下の部品で構成されています。

  • スプリング(バネ)
  • ショックアブソーバー(ダンパー)
  • アーム・リンク類

スタビライザーという車体のロールを抑制する部品もサスペンションに含むと考える場合もありますが、大きくは上記の3つのは部品からサスペンションは構成されています。
これらは年数や距離に応じて劣化します。
交換の必要が出てくることもあり、交換しないと乗り心地や運動性能の悪化・低下を招いたり、車検に通らないパターンもあります。

乗り心地が悪化する

サスペンションは道路の凹凸をタイヤが乗り越えるときの衝撃を緩和、抑制します。
サスペンションが劣化すると、この性能が十分に発揮できなくなります。その結果、乗り心地が悪くなったり車本来の運動性能を発揮できなくなったりします。
乗り心地の悪化は走行中のフワフワ感が増したり、段差を乗り越えるときの突き上げ感が強くなるので、ドライバー自身も実感しやすいです。
運動性能の低下は、カーブを曲がるときの車の安定感に違いを感じたり、ハンドリングの感覚にダイレクト感がなくなるなどがあります。

車検に通らないことがある

サスペンションは劣化すると車検に通らないことがあります。車検に通らない不具合の主な例です。

  • ショックアブソーバーからオイル漏れがある
  • アームのボールジョイントブーツが破れて中のグリスが漏れ出ている
  • アームのボールジョイント部分にガタが発生している
  • スプリングが錆などで折損している

サスペンションの交換時期の目安

サスペンションの交換時期は年数では7年~、走行距離では7万km~が目安です。各部品ごとの目安を以下の表にまとめました。このなかで、一般的に交換することの多い部品はショックアブソーバー、またはアーム・リンク類です。

部品 交換距離の目安 交換年数の目安
スプリング(バネ) 10万km〜 10年〜
ショックアブソーバー(ダンパー) 7万km〜 7年〜
アーム・リンク類 10万km〜 7年〜

アーム・リンク類の交換は車検に通らないことがキッカケなことが多い

アーム・リンク類は走行距離が少なくても、年数が経過するとゴム製のブーツが硬化・劣化して破れることが珍しくありません。
新車から三度目の車検となる7年〜のタイミングでブーツが破れていて車検に通らないこともあります。
車検に通る状態であっても、乗り心地の改善等のリフレッシュ的な意味合いであれば、10年または10万km程度が交換の目安時期となります。
これはボールジョイントやブーツの劣化だけではなく、アーム・リンク類の付け根のブッシュのヘタリも出てくるためです。

ショックアブソーバー交換がもっとも効果的なリフレッシュ

ショックアブソーバーはもう少し早いタイミングの7年または7万km〜が、交換を検討しても良いおすすめ時期です。
この交換目安時期は、アッパーマウントやダストブーツなどのショックアブソーバーに付随する部品も含みます。
車の変化に敏感ではないオーナーでも、走行距離を重ねた車のショックアブソーバーの交換は、その改善効果を実感しやすいです。

スプリングの交換は稀だが、塩害地域は注意が必要

スプリングはサスペンションの中ではもっとも経年劣化を理由に交換することの少ない部品です。
アームやリンク類、ショックアブソーバーは交換してもスプリングはそのまま再利用ということも多いです。
ただ、塩害の影響のある降雪地帯や海に近い地域の場合は、錆によるスプリングの劣化や折損のリスクが大幅に高まるので、一般的な地域と比較して交換頻度は高いです。
もちろん、通常の使用においても年数と距離に応じてヘタってはくるので、交換によって乗り心地などはある程度改善されます。

サスペンション交換費用と所要時間の目安

サスペンションの交換費用は決して安いものではありません。また、サスペンションの形状は車種やメーカーによってさまざまなので、部品の値段や作業にかかる時間も、それぞれで大きく異なります。
正確な費用や時間は整備工場に問い合わせて確認してください。
ここでは、サスペンションのリフレッシュは左右対称に実施することが望ましいですが、1箇所あたりの費用と時間で解説します。

ショックアブソーバーの交換費用と所要時間

ショックアブソーバーのタイプ 交換費用 交換所要時間
一体タイプ(例:ストラット式) 2万円〜 1時間〜
単独タイプ 1万円〜 30分〜

ショックアブソーバーの交換は、スプリングと一体になっているものか、単独のものかで費用も時間も大きく異なってきます。
一体タイプ(例:フロントのストラット式サスペンションなど)であれば、アッパーマウントやダストブーツといった付随部品の同時交換が望ましいです。
ショックアブソーバーが単独で交換可能なタイプは、リヤサスペンションに採用されていることがほとんどです。

アーム・リンク類の交換費用と所要時間

アームやリンク類の交換は、錆の発生等によってスムーズな作業ができずに所要時間が伸びてしまうことも考えられます。
また、脱着にコツが必要となることもあります。
アーム類のなかでも、最近の車でもっとも交換頻度の高いロアアームのアッセンブリー交換費用と時間の目安は以下のとおりです。

  • 交換費用…4万円〜
  • 所要時間…1時間半〜

また、アーム・リンクをすべて新品部品にリフレッシュする場合には、交換費用は40万円〜、所要時間は1日〜で、一般的な車のオーナーさんにとっては、あまり現実的ではありません。

サスペンションを交換したときは四輪アライメント調整も同時実施がおすすめ

四輪アライメントの実施は費用の目安が1.5万円〜3万円、所要時間は1時間〜2時間です。
サスペンションを交換すると、足廻りのアライメントがかならず変化します。場合によっては車検に通らないようなアライメントの数値になることもあります。
四輪アライメントはいわば車の骨盤矯正のようなものです。サスペンション交換の効果を最大限活かすためにも、四輪アライメント調整も同時におこなうことをおすすめします。

サスペンションを交換すると乗り心地は改善される?

サスペンションを交換すると間違いなく乗り心地は改善されます。中古車を購入する際、長く乗り続けるのであれば今後のメンテナンス、リフレッシュプランを考えることも大切です。
例えば10年10万km程度を目安にサスペンションを交換することで、中古車(古い車)っぽいヤレ感が無くなって完全に新車とまではいかずとも、新車を買ったような感覚で乗ることができると感じる人も少なくありません。
実際にお客様の古くなった車のサスペンション廻りをリフレッシュしたところ、「まるで新車になったみたい!」という喜びの声を聞いたことは一度や二度だけではありません。
ショックアブソーバーの交換だけでも効果はありますが、アーム類やスプリング、マウント類といったものまで、お金を掛けてサスペンションを交換していくほどに、より新車に近い乗り心地に改善されていきます。

整備士のまとめ

費用が高額となってしまうので、オーナーにとってなかなか気軽にできる整備ではありませんが、車を今後も大切に長く乗るつもりであれば、サスペンション交換は改善の効果を実感しやすいリフレッシュメニューひとつなので、ぜひ交換をおすすめしたいです。
乗り心地が良くなるだけで、長距離ドライブのときなどドライバーも同乗者も疲れにくくなったり、快適性が向上します。
また車検に通らない状態で部品交換する場合には、悪い部品が片側だけでも、バランスを考えて左右両方同時に交換するのがベストです。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。