BMW iX1は、国内BMWにおいて最もボディサイズが小さいBEV(バッテリー電気自動車)だ。BEVに関心のあるユーザーなら購入検討をしたい一台だろう。今回はiX1の走行性能や価格、BMWのBEVについて試乗を通してレポートする。
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- BEVの概要
- BMW BEVの特徴
- BMW iX1の概要
- 小さなボディなのに加速性能が高いiX1
- コンパクトSUVの中では高い静粛性と荷室容量を有するiX1
- BEVの電費
- BEVに興味があるなら一考したいiX1の価格
BEVの概要
BMWはBEV(バッテリー電気自動車)に積極的だ。2024年7月現在、日本国内で発売されているBEVは7車種もある。ハイパフォーマンスのM系を加えると、13車種にもなるのだ。
その礎となったのが、2014年に国内で発売を開始したi3だ。このモデルは、とても革新的だった。
- カーボンボディ
- 後輪駆動:リヤ車軸上にモーターを設置
- 内装:リサイクル素材を100%使った
このように、かなり振り切った仕様である。
しかも、前後の重量配分はBMWらしい50:50だ。前面の空気抵抗を減らしながら、電費効率アップを実現。さらに、極細大径タイヤである「オロジック」を採用したことで相応のグリップ力も得られていた。
その一方で、初代日産リーフは2010年に世界初の量産BEVとして発売された。i3よりも4年も早い。しかし2024年7月現在、国内日産BEVで発売されているのは、リーフ、アリア、サクラの3台(OEM車であるクリッパーEVを除く)しかない。BEVのパイオニアである日産も、後発のBMWにBEVラインアップ数で負けているのだ。それでも、日産は他の国内メーカーに比べれば多くの車種をもっている。つまり、それほど国内メーカーのBEVラインアップは少ないということだ。
BMW BEVの特徴
BEVは専用車が少なく、内燃機関車とボディなどを共通化している車種が多い。しかしiXは国内で売られている唯一のBEV専用車である。
内燃機関車とボディなどを共通化する意図は、開発・生産コストなどを抑えることだ。コストを抑えることで、販売価格もやや安価に設定でき購入しやすくするメリットもある。
BEV専用車はエンジン搭載の必要がない。一方、内燃機関車とボディを共通化するとエンジン搭載スペースぶん室内スペースが狭くなるなどのデメリットもある。そのためどちらも一長一短だ。
BMW iX1の概要
今回試乗したのは内燃機関車であるX1をベースとした「iX1」だ。BMW iX1のボディサイズは以下の通り。
※( )は先代であるX1との比較
全長 |
4500mm(+45mm) |
全幅 |
1835mm(+15mm) |
全高 |
162mm(+20mm) |
ホイールベース |
2690mm(+20mm) |
iX1はCセグメントのコンパクトSUVに属し、日本でも扱いやすいサイズのモデルだ。国産車でいうと、トヨタ カローラクロスに近いサイズである。
iX1の外観は、内燃機関車であるX1とほぼ同じだ。強いて言うと、グリルが異なる。BEV であるiX1はエンジンが無いので、ラジエーターを装備する必要がない。そのため、グリルのデザインは同じだが、通風用の穴は開いていない。
小さなボディなのに加速性能が高いiX1
BMW iX1には、以下の2タイプが用意されている。
- iX1 xDrive30(前後にモーターを設置した4WD)
- iX1 eDrive20(前輪駆動)
試乗したのは、4WDであるiX1 xDrive30だ。iX1 xDrive30には、前後に同じ出力のモーターが設置されている。モーター最高出力は190㎰×2、最大トルクは247Nm×2となる。システム最高出力は272㎰、システム最大トルクは494Nmだ。
全長4.5mという小さなボディに272㎰&494Nmものモーターを積んでいるため、iX1の加速力は強烈だ。0-100km/hの 加速性能(欧州仕様)は、わずか5.6秒。iX1より少し大きいBEVのトヨタbZ4X(4WD)が7.7秒なので、いかに俊足なのかが分かる。
スポーツモードにして床までアクセルを踏み込むと、グイっと頭が後方に引っ張られるような怒涛の加速を開始し、高速域まで伸びのよい加速を披露する。この高速域まで伸びのよい加速フィールは、BMWのEVならではだ。
ステアリング左には、BOOSTという赤の差し色が入ったパドルが目に入る。これは、回生ブレーキの強弱用ではない。このパドルを引くと約10秒間、プラス約40㎰のBOOSTがかかるのだ。BMWは、いつもドライバーのスポーツマインドを刺激することを忘れないメーカーだ。
コンパクトSUVの中では高い静粛性と荷室容量を有するiX1
iX1はBEVなので、静粛性は極めて高いレベルだった。高速走行中でも、わずかに風切り音とロードノイズが聞こえる程度だ。コンパクトSUVとは思えない静粛性の高さが魅力だ。
iX1はシートの出来が秀逸だ。やや大きめのシートでゆったり座れるのだが、しっかりと下半身を固定してくれるので、カーブなどでも体の揺れが少なく疲れない。iX1は、ロングドライブでも疲れにくいにコンパクトSUVに仕上がっていた。
駆動用のリチウムイオンバッテリーは、床下に配置した。バッテリー容量は66.5kWhで、1充電航続可能距離は465km(WLTCモード)となっている。このリチウムイオンバッテリーを搭載したことで、iX1 xDrive30 Mスポーツは最低地上高が低くなり172mmとなった(X1 xDrive20d Mスポーツ比で-17mm)。多少低くなってはいるが、172mmあれば多少の悪路であれば十分に走破できるレベルだろう。
また、リチウムイオンバッテリーの搭載によって、荷室容量も490Lと小さくなっている。内燃機関車より50L少なくなった。それでも、このクラスではトップレベルの荷室容量だ。
こうした大きく重いリチウムイオン電池を床下に設置したとこにより、iX1の重心は大きく下がった。その結果、背の高いSUVにありがちな上部が揺さぶられるような動きがない。さらに、試乗車にはアダプティブMサスペンションが装備されていた。高速道路や峠道では、抜群のフットワークを披露。前後重量バランスに優れているため、ドライバーの操作通りに動く正確無比のハンドリングを有し、SUVであっても気持ちよくスポーティに走る。ただ、大きくうねった道をやや早めの車速で進入すると、車重が重いせいか、やや収まりが悪いところが気になった。
BEVの電費
BEVだけに、気になるのが電費だ。BMWのBEVは、なぜか一般道より高速道で電費が良くなる特性がある(他の多くのBEVは、一般道の方が電費はよい傾向だ)。
iX1も同様で、高速道路での電費がよい。市街地では6km/kWh程度の電費だったが、高速道路を80~100km/h程度で走っていると、7km/kWh台だった。
一般的に速度が上がれば電力消費量も増えるし、空気抵抗も増え電費が悪くなるのだが、iX1はむしろ逆。高速道路上では、どんどん電費がアップするのだ。
この高速道路での電費アップは、コースティングの上手さにあると予想できる。高速道路でも、アクセルをオフにすると、エンジンブレーキのように緩い回生ブレーキを作動させるBEVが圧倒的に多い。ところが、iX1はアクセルオフでコースティングする。内燃機関車で例えると、ニュートラル状態で走行するイメージだ。そのため、アクセルオフでも、あまり減速しない。慣れないと、前走車との車間が想像以上に縮まるほどだ。
このコースティングを上手く使って走ると、電費がより向上する。この電費の良さは、iX1の大きなメリットのひとつといえる。
BEVに興味があるなら一考したいiX1の価格
魅力的なBEVであるiX1。BMWは、より積極的な営業戦略に打って出ている。
- iX1 xDrive30 Mスポーツ…718万円(今回紹介したBEV)
- X1 xDrive20d Mスポーツ…620万円(ほぼ同等装備の内燃機関車)
上記2モデルの価格差は98万円だ。BMWのサイト上によると、補助金などの優遇額は約91万円。補助金などを使えば、価格差は約7万円まで縮まる。補助金ありきではあるものの、BEVに少し興味があるという人であれば、積極的にiX1を選びたくなるような価格設定になっているのだ。
優遇額が約91万円あっても、車両価格は600万円を楽々超えてくる。プレミアムなBMWブランドとはいえ、少々悩ましい。